「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。

金目鯛のベストな料理法は、やっぱり「煮付け」。
伊豆半島の東南海岸を旅していると、あちこちに「金目鯛」の看板やのぼりが掲げられ、旅行者は無意識のうちに、すっかり「伊豆の名物=金目鯛」という刷り込みにハメられてしまう(笑)。
そこで「金目鯛」のことが気になり、その真意のほどを調べてみた。
伊豆の金目鯛がおいしい理由と、車中泊での上手な食べ方【目次】
そもそも金目鯛とは?
鯛という名前はついているが、「金目鯛」はマダイやクロダイといった本物の鯛の仲間ではなく深海魚だ。
旬は冬といわれ、日本近海では北海道の釧路以南の太平洋と、新潟県以南の日本海の沖合約200-800mの岩礁域に生息し、釣りや底曳き網などで漁獲される。
たしかに大阪のスーパーでも見かけることは多く、とりたてて珍しい魚というイメージではない。
なぜ、「伊豆の名物=金目鯛」?
金目鯛漁が盛んなのは、房総沖から伊豆半島・伊豆諸島周辺で、底立延縄・立縄・樽流し・一本釣り等によって獲れたものが下田港に水揚げされる。
下田港が金目鯛の水揚げ量日本一となっているのはそのためだ。
中でも、伊豆大島から神津島にかけての西側で獲られた金目鯛は、特に脂がのって味も濃く、「地金目」と呼ばれている。
下田港から漁場までは約1時間半。漁場が近いため、鮮度が良いまま口にできるのも大きなセールスポイントになっている。
実は水揚げ量は少ないが、伊東・須崎・稲取でも下田と同じ理由から「ブランド金目」を販売している。
これは松葉ガニと同じ話だ。
丹後半島の間人(たいざ)が、最初にグリーンのブランドタグをつけて話題を呼んだが、同じように漁場が近い城崎温泉の津居山や、福井県の越前でも、現在は色違いのブランドタグをつけている。
たぶん素人には、それぞれの見た目や味の違いはわからない(笑)。
金目鯛の美味しい食べ方
一般的な金目鯛の食べ方は、刺身、煮付け、干物、味噌漬けあたりになる。
だが、せっかく伊豆まで来たらには、同じ金目鯛でも、さきほど学習した「地金目」にありつきたい!と誰しも思うが、今は水揚げが少なく、地元の料亭でもなかなかお目にはかかれないらしい。
となると、「沖キンメ」を少しでも美味しく食べさせてくれる「店選び」がポイントになってくる。
うまいと云われる店をネットで探せば、東伊豆でも南伊豆でも、きっと「山ほど出てくる」に違いない(笑)。
そこで、「食べログ」ではなかなか決めきれないという人には、「るるぶ」や「まっぷる」に出ている店をお勧めする。
筆者の経験からすると、確かに行列は必至だが、「行列店にはそれなりのプライド」がある。
確かに無名の頃に比べると、サービスや味が低下しているかもしれないが、そう大きくは外れない。それに予約ができるところも多い。
確かに、まだ名が知れ渡る前に「将来の行列店」に出会えればラッキーだが、一元の旅人にそれができたら苦労はしないし、その店が繁盛すれば、やはり同じ道を歩むと思う。
つまりそういう奇跡を望むなら、情報の鮮度まで調べなければならないわけだ。
また「食べログ」を参考にするなら、投稿者の年齢・性別・住所を見たほうがいい。同じ日本人でもそれらが違えば、味覚も価値観も異なるものだ。
ということで、素性がわかる筆者の食レポをあわせて紹介しておこう。

いちばんのお勧めは、生の金目鯛を手に入れてキャンプ場で自ら煮付けて食べることだが、車内でやるには換気扇のあるキャンピングカーといえども、生ゴミが出すぎて難しい。
そうなると、店を選んで「ランチタイム」にいただくのが手っ取り早い。
その点では「道の駅 開国下田みなと」の中にある食事処「さかなや」と、市場の食堂「金目亭」は行きやすくて安心といえる。
ただ、せっかく車中泊ができる道の駅にありながら、ランチタイムまでしか営業していないのは残念。日本酒に金目鯛の煮付けはピッタリなのだが(笑)。
ちなみに、河津桜まつりの会場では、こんなものを発見!
これなら車中泊で食べられるかも… と試したが、予想通りの論外(笑)。
関西人の筆者にとって、タレが辛いのは致し方ないとしても、鮮度がない金目鯛は、美味とはほど遠いものだった。
ただ、煮付けが駄目でも、刺し身なら車中泊でいただける。
しかもうまく探せば、こんな値段で手に入れることができる。
売っていたのは、スーパーマーケットのAoki。
静岡県下でも、特に伊豆半島でよく見かけるローカルチェーンだが、とりわけ品揃えがいいのは伊東温泉の店のようで、「道の駅 伊東マリンタウン」から熱海方面に5分ほど国道を走ったところにある。
またお寿司も手頃でいい。
写真は「河津桜まつり」の屋台で買った「伊豆観光ホテル」の金目寿司。ホテルの出し物だけに「こぶ締め」がよく効き、実にさっぱりとした上品な味わいだった。
最後に。
金目鯛も「うまい、うまい」と喜んでばかりはいられないようだ。
そもそも金目鯛は冬場に旬を迎えるため、荒天の影響で水揚げ量が安定しない。さらに漁師人口は減少しており、漁獲高は年々低下の一途を辿っているという。
そのせいで、水揚げが最も多い伊豆半島ではブランド化が進行し、価格の高騰と流通量の減少を引き起こしている。
金目鯛もやがては養殖になっていくのだろうか…
深海魚の養殖なんてできるの? と思うが、クエの養殖に成功している近大なら、あり得るのかもしれない(笑)。
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