この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

「登呂遺跡」の発見は、日本考古学のターニングポイントになった重要な出来事
登呂遺跡【目次】
そうだ!「アラ還」世代は、静岡に来たら登呂遺跡へ行こう。
筆者と同じ「アラ還」世代は、子供の頃に「登呂遺跡」を社会科の教科書で見ているので、アタマの片隅に残っている人が多いと思う。
でもそれって、縄文時代? 弥生時代? そもそも、どこにあったっけ?
大きな声では云えないが(笑)、実は大半はこのくらいあやふやな記憶で、まさに名前だけしか覚えていない… のではないだろうか。
そりゃ、半世紀近く脳裏から消えていたのだからしかたがない(笑)。我々はもう「昨日の夕食は?」と訊ねられても、スッと思い出せないのが普通なのだ。
だが、調べてみて驚いた。
なんと最近の教科書には「登呂遺跡」は載っておらず、代わりに「吉野ヶ里遺跡」と「三内丸山遺跡」が載っているという。
筆者はどちらにも足を運んでいるが、確かに今、子どもたちに見せるべき日本の古代遺跡は、縄文時代なら2021年に世界遺産に登録されたばかりの「三内丸山遺跡」、そして弥生時代なら邪馬台国との関連性が囁かれる「吉野ヶ里遺跡」だと思う。
では「登呂遺跡」は、我々が子供頃にあった価値を失ってしまったのか?というと、それはベクトルの違う2つ答えに分かれるだろう。
まず「客観的に古代の日本を現代に伝える遺跡」としての価値が、以前よりも薄くなっていることは否めない。
たとえば、青森県の田舎館にある「垂柳遺跡」では、なんと古代人の足跡が鮮明に刻まれた水田の跡が見つかっている。
このように日本各地で水田や稲作跡が発見されたことで、それが「登呂遺跡の専売特許」ではなくなってしまったわけだ。
しかし「登呂遺跡の発掘調査がもたらした成果」は、”永遠に不滅”だ。
「登呂遺跡」の発掘により、日本史を歪め続けていた「神話の壁」が崩れ、我国の古代史は「史実の春」を迎えた。
このサイトでは、遺跡の紹介はサラッと済ませ、興味深い”永遠に不滅”の話を、しっかりとお届けしようと思う(笑)。
サラッと紹介。登呂遺跡の概要
ザックリ云うと、国の特別史跡に登録されている「登呂遺跡」は、弥生時代の集落・水田跡で、年代的には約1800年前、邪馬台国の卑弥呼が活躍した時代より、100年ほど遡ったあたりとされている。
そこからは、当時最大の弥生時代後期の水田と、12軒の竪穴式平地住居跡と2棟の高床倉庫を含む「ひとつの村」が丸ごと出土し、多くの土器や木製品、装飾品、衣類などとともに「世紀の大発見」として話題になった。
遺跡は現在「登呂公園」として整備され、住居などが復元されているほか、出土品や関連資料を展示する「静岡市立登呂博物館」が隣に建てられている。
展示の詳細は、公式サイトで確認を。
静岡市立登呂博物館
☎054-285-0476
おとな300円
9時~16時30分・月曜定休
登呂遺跡公園は24時間解放
駐車場の利用時間は8時30分~17時、料金は普通乗用車 1回 400円。
重要なのは、登呂遺跡発掘の「意義」

出典:静岡市立登呂博物館
さて。「登呂遺跡」が発見されたのは、戦況の雲行きが怪しくなってきた戦時中の1943年(昭和18年)。
住友金属工業のプロペラ製造工場の建設現場での出来事だった。
そして戦後間もない1947年(昭和22年)に、考古学者だけではなく、人類学、農政学、地質学など多くの分野の学者たちによる共同発掘作業が行われている。
今日の話の「キモ」はここだ。
この調査の真の目的は、これまではびこってきた皇国史観の払拭、すなわち日本における「科学的考古学」の夜明けにある。
そもそも縄文時代や旧石器時代の存在は、神話を唱える古事記・日本書紀と真っ向から対立するもので、それはすなわち、天皇家の歴史そのものを揺るがす根拠となる。
今でこそ日本は、神話と史実が絶妙のバランスで共存する「ダブルスタンダードな歴史を持つ国」だが(笑)、80年前まで天皇は「現人神」だったわけで、戦後とは云え、よほどのことがない限り、まだこの「常識」を覆すのは至難の技だったに違いない。
もちろん背後にはGHQの支えがあったと推察されるが、登呂遺跡の「発掘調査」をきっかけに「日本考古学協会」が発足し、日本の考古学に「春」が訪れたのは事実だ。
教科書から「登呂遺跡」が消えたのは、見方を変えれば「もうその歴史的意義を、子どもたちにまで教えなくていいほど日本は成熟した」という、文部省の判断が関係しているのかもしれない。
結論として、僕らは良い教育を受けてきたと思う。
しかし、この話を小学生が理解できるように教えられる自信はない(笑)。
登呂遺跡 アクセスマップ
なお「登呂遺跡」に最寄りの車中泊スポットは、約15キロ・30分のところにある新東名高速道路の「静岡サービスエリア」の「ぷらっとパーク」だ。
「ぷらっとパーク」は一般道からアクセスして、サービスエリアの施設が利用できる道の駅のような存在で、ここに行けばコインシャワーが使える。