車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家が、奥飛騨温泉郷の車中泊事情と、6つの車中泊スポットを詳しく紹介しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊スポットガイド
この記事は車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、現地取材を元に「車中泊旅行における宿泊場所としての好適性」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
「奥飛騨温泉郷」は、特にキャンピングカーに対する風当たりが強いのでご用心。
「奥飛騨温泉郷」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2003年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2003.10.04
2008.04.30
2013.09.26
2014.10.10
2016.02.11
2018.04.27
2024.07.27
※「奥飛騨温泉郷」での現地調査は2024年7月が直近になります。
奥飛騨温泉郷の車中泊事情と車中泊スポット
必要なものが勢揃い! 楽天市場の「車中泊グッズ」大特集奥飛騨温泉郷の車中泊事情
「奥飛騨温泉郷」の「栃尾温泉」に、「荒神の湯」という露天の共同温泉がある。
その「荒神の湯」に隣接する無料の広場には、24時間使えるトイレがあり、20年ほど前は、車中泊はもちろん、ゴミの回収まで引き受けてくれるほど親切な場所だった。
筆者にはそこで、使い込んだキャンピングカーに乗る車中泊のベテランから、”シニアのいい旅”の手ほどきを受けた、懐かしい思い出がある。
ところが状況は変わり、2008年頃には車中泊禁止の看板と放送が流れるようになり、2013年にはとうとう駐車場の入口に、高さ2.2メートル以上の車両が入れないようロープが張られた。
2018年に訪ねてみると、実は車高2.2メートル以下の乗用車は、昔と変わらずここで車中泊をし、中には長期滞在をしているような人も見受けられた。
ということは、
”暗にキャンピングカーのみお断り”だ。
それは裏返して云うと、車高2.2メートル以上のクルマは全員マナー違反をすると、クルマのサイズだけで無条件に判断している以外の何物でもない。
分かりやすく例えると、あるコンビニの責任者が、A中学の制服を来ているだけで「万引きの恐れがあるため、全員出入りを禁止する」と云っているのと変わらない。
すなわち間違いなく、日本国憲法に抵触する「差別行為」である。
バカバカしくなった筆者は、以降「奥飛騨温泉郷」に足を運ぶことをやめてしまったが、SNSの2024年GWの投稿を見ると、その状況は今も変わっていない。
そもそも都会では、このような「差別行為」は即刻問題にされてアウトだと思うが、どうやら「奥飛騨温泉郷」は”治外法権”のようで、それが15年以上続けられているのは、行政が黙認しているからとしか思えない。
筆者個人は「荒神の湯」で車中泊がしたいわけではないので、取り立てて問題視してこなかったのだが、さすがに上高地行きのシャトルバスが出る「あかんだな駐車場」での車中泊禁止は無視できなかった。
通年マイカー規制が行われ、岐阜県側からは「あかんだな駐車場」でシャトルバスに乗り換えるしか、北アルプス登山のベース基地でもある「上高地」に行くことができないにもかかわらず、このような体制を敷かれてしまうと、首都圏や京阪神からなどの遠方から訪れる登山客は、多大なる迷惑を被ることになる。
さすがに品のない看板は、2018年にはこのように付け替えられたが、実態は変わらず、10年以上にわたって北アルプスを愛する人々に迷惑をかけ続けた。
幸いにも上高地には、長野県側の「沢渡」にもシャトルバスの乗り換え駐車場があり、そちらを利用すれば車中泊ができたわけだが、この非常識さを許すわけにはいかないと、ブログでその実態をネットに公表した結果、これまでに延べ1万人以上の人が目にしている。
そのおかげかどうかは分からないが(笑)、2022年についに「あかんだな駐車場」は24時間出入りが可能となり、「車内泊禁止」の表示も消えてなくなった。
おかげで乗用車で来る人には、2022年以前のような理不尽は解消されている。
