この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。

黒部峡谷はトロッコ列車でしか行くことのできない、手つかずの自然と野趣に満ちた温泉が待つ秘境
トロッコ列車で行く黒部峡谷 車中泊旅行ガイド【目次】
黒部峡谷のロケーション
「黒部峡谷」とは、黒部川の中流から上流にあるV字谷の総称で、国の特別天然記念物(天然保護区域)及び特別名勝に指定されており、中部山岳国立公園に含まれる。
大正時代に入り、水量が豊かで高低差のある黒部川の「水力発電に適した環境」に目をつけた日本政府は、大量の電力を必要とするアルミニウム精錬のため、黒部峡谷における電源開発に着手する。
黒部峡谷の電源開発
ご承知の通り、現在は最上流部に「黒部ダム(黒部川第四発電所)」があるのだが、宇奈月温泉に至る下流域にも、「愛本発電所」「黒部川第二発電所」「黒部川第三発電所」などが存在している。
とりわけ欅平駅に隣接している「黒部川第三発電所」の建設工事は、地底で摂氏160度に達する高熱の岩盤を掘り進むという過酷なものとなり、300名以上がその犠牲者となった。
高熱隧道
黒部川第三発電所の水路トンネルと、欅平駅に通じる軌道トンネルの工事現場や人間関係を、現場土木技師の目を通じて描いた長編小説。
一説ではそれが映画「黒部の太陽」制作の伏線になったともいわれている。
ちなみに黒部ダム建設の殉職者は171人で、それにはこの建設工事での教訓が生かされた。
なお、クロヨンこと「黒部ダム」の建設に関連する話ついては、以下の記事に詳しくまとめている。
黒部峡谷鉄道の歴史
さて。
現在の「黒部峡谷鉄道」の前身は、黒部峡谷の電源開発の輸送手段として作られた「黒部軌道」だ。
当初は電力会社の専用鉄道として、建設用の資材や作業員輸送のみを行っていたが、秘境と呼ばれる黒部峡谷の探勝を希望する人が絶えないため、やむを得ず便乗を許可していたらしい。
当時の切符には、生命の保障はしないという旨の注意書きまであったというエピソードも残るが、現在は地方鉄道法による営業免許を受け、主に観光列車として安全運行している。
もっともこれらは黒部峡谷全体から考えるとごく一部であり、現在も欅平から先に少し進めば、人を寄せ付けない険しい世界が待ち構えている。
なお「黒部峡谷鉄道」終着駅は「欅平」だが、ゴールデンウィークにはまだ雪が多く残るため全線開通には至らず、途中の温泉がある「鐘釣(かねつり)」駅までの運行になることが多い。
日本国内最大級のダムとなった「黒部ダム」は、完成後に工事用に作られた道路が一般開放され、現在は峡谷を横切る「立山黒部アルペンルート」の一部として観光に活用されている。
交通アクセスが格段に改善したことで、黒部ダム一帯は年間1000万人以上が訪れる観光地に発展した。
また同時に、宇奈月温泉を始め、黒薙(くろなぎ)温泉、鐘釣温泉などの温泉地をつなぐ「黒部峡谷鉄道」は、黒部川の源流に沿ってアクセスできる鉄道ルートとして、同じ黒部観光に一役買っている。
思っているよりも小さいトロッコ列車
客車はトロッコらしく簡便な雨除けだけがついたものもあるが、屋根とガラス窓がついているデラックスな車両も登場。2009年からは、滑川市出身の室井滋が沿線の名所を案内するナレーションも流れている。
「黒部峡谷鉄道」沿線に湧く、”3つの秘湯”
ここからは黒部峡谷鉄道沿線の見どころを秘湯とともに紹介しよう。
最初は終点「欅平」まで行く途中ある、「鐘釣」と「黒薙」から。
なお終点の「欅平」にも秘湯があるので、一度に全部はしんどいかもしれない。
だが「鐘釣」までは「雪の大谷」にあわせて運行が始まるので、それと抱き合わせする手がある。
また紅葉シーズンに行くなら、「欅平」の「祖母谷温泉」がお勧めだ。
終点「欅平」の”紅葉ハイキングガイド”
前述したが、黒部峡谷のベストシーズンはやはり秋で、その場合のハイライトになるのは、トロッコ列車の終点駅「欅平」だと思う。
そこで、紅葉シーズンの「欅平」の楽しみ方を以下の記事にまとめてみた。
2024年に欅平から黒部ダムまでの「黒部ルート」が開通予定

出典:のりものニュース
黒部峡谷鉄道の「黒部ルート」とは、終点「欅平駅」と「黒部ダム」を結んでいる、関西電力の「業務用物資輸送ルート」のことだ。
ご承知の通り「黒部峡谷鉄道」が運行するトロッコ列車は、終点の「欅平駅」で「行き止まり」になっており、現在一般開放されている黒部ダムへのアクセスルートは、「立山黒部アルペンルート」しかない。
しかし本来の「黒部峡谷鉄道」は、黒部ダム及び関連施設の建設と、その維持管理のために、関西電力関係者が利用することを主たる目的としてきた鉄道路線で、実際は「欅平駅」から先の「黒部ダム」まで線路は敷かれている。
そこで2018年10月、富山県と関西電力はその「黒部ルートの一般開放・旅行商品化に関する協定」を締結し、現在は2024年の一般開放に向けて、協議と準備が進められている。
「黒部ルート」の観光ルート化が実現すれば、行きは「黒部峡谷鉄道」、帰りは「立山黒部アルペンルート」という壮大な「周回ルート」が実現し、効率的な移動が可能になる。
黒部峡谷の玄関「宇奈月温泉」の概要と車中泊事情
「黒部峡谷鉄道」の発着点となる宇奈月温泉は、黒部川の電源開発とともに栄えてきた温泉町で、黒部峡谷方面にマイカーで行けるのはここまでになる。
立山黒部アルペンルート 車中泊旅行ガイド
黒部ダムの詳細情報はこちら。