この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
トロッコ列車の終着点「欅平」は、紅葉の季節に訪ねたい黒部峡谷のハイキングスポット
黒部峡谷「欅平」の紅葉ハイキングガイド【目次】
「欅平」の概要
北アルプスと立山連峰の間に、あたかも鋭い斧で刻みつけたようなV字の谷が走る黒部渓谷。
その渓谷沿いを、黒部川に沿って走る「黒部峡谷鉄道」のトロッコ電車の終着駅が「欅平駅」だ。
出発点の「宇奈月駅」から揺られて走ること、およそ1時間20分。
ここが観光客が交通機関で黒部峡谷に行ける最深部になるわけだが、駅の周辺は散策しやすいように整備されており、トロッコ列車を降りたほとんどの旅人は、「欅平」でのハイキングを楽しみにやってくる。
「欅平」ハイキング時の留意点
他の「欅平」を紹介しているサイトの多くは、ここからいきなり「見どころ」に進んでいくのだが、筆者はその前に重要な情報が欠落していると思っている。
普段から旅歩きをしていない人間は、コースタイムという概念がアタマにない。
観光と電力関係者以外に住む人のいない「欅平」には、確かに秘境ムードに満ちた観光スポットが点在するが、そのすべてを見て周るとなると、1日仕事になるだけでなく、それなりの脚力が求められる。
普段から山歩きをしている人は苦にならないかもしれないが、そうでない人は事前に”自分に適した散策コース”を決めておくほうがいい。
ちなみに「欅平」のハイキングに必要な時間は、トロッコ列車の往復乗車に、待ち時間を加味して約3時間。
それにハイキングと昼食に要する時間として、3時間を割り当てるとしたら合計6時間。朝8時に「宇奈月駅」を出発して、午後2時に戻って来られる計算になる。
ちなみに「欅平」駅から「猿飛峡」までは片道約40分。
また後述する秘湯「祖母谷温泉」までは、片道およそ1時間の道のりがある。
そのうえ「欅平」は食事が食べられる施設が限られているので、弁当を持参をしていかないと、下手をしたら昼食にありつけない事態だってあり得るわけだ。
以上の説明でお分かりのように、昼食込みで3時間というのは、物理的にほとんど「欅平駅」周辺にしか行けないということ。
であれば、「何時の帰りの便」を予約しておくのが最善策になるのか?
プロはそこから旅を組み立てていくから「外さない」。
欅平の紅葉
まず、黒部峡谷の紅葉シーズンは例年10月中旬から11月中旬頃になる。
ただし標高の高い「欅平」は一番先に色づいてくるので、そこで紅葉を楽しむには10月末がお勧めだ。
また黒部峡谷には、ツガ・キタゴヨウ・ネズコなどの常緑樹が多く、そこにカエデ・ナナカマドなどの紅葉樹や、カツラ・ブナなどの黄葉樹が混在しているため、3色のコントラストが鮮やかな、いかにも自然林らしい景観が生まれる。
紅葉の見どころは、奥鐘橋から伯母谷温泉にかけて
ここで断っておかなければならないのは、さきほど書いた「時間と脚力の都合」により、筆者はマップの「河原展望台」から下流にある「猿飛峡」には足を運べていない。したがって、この先は駅から上流部の話になる。
なお2021年10月現在、「猿飛峡」へ通じる遊歩道は、途中の落石により通行止めとなっている。
紅葉スポット❶ 奥鐘橋周辺
「奥鏡橋」は、「欅平」駅から徒歩5分のところにある、黒部川の本流に架かる朱塗りの橋で、河原からの高さは34mある。
そのため橋の上と周辺からは、深くえぐられた谷と黒部川、そして岩肌を染める紅葉の様子を見ることができる。
その先に続く岩壁をえぐり取って作られた歩道は、大きく口を開けた岩が人を飲み込むように見えることから、「人喰岩」と呼ばれている。
さらに「人喰岩」から15分ほど歩いたところには、「日本の秘湯を守る会」に加盟する宿で、日帰り入浴のできる「名剣温泉」がある。
名剣温泉旅館
0765-52-1355
おとな770円
10:00~14:30・不定休
※2021年10月現在、公式サイトに日帰り入浴に関する情報なし。行かれる際は事前に電話で確認を。
「欅平・紅葉ハイキング」のポピュラーなコースは、駅の下にある「河原展望台」からスタートして、「名剣温泉」で疲れを癒やして戻る、このショートコースになるだろう。
紅葉スポット❷ 祖母谷温泉周辺
さて。「名剣温泉」から「祖母谷(ばばだに)温泉」までは、V字谷が覗ける山道を延々と辿るわけだが、さすがに人の姿もまばらになり、いよいよ黒部峡谷本来の姿が見えてくる。
ここから先は、関電関係者と白馬岳や唐松岳への頭頂を目指す、本腰の入ったアルピニストたちの領域だ。
これまでと違い、山肌には広葉樹の数も多くなる。
ゴールの標高770メートルに位置する「祖母谷温泉」は、黒部峡谷鉄道の「欅平駅」から約2.5km上流の、河原に湧きだす秘境の湯。
その湯守りをする山小屋が、白馬岳や唐松岳への登山口に建っている。
歩くのは往復5キロほどなので、時間配分さえ間違えなければ、それほど難しいコースではない。
紅葉のシーズンに出かけるのなら、ぜひこのロングコースにチャレンジしてみていただきたい。
立山黒部アルペンルート 車中泊旅行ガイド
黒部ダムの詳細情報はこちら。