この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

知ってなるほど。「日本平」にまつわる3つのエピソード
「日本平」観光&車中泊【目次】
日本平のエピソード①
江戸時代の浮世絵師にも、日本平からの絶景を描いた人物がいた。
日本平のエピソード②
地名の由来となったのは、日本武尊の東征
日本平のエピソード③
ロープウェイは徳川家康が眠る久能山に通じている
日本平のロケーション
日本平とは、駿河湾沿岸近くにある有度山(うどやま)の山頂部一帯の通称だ。
1950年に毎日新聞社主催の観光地百選「平原の部」で第1位となり、筆者が生まれた1959年には、早くも国の名勝に指定されるが、1980年の日本観光地百選コンクールでも1位に選ばれ、2016年には「日本夜景遺産」にも認定されている。
もちろんその評価は、この「眺望」があってのお話。
あの有名な「三保松原」も眼下に見下ろせ、クルマで15分ほどしかかからない。
日本平のエピソード①
江戸時代の浮世絵師にも、日本平からの絶景を描いた人物がいた。
その名は二代目「歌川豊国」で、作品名は名勝八景「三保落雁」。
そしてここは、歌川広重が「東海道五十三次」で「由井」を描いた「薩埵(さった)峠」と同じく、江戸時代とあまり変わらない富士の景観が拝める貴重な場所なのだ。
日本平のエピソード②
地名の由来となったのは、日本武尊の東征
記紀伝説上の英雄として語り継がれている「日本武尊」(やまとたけるのみこと)は、東征中に草薙(くさなぎ)の原で野火攻めに遭い、火に囲まれた中で「天叢雲剣」(あめのむらくものつるぎ)を使い、周囲の草を薙ぎ払って活路を見出したとされている。
賊を撃ち果たしてこの地を平定した後、「日本武尊」は有度山の頂上に登って四方を眺めたという話から、ここはいつしか「日本平」と呼ばれるようになった。
有度山の山頂から北側山麓にかけては、「草薙」という地名が残っており、「日本武尊」を祀る「草薙神社」も実在する。
さらに「日本坂」「焼津」の地名にも同様の神話が絡んでいる。
ちなみに「天叢雲剣」の別名は、天皇家の三種の神器のひとつである「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)で、現在も「熱田神宮」のご神体として祀られている。
そしてその「草薙剣」(くさなぎのつるぎ)は、なんと素盞嗚命(すさのおのみこと)が退治したヤマタノオロチの体内から見つかった神剣である。
さらにさらに「草薙剣」は、平安時代の終わりに、壇ノ浦で滅んだ平家とともに、関門海峡の海の底に沈んでしまう。
おお、なんと壮大な歴史ドラマなんだ!
もうこうなると、いったいどこまでが本当なのか想像がつかない(笑)。
ちなみに「三種の神器」のひとつが欠けたままでは話にならないと、鎌倉時代には海人(あま)を動員し、「草薙剣」の探索が国を挙げて行われた。
しかしそれでも見つからず、ついに1210年、朝儀で伊勢神宮の祭主から贈られていた剣を新しい宝剣とすることが満場一致で決まったという。
日本平のエピソード③
ロープウェイは徳川家康が眠る久能山に通じている
最後は久能山東照宮(くのうざんとうしょうぐう)の話。
幼年時代と晩年を駿府(すんぷ)で過ごした徳川家康は、死去する前に二代将軍・秀忠に残した遺命によって、この地に埋葬されている。
久能山東照宮は日光東照宮より19年も早く建立され、社殿の「権現造」は後の東照宮の原型となった。
厳密に云うと、久能山東照宮は日本平にあるのではなく、谷を隔てて隣接する久能山に造られているのだが、日本平からロープウェイで行くことができるため、あわせて紹介されることが多い。
なお、久能山東照宮については別途記事を設けて詳しく記載しているので、興味があればぜひ。こちらにも「マジか?」という逸話を載せている。
日本平の駐車場と車中泊事情
日本平にはトイレと無料の駐車場があるので車中泊はできそうだ。ただし駐車場には緩やかな傾斜がある。
また日本平は「日本夜景遺産」に認定されているので、それを見に来る人で混雑する日もありそうだ。
近くの車中泊スポットとしては、三保松原に近い「清水三保海浜公園」の無料駐車場が挙げられる。
新名所「日本平夢テラス」
日本平の新名所となった「夢テラス」は、富士山はもちろん三保松原、駿河湾、静岡市街地などの眺望が、360度のパノラマで楽しめる無料の展望施設で、室内と屋外の2つの見どころを持っている。
建築を手掛けたのは、新国立競技場を設計した「隈研吾(くま けんご)建築都市設計事務所」で、木をふんだんに使った屋根には「らしさ」が垣間見えている。
室内では神話・伝説の時代からの日本平の歴史がパネルで紹介されており、プロジェクションマッピングで日本平の地形を見ることができる。
とはいえ、圧巻はやはり展望回廊から見える富士山だろう。ただし夏場は、富士山が見える確率の高い早朝が狙い目だ。
室内は平日と日曜は午前9時から午後5時、土曜日は夜9時で閉館するが、展望回廊へは公園から24時間アクセスできる。
日本平 夢テラス オフィシャルサイト