「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
お勧めは駐車場と由緒がある「和田寿老神の湯」と、広くて開放感に満ちた「毘沙門天芝の湯」
伊東温泉”七福神の湯” 車中泊旅行者から見たお勧めの浴場【目次】
伊東温泉の共同浴場
別府、由布院に次ぎ日本で三番目の温泉湧出量を誇る伊東温泉には、実に780本も源泉があり、そこからは50℃前後の熱湯が湧き出るため、そのまま加水せずにかけ流している施設が多い。
おかげで温泉街には今でも10軒の共同浴場が存在し、車中泊旅行客も200円から300円でその恩恵に授かることができている。
10軒もあれば、当然「湯めぐり」は成り立つわけで、気の利いた温泉地なら「温泉手形」を出してみたり、せめて「スタンプラリー」のひとつでも実施すると思うのだが、伊東温泉はそこまで商売熱心でもないらしい(笑)。
ただ特典はないものの、伊東温泉では”七福神の湯”なる冠をつけて、「共同温泉めぐり」を観光客に勧めている。
しかしそれは「アラ還」世代の筆者には、むしろ名湯の多い伊東温泉の値打ちを下げる「愚策」のように思える。
そもそも七福神とは
ドラスティックに云うと、七福神は神様の「ジャニーズ・アイドル」みたいなものだ(笑)。
七福神のメンバーは、恵比寿(えびす)・大黒天(だいこくてん)・毘沙門天(びしゃもんてん)・弁財天(べんざいてん)・寿老人(じゅろうじん)・福禄寿(ふくろくじゅ)・布袋(ほてい)。
実はこの7柱の神様のうち、純粋な日本の神様は恵比寿だけといわれており、他の6柱はインドや中国からやってきた、もとを辿れば何ら関連性を持たない神様たちで、出身地も宗教も異なる神様を、ひとつのグループにして売り出すのは、ジャニーズ事務所の常套手段に通じている。
もしかしたら、オーディションまであったかもしれない(笑)。
ということは、その人気にあやかって「七福神」を登用している観光地は、企画力のないテレビ番組のようなもの。
しかも伊東温泉には温泉だけでなく、「寺社の七福神めぐり」と アーケード通りの「お湯掛け七福神」までやっている。
ここまでこだわるのだからと、伊東温泉と七福神の関連性を調べてみたが、いくらネットを検索しても、そういう記載は見つからなかった。
ということは、適当に誰かがくっつけて訴求したしただけで、そこには深い意味などないのだろう。
それでは、草津や熱海と肩を並べる「江戸幕府への献上湯」という由緒、そして「東海館」という素晴らしい文化財を持つわりには、いささか軽いと云うか、子供相手の薄っぺらいやり方だと、揶揄されてもしかたがないと筆者は思うが、どうだろう。
伊東温泉の共同浴場と”七福神の湯”
現在、伊東温泉で一般観光客に開放されている共同浴場は、次の10軒。
湯川弁天の湯
松原大黒天神の湯
和田寿老神の湯
毘沙門天芝の湯
岡布袋の湯
小川布袋の湯
鎌田福禄寿の湯
恵比寿あらいの湯
以上が”七福神の湯”
そして”七福神の湯”以外の共同浴場が、湯川地区にある「子持湯」と「汐留の湯」だ。
それにしても、”七福神の湯”なのに8軒あるとはどういうこと?
