この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
「駿河湾フェリー」は、清水から西伊豆に向かう一番ラクで便利なルート
駿河湾フェリー【目次】
駿河湾フェリーの概要
「駿河湾フェリー」は、静岡市の清水港と伊豆半島の土肥港を70分で結ぶカーフェリーで、上のマップを見れば、その「値打ち」は一目瞭然だと思う。
道路整備が進んだとはいえ、伊豆半島の西海岸を走る国道414号は相変わらず渋滞しがちだ。
それに比べるとフェリーでのアクセスは快適で、天気が良ければ駿河湾上から雄大な富士山も眺めることができる。
それに何より楽チンで到着も早い。
2020年2月現在の料金は以下の通り。
旅客普通運賃
大人 2,300円
自動車航走運賃(運転者1名含む)
4m以上~5m未満 5,990円(期間B・土日祝)
※予約をすれば5,360円、さらに平日は4,410円
陸路との料金比較
ちなみに陸路と比較すると、清水港から土肥港までは、高速道路を利用して約105キロ・所要時間は渋滞無しで約100分。
高速料金は1,740円、燃費をリッター8キロ・ガソリン1リットル150円で試算すると、かかる費用は約3,700円になる。
問題はこの差額を、自身の「運転労力」と比べてどう同判断するかだが、運転労力は年令とともに高価になる(笑)。
なお、フェリーの甲板などに設置されている「県道223号(富士山(ふじさん)にちなんだ語呂合わせ)」は、観光促進を目的に、2013年(平成25年)4月に清水港土肥線として正式に認められている。
ただし、道路交通法上の整備と供用開始手続きが取られていないため、扱いは「未供用県道」となっているらしい。
静岡県には、ちょっとお茶目なことができる役人さんがいるようだ(笑)。
存続の危機を回避
だが2018年5月25日に、衝撃的なニュースが報道された。
「駿河湾フェリー」を運行する、鈴与グループの「エスパルスドリームフェリー」が、「駿河湾フェリー」の事業から2019年3月末をもって撤退すると発表したのだ。
しかし「エスパルスドリームフェリー」側から静岡県に対し、フェリー1隻と船舶発着所、桟橋などを無償で譲渡するとの申し出があり、事態は急転。
県が主体となって市町や関係団体、運航のノウハウを持つ民間事業者らと協力しながら、航路を存続させることになった。
ローカルフェリーは、シニアの車中泊旅行者を意識すべし
かつて同じような事態が、三重県の鳥羽と愛知県の伊良湖を結ぶ伊勢湾フェリーでも生じたのだが、本来クルマ旅を効率よく楽しむには、こういった短航路のローカル・フェリーが有効だ。
だが、その良さを旅人に知ってもらおうという努力が、どの船会社も足りているとは思えない。
対策は、ほんの少しアタマを捻るだけで見えてくる。
同じ西伊豆の土肥までに行くのに、時間があって平日でも動け、そのうえ長距離運転を避けたい一番のターゲットは誰なんだ。
すなわち、シニア世代の車中泊旅行者に、運転の負担が軽減されるフェリーの良さをPRすると同時に、魅力を感じる大胆な割引を提供するのが有効なのだ。
先ほどの陸路の試算を「夫婦2人」で下回る料金を示せば、筆者でなくても飛びつくに違いない。
加えて、日本各地のローカル・フェリーが割引クーポン券を合同で発行するなど、「ニッポン」というスケールでその良さを訴求していくことも必要だろう。
たとえば、先ほどの伊勢湾フェリーと組めば、伊勢→鳥羽→伊良湖→浜松→清水→伊豆という、これまでにないクルマ旅のコースを組むことが可能になる。
それには、政府も表面ヅラのいい「インバウンド」にばかり、多額の予算を計上している場合ではあるまい。
自民党は、日本人が日本を安全・かつ快適に旅することができなくなってきているという事実を、もっと真摯に受け止めるべきだと思うのだが…