「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
トロッコ列車に揺られて行く、「宇奈月温泉」に源泉を供給している秘湯「黒薙温泉」。
黒薙温泉【目次】
黒薙温泉までのアクセス
写真のトロッコ列車で宇奈月温泉駅を出発してから約25分。目的の露天風呂は、この黒薙駅から約600メートル、徒歩で20分のところにある。
ただし道中は、展望はいいがサンダルでは危険な登山道が続く。
ということで、黒部峡谷鉄道が作った地図に筆者の写真を加えて、見どころをガイドしながら進むとしよう。
マップの吹き出しの通り、プラットホームからいきなり急な石段が始まる。
こちらはマップ❶の、黒薙川から高さ50mの位置に架けられている「跡曳水路橋(あとびきすいろきょう)」。
1927年(昭和2年)に、猫又から新柳河原発電所へ送水するために設けられた、コンクリートの巨大なアーチ橋で、長さ48m・幅10mという当時最大級のスパンを誇っている。
日本の昭和初期の技術水準の高さを物語る橋梁のひとつで、もう少し時間が経てば「日本遺産」の候補に挙げられるかもしれない。
それを超えると展望が広がり、黒部峡谷鉄道の中でも屈指といえるトロッコ列車の撮影スポットが待っている。
トロッコ列車が渡っている高さ60mの「後曳橋(あとびきばし)」は、沿線でもっとも深く険しい谷に架かる橋で、マップの双眼鏡マークの位置から、列車が通過する様子がリアルに撮影できる。
ちなみにトロッコ列車はゆっくり走るので、スマホでも問題ない。
なお、撮影スポットから先のマップ❷「黒薙遊歩道」は、温泉まで黒薙川沿いに比較的平坦な道が続いていく。
黒部峡谷最古の温泉宿「黒薙温泉旅館」
「黒薙温泉旅館」は、黒部川最大の支流「黒薙川」に面した、木造二階建ての一軒宿で、もとは湯治場であったが、自炊所は2008年度(平成20年度)に廃止され、現在は宿泊者向けのフリースペースとなっている。
簡素だが食堂もあり、日帰り客は11時30分から13時までの間に、山菜定食・きのこそば・カレーライスなどが食べられる。
なお黒部峡谷では、長きにわたって携帯電話が通じなかったが、2016年からNTTドコモのエリアになっているようだ。
それでも日本郵便からは「交通困難地」の指定を受けているため、郵便物は届かない。Amazonはどうなんだろうね(笑)。
黒薙温泉の混浴大露天風呂
黒薙温泉の泉源は、混浴露天風呂のすぐ手前にある。
毎分2,000リットルの豊富な湧出量を誇り、黒部川の7キロほど下流にある「宇奈月温泉」の分まで、全部賄っているというから驚かされる。
さて。こちらが「源泉(いずみ)」と名付けられた、自慢の混浴大露天風呂。
河原に広がる広さ28畳敷相当の湯殿は、まわりを天然石で囲み、中央に大岩を配したダイナミックなつくりで、底にも黒部川の天然石が敷きつめられている。
峡谷のワイルド感あふれる景観を背景に、間近を流れる黒部川の川の音が響き渡る、まさに人里離れた「秘湯」の情緒がそこにはあった。
なお時間は季節によって変動するが、混浴露天風呂には女性専用タイムがあり(入浴時は水着・バスタオルの着用可)、湯殿の脇にテントの更衣室も用意されている。
また現在は吊橋を架けた川向かいに、女性専用屋根付き露天風呂「天女の湯」が新設されている(こちらには男性専用タイムがある)。
旅館に併設された男女別の内湯には、シャワーとシャンプーとボディーソープがあるので、髪もちゃんと洗って帰れる。
大人800円(税込)
営業時間:9時~15時15分
☎:0765-62-1802
予約・問い合せの受付時間:平日の8時~16時
立山黒部アルペンルート 車中泊旅行ガイド
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