「布袋さん」がかぶっているのは、当時の担当者が「BOØWY」のファンだっだからかも(笑)。
残念ながら、筆者は伊東温泉の共同浴場を全て周ってきたわけではないので、入湯レポートは「和田寿老神の湯」と「毘沙門天芝の湯」の2軒になる。
理由は、ここまで記してきた通り、全部まわる意味を感じないのと、駐車場がない施設が多いからだ。
そもそも筆者のような素人に、個々の温泉の泉質の違いがそれほど詳しく分かるはずはなく、しかもチャポチャポとハシゴ湯していたのでは、なおさらだ。
またネット上をかなり調べてみたが、”七福神の湯”にきちんと入湯している節を感じされるレポート記事は見つけられなかった。
ということは、自ら温泉通を自負する人たちも、筆者と同じように思っているのかもしれない。
これまでの経験上、筆者は「温泉めぐり」には、アトラクション的要素と、多少なりとも利便性が求められると思っている。
たとえば長野県の「渋温泉」のように、そこをうまく構築できれば、筆者のようなシブチンの腰を上げさせることも可能だ。
和田寿老神の湯
さて。
歴史と由緒、そして利便性で選ぶなら、”七福神の湯”では「和田寿老神の湯」が筆頭に挙げられる。
伊東温泉で最古の歴史を誇り、江戸時代に入る直前の1598年(慶長3年)には既に湯小屋が建っていて、1650年(慶安3年)に病弱だった徳川家光へ源泉の献上が行われたとされている。
また1936年(昭和11年)に種田山頭火が入湯した旨を記す石碑も、外の植え込みに飾られていた。
そのわりに建物が新しいのは、現在の「和田寿老神の湯」が2008年(平成20年)に建て替えられた「和田湯会館」の1階にあるためで、隣には12台のクルマが置ける駐車場がある。
ただ厄介なのは、同じ温泉なのに幾つもの名前があること。「和田寿老神の湯」は、「和田寿老人の湯」「和田温泉会館」「和田湯」「和田の大湯」とも呼ばれることがあるようだ。
浴場は内湯のみで、大人が4人でちょうどくらいの湯船がひとつ。
プールみたいで風情には欠けるが、「和田寿老神の湯」には43度の源泉が満たされており、正直熱すぎてそれどころじゃない。
三代将軍・家光じゃないが、シャキッとなること請け合いだ(笑)。
それにえてして、有名どころの温泉地にある共同温泉とはこういうもの。
もちろんこの値段なので、シャンプーやボディーソープは置いてないが、シャワーはあるだけいい。
泉質:単純泉
泉温:52.8度
PH:8.2
☎0557-37-0633
おとな300円
14時30分~22時30分・水曜定休
駐車場 12台 無料
毘沙門天芝の湯
「和田寿老神の湯」にも増して、風情とは縁遠い外観を持つのが「毘沙門天芝の湯」で、これにはスーパー銭湯も顔負けする(笑)。
とはいえ”七福神の湯”の中では最大の規模を誇り、浴場・脱衣所ともに開放感があるので、観光客は利用しやすい。
源泉は泉温56度の単純温泉で、加水はしているが、「循環ろ過」ではなくかけ流し。露天風呂はないが、内湯の一角にジェットバスが用意されている。
ただし温度は「和田寿老神の湯」と同じく熱めに設定されているため、長くは浸かっていられないだろう。
シャンプーやボディーソープは置いてないものの、シャワーは完備。駐車場も26台収容と広く、汗を流したい旅人にはここが一番のお勧めだと思う。
ちなみに「道の駅 伊東マリンタウン」に併設している日帰り温泉「シーサイドスパ」は、通常時間は大人1000円、20時以降の「ナイト割引」でも900円とお値段高め。
また温泉旅情が感じられ、伊東温泉の日帰り施設ではダントツお勧めの「東海館」は、土日祝限定の営業で、少し離れた市営駐車場を利用する必要がある。
ゆえに消去法で行くと、「道の駅 伊東マリンタウン」から約2.5キロ・クルマなら5分で来れるこの「毘沙門天芝の湯」が、一番コスパのいい日帰り温泉になる。
泉質:単純泉
泉温:56度
PH:8.3
☎0557-36-3377
おとな300円
14時~22時・火曜定休
駐車場 26台(中型可)無料
出かける前に知っておこう!
友達・家族に「一目置かれる」温泉ネタ
伊東温泉 車中泊旅行ガイド
東伊豆 車中泊旅行ガイド
伊豆半島 車中泊旅行ガイド