「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。

ワンコインそば処「十割そば さくだ」の魅力は、蕎麦よりも店主の生き様かもしれない。
筆者はこれまで5回ほど修善寺を訪ねているのだが、これから紹介する「さくだ」は、前々から気になっていた店だ。
その根底あったのは、修善寺のような観光地で、云っちゃ悪いが、こんな「掘っ立て小屋」みたいな店の営業がよく許されているものだという疑問(笑)。
そばがうまい・まずいの前に、そのほうがよほど気になった。
ただ取材が目的で旅をしている筆者は、修善寺のような人気観光地に行く時は週末を外すことが多い。
そのため「さくだ」の前を通る時は、決まって「定休日」に当たっていた。
だが2021年は予定が狂い、日曜日に修善寺を訪ねることになったため、ついに営業日に前を通りかかった。
幸いにも行列は短く、これなら並んでみようという気になった。
30分ほど経ってようやく店内に案内されると、中には放送されたテレビ番組の写真と、訪れた芸能人のサイン色紙が展示されていた。
そりゃ修善寺でこんな形態の蕎麦屋をやっていれば、バラエティー番組が飛びつくのも不思議じゃない(笑)。
しかもメニューは「おまかせ」のみ。そんな強気のスタイルとくればなおさらだ。
幸か不幸か、筆者の数人前で蕎麦がなくなり、目の前で自慢の「十割そば」を捏ねる様子を拝見することができた。
ただ「さくだ」では、粉を捏ねるところまでは手打ちだが、そこから先は製麺機にかける。
伸ばして粉を打って、包丁でそば切りまでしていたら、ますます時間がかかるのかもしれないが、逆にその工程を省くことで麺が乾燥せず、「十割そば」のプツプツと切れやすい特性を抑える効果もあるらしい。
こちらが最初に出される「塩そば」。
おろしたての生ワサビと、フランス産の岩塩をそばによく混ぜていただく。
確かにこういう食べ方には、喉越しの良い「二八そば」より、「十割そば」のほうがあっているし、味もよく分かる。
そしてこちらが、メインディッシュの天ぷらそば。天ぷらはサツマイモではなくジャガイモだ。
サツマイモには甘みがあって、そばとは違う味が楽しめる利点があるが、それがそばの味わいを曖昧にしてしまうとも云い換えられる。
だがジャガイモには甘みがほとんどないため、歯ざわりは楽しめるが、味を惑わすことはない…ってことなのかな。
最後は食べ終わった器に、ゆずと天かすとそば湯を注いでもらっておしまい。
正直なところ、コースはおやつ程度の量しかない。
店主いわく「五十両」のワンコインだけに、それは致し方のないことだが、最初からそのつもりで行かないと、明らかに物足りなさを感じるだろう。
「食レポ」としては、本腰入れてそばを食べたいのであれば、「独鈷そば 大戸」のような専門店のほうがお勧めだと思う。
関東と関西のツユの違いもあって、食べログに書かれているほど「素晴らしくおいしい」とは思わなかった。
ただ冒頭に記したように、ワンコイン屋台「十割そば さくだ」の魅力は、店主のトークから滲み出る生き様だと思う。
この店に行くなら、事前に以下の記事を読んでからのほうがいい。
これを読めば「なぜ修善寺で屋台のそば屋が許されているのか」も分かる(笑)。
なおマップは載せているが、店には駐車場はないので気をつけて。
クルマは筥湯の前にある1日400円の「月の庭」の駐車場に駐め、そこから歩いていくのが無難だ。
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