25年のキャリアを誇る車中泊旅行家がまとめた、奥飛騨温泉郷のお勧め共同温泉と、これまで入湯してきた主な温泉の入湯レポートです。
「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊で訪ねた名湯レポート
この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国の温泉地の車中泊事情や温泉情緒、観光、グルメにいたる魅力を再評価し、「車中泊旅行者の目線」から紹介しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。

~ここから本編が始まります。~
風情のイチオシは現在復旧工事中の「神の湯」、野趣では「新穂高の湯」、総合的には「ひらゆの森」

「奥飛騨温泉郷」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2003年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
1997.08.15
2003.05.27
2003.10.04
2008.04.30
2011.02.11
2013.09.26
2014.10.09
2016.02.11
2018.04.27
2022.09.26
2024.07.27
2025.07.17
※奥飛騨温泉郷での現地調査は2025年7月が最新です。
奥飛騨温泉郷のお勧め共同温泉

奥飛騨温泉郷の共同浴場

「奥飛騨温泉郷」には、「平湯温泉」「福地温泉」「新平湯温泉」「栃尾温泉」「新穂高温泉」の5つの温泉地があり、各温泉地に共同浴場あるいは共同温泉と呼ばれる、公共の日帰り温泉施設がある。

そのうち2025年7月現在、存続しているのは以下の7軒になるのだが、共同温泉の中には老朽化が進み、改修を断念して閉鎖された施設も出てきている。
平湯温泉エリア
■平湯民俗館・平湯の湯
■ひらゆの森
■神の湯(休業中)
2014年6月14日(土)以降、対岸法面崩壊のため無期限の営業停止となっている。
栃尾温泉エリア
■荒神(こうじん)の湯
車高の高い車は駐車場に入庫できず、クルマで行くことが不能。
新穂高温泉エリア
■新穂高の湯
■中崎山荘 奥飛騨の湯
■ひがくの湯と登山者食堂
福地温泉の「石動(いするぎ)の湯」は、2025年6月に閉館

残念なことに、「福地温泉エリア」にあった「昔ばなしの里・石動の湯」は、施設の老朽化と、それに伴う改修費用の増大、そして利用者の減少による収益の悪化が主な要因で、2025年6月17日に閉館している。
「石動の湯」は、平安時代に村上天皇が湯治に訪れたという入湯伝説があり、その名残として「天皇泉」の名前が残る「福地温泉」唯一の共同浴場で、各旅館の浴室が清掃中でも、連泊客が温泉を楽しめるようにとの配慮から共同運営されていた。

筆者は2度入湯の経験があるが、お湯はゆで卵の匂いが香り、白く糸状の湯の花が舞う単純硫黄泉で、木造りの内湯と岩造りの露天風呂に、ザーでもチョロでもなく、まさに「ええ塩梅」で注がれるお湯の音に、不思議なくらい癒やされた。

それに何より、ちょっとした「隠れ湯」っぽくて好きだった。

閉館後は、昔ばなしの里もなくなり、無人の「福地化石館」に改修されている。
まあ閉館した温泉の話はこのくらいにして、本論に進もう(笑)。
風情のイチオシは「神の湯」だが、再開は未だ未定のまま

2014年に発生した土砂崩れの以前から、「奥飛騨温泉郷」に足を運んできた温泉好きの旅人なら、筆者の他にも「神の湯」をイチオシに上げる人は多いと思う。

「神の湯」は約450年前の戦国時代に発見された、「平湯温泉」の「発祥の地」に湧くと伝わる、露天の日帰り温泉施設だ。
さすがに災害から10年の歳月が流れ、相変わらず公式発表はなされていないものの、いくらなんでもそろそろ朗報が届いても良さそうだと思い、2025年7月に観光協会に進捗状況を問い合わせたが、現地でも復旧状況は把握できていないようだった。
被災した当初は、土砂崩れによる直接的な被害は受けていないと聞いていたので、できれば当時の雰囲気を保ったまま再開されることを願いたい。
以下は、災害前の風情に満ちた「神の湯」の入湯レポートになる。

なお休館中にお勧めなのは、近くにある合掌づくりの資料館「平湯民俗館」に併設している「平湯の湯」だ。
源泉は違うようだが泉質は似ており、風情も共通している。
野趣では「新穂高の湯」だが、夏は温水プール状態かも

「奥飛騨温泉郷」の最深部にあたる「新穂高温泉」に向かう、県道475号に沿って流れる「蒲田(がまた)川」には、川底付近から温泉が湧き出す場所が幾つかある。
「新穂高の湯」はその中のひとつで、旧中尾橋下の河畔に位置している。
ただしここでは、石鹸・シャンプー類の使用は禁止。

湯上がり後に、髪と身体をシャワーとシャンプーで洗いたい人は、650メートルほど離れたところにある日帰り温泉「ひがくの湯と登山者食堂」がお勧めだ。ここでは、11時から20時まで食事も食べられる。
総合的に見て、万人の満足度が高いのは「ひらゆの森」

築300年の古民家をリノベーションした「ひらゆの湯」は、平湯バスターミナルから徒歩約3分のところにある、奥飛騨温泉郷最大規模を誇る共同温泉、というよりは温泉リゾート施設と呼ぶほうがふさわしい。

出典:ひらゆの森
圧巻なのは、森の中に広がる檜風呂や東屋の下の岩風呂など、男女合わせて16の数を誇る露天風呂だろう。
どれも硫黄の香るお湯は共通だが、湯船によって白濁と透明があり、温度も違う。
これに座敷の休憩スペースと充実した売店、さらにレストランまで揃って700円というのは、今の時代では破格に近い料金だと思う。
旅館のおゆばに行くなら、「奥飛騨湯けむり達人」の利用がお得

奥飛騨温泉郷では、「ひらゆの森」を筆頭に公営の日帰り温泉が充実しており、長きにわたって「湯めぐり手形」は発行されてこなかったが、2014年から16軒の宿泊施設を対象に、1200円で3枚の入湯シールがついた「奥飛騨湯けむり達人」が導入されている。
利用できる施設には、入湯シールが1回で2枚必要なところもあるため、3軒に使えるとは限らないが、共同温泉は含まれておらず、全てが民間の温泉旅館だ。
中には奥飛騨温泉郷で唯一露天風呂から槍ヶ岳が見える、「日本秘湯を守る会」加盟の老舗「槍見舘」もある。
チケットは木札になっており、他に分かりやすい場所では「道の駅奥飛騨温泉郷上宝」で購入できる。

※2025年7月現在は12軒の宿の温泉が利用可能。
奥飛騨温泉郷 車中泊旅行ガイド
車中泊でクルマ旅 総合案内
クルマ旅を愉しむための車中泊入門
この記事がよく読まれています。
