だが、キャンピングカーに対する「差別」もしくは「いじめ」は変わっていない。
ただ…
こうまでしたい「奥飛騨温泉郷」当局の気持ちは、まったく分からないでもない。
※湯治と温泉旅は別物
「奥飛騨温泉郷」に限らず、車中泊で温泉めぐりを楽しんでいる人々の中には、「湯治」気分で温泉に近い無料駐車場に長期滞在をする人が後を絶たない。
本来の「湯治」は、専門医から入浴方法や体調の維持・管理の指導を受けながら、特定の病気や怪我の治療を目的に、長期間(少なくとも一週間以上)温泉地に滞留する医学療法のひとつだ。
つまり、癒しや観光目的の「温泉旅行」とは根本的に異なる。
車中泊の旅人の中には、自らの温泉めぐりが、「湯治」か「旅行」かの区別がつかない人もいるようだが、「湯治」のイロハを知る温泉地の人の目はごまかせない。
もっとも、それがキャブコンキャンピングカーに乗る人だけみたいな扱い方は、とてもじゃないが肯定されるべきものではあるまい。
すべての車中泊旅行者に対して公平でないのは、マナーうんぬんより、何度も書いているように「差別」であることに、早く気づいていただきたい。
なお筆者は、岐阜県にその撤回をわざわざ申し入れなどしていない。
それはキャンピングカーを販売しているディーラーで作った組織がやるべき仕事で、ただの評論家みたいな立場の筆者には、”関わり合いのない話”だ。
しかし、これだけユーザーが迷惑しているのを”見て見ぬふり”をするのだから、いい根性をしているとは思う(笑)。
温泉めぐりがしたいならキャンプ場へ
①飛騨温泉郷オートキャンプ場
「奥飛騨温泉郷」には2つのキャンプ場があるが、キャンピングカーにお勧めなのは「道の駅 奥飛騨温泉上宝」に隣接する高規格な「奥飛騨温泉郷オートキャンプ場」で、電源サイトはもちろん、場内に宿泊者専用の露天風呂まで揃っている。
②平湯キャンプ場
いっぽうアウトドアが好きなら、野趣あふれる自然の中の林間サイトで寛げる「平湯キャンプ場」のほうがいいと思う。
電源はもとより区画もないシンプルなキャンプ場だが、その分料金は安く、GWや夏休みなどの繁忙期以外は、夫婦なら1泊2400円で利用できる。
とはいえ、
夕方着いて1泊したあと、翌朝早く旅立つ車中泊旅行者にまで、キャンプ場に行けというのは高飛車すぎる。
ニーズにあった施設をうまく使い分け、いい意味での共存ラインを互いに守る…
それが「大人の打開策」というものだ。
そこで最後は、「奥飛騨温泉郷」の中で車中泊旅行者が一夜の「旅の宿」にできる場所を紹介しよう。
「奥飛騨温泉郷」にある、その他の車中泊スポット
③道の駅 奥飛騨温泉郷上宝
駐車場に”これみよがし”に「奥飛騨温泉郷オートキャンプ場」の入口ゲートがあるので気が引ける人もあるだろうが(笑)、基本的に全国どこの道の駅も、旅の疲れを回復させるための「仮眠」とみなされる「車中泊」は認められている。
④あかんだな 有料駐車場
前述したように、2022年から車高2.7メートル以下の車両は24時間出入りができるようになり、車中泊も可能になっている。
なお「あかんだな駐車場」は冬期閉鎖になるため、その間は「平湯バスターミナル」の駐車場での車中泊が認められている。
⑤ほうのき平 無料駐車場
乗鞍岳山頂部に通じる「乗鞍スカイライン(通年マイカー通行禁止)」のバス乗り場を兼ねた、”乗り換え用”の無料駐車場。
こちらも早朝から乗鞍岳登山に出る人が利用するため、車中泊をする人が多い。
徒歩圏内にスキー宿があり、日帰り入浴と食事もできるため、利便性は高い。
⑥鍋平 無料駐車場
西穂高に登る人がよく利用している、「新穂高第2ロープウェイ」の近くにあるトイレ付きの無料駐車場で、幹線道路から離れているため、普通は気がつかないような場所にある。
最後に。
このほかにも「平湯料金所脇のパーキングエリア」や、「新穂高村営駐車場」でも車中泊ができないわけではないが、前者は安房トンネル利用者の緊急用の駐車場的な位置づけであり、後者は早朝から新穂高ロープウェイに乗る大半の人が利用するため、よほどの事情がないかぎり避けたほうがいいと思う。
賢者の「奥飛騨温泉郷」での車中泊スポット選びの基準は、「できる・できない」ではなく「良いか・悪いか」だ。
奥飛騨温泉郷 車中泊旅行ガイド
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