「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
だるさの大半は、「湯疲れ」
入浴後に急に気分が悪くなったり、カラダにだるさを覚えるような症状を「湯あたり」と思っている人はいないだろうか…
実はこのような急性症状は「湯疲れ」と呼ばれ、大半は温泉に長時間入り続けることで引き起こされる。
もう少し詳しく書くと、「湯疲れ」は急激な発汗によって、カラダの水分が失われる脱水症状と、汗とともに塩分・ミネラルが流出することで発症する熱疲労の併発状態で、吐き気や全身の倦怠感をもよおすのが特徴だ。
そのまま放置すれば「熱中症」となり、意識障害や痙攣などを引き起こす危険性が高くなるが、原因は水分とミネラル・ビタミン類の不足にあるので、速やかにそれらを補給しよう。
即効性が期待できるのは、スポーツドリンクやゼリー状の栄養補助食品だという。
また類似の症状として「のぼせ」がある。
最近は「ヒートショック」という言葉がよく使われるので、若い人にはこちらのほうが分かりやすいかもしれない。
「のぼせ」は、高温の浴槽に入浴することで心拍が急上昇し、脳に血液が多く行きすぎる状態に陥ることから動悸などに襲われる。
全身の毛細血管が拡張しているため、風呂から出ると逆に血液が下半身に向かって多く流れる低血圧状態となる。
そのため脳が貧血になり、目まいや立ちくらみを感じるわけだ。
「湯あたり」は、湯治の成果
いっぽう「湯あたり」とは、温泉成分で何らかの中毒を起こす浴用反応のことをいい、一般的には食欲不振、下痢、発熱、嘔吐、湿疹などの症状が見られるそうだ。
酸性泉、硫黄泉、放射能泉などの刺激が強い泉質で起こりやすいことから、一説では温泉水が刺激となり、自律神経系、ホルモン分泌系、免疫系が防衛反応を起こすためと考えられている。
「湯疲れ」との一番の違いはその発症頻度で、少なくとも数日以上にわたって反復的に同じ温泉に入り続けない限り、「湯あたり」は起きないらしい。逆に湯治では「湯あたり」を乗り越えないと、本当の療養効果は期待できないともいわれる。
「効く」温泉は、浸透圧が違う
温泉には浸透圧という指標があり、温泉分析書には「低張性」「等張性」「高張性」と表現されている。
「浸透圧」とは、濃度の異なる2種類の液体を半透膜で仕切った時に、その膜にかかる圧力のこと。
隔てられた2種類の液体は、その膜を通して同じ濃度に近付こうとし、濃度の低い液体から濃い液体側へと水分が移動するが、温泉入浴の場合、2種類の液体とは、温泉とヒトの細胞液、そして半透膜は皮膚を意味することになる。
長時間温泉に浸かっている時に、手足の指先がシワシワになるのは、体内に「水分」が浸透してくるからで、その温泉の浸透圧が低いことの証でもある。
細胞液以上の濃度を有する温泉は数少ないのだが、薬理効果が高い分「湯あたり」しやすいといわれている。
有名な温泉地では、有馬温泉の「金泉」が日本有数の高張泉だ。