「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介。
こむらさき・ざぼんラーメン・豚とろ
値頃であまりハズレがなく、適度に郷土色が感じられるグルメといえば、真っ先にラーメンが思いつく。
そんなことから、筆者は各地の取材中によくラーメンを食べている。博多はもちろん、旭川、喜多方、横浜、和歌山、尾道…
確かに「ご当地ラーメンで名を馳せたところ」は、走っていても歩いていても、町中に「ラーメン」の看板やノボリを掲げる店の数が明らかに多くなるので、なんとなく「そう」とわかるものだ。
ご当地ラーメン 食べ歩きの留意点
と同時に、「ご当地ラーメン」には「スタンダード」と呼べる独自の共通スタイルが存在する。
たとえば、博多は白濁の豚骨スープに細麺ストレート、逆に札幌は味噌スープに太いちぢれ麺というように。
だが鹿児島の場合、「鹿児島ラーメン」という言葉は見かけるが、上記の2つのような特徴が明確には感じられなかった。
そこで”ウィキペディア”を開いてみると…
豚骨をベースにした半濁スープにストレート麺が基本となっており、これに各店がアレンジを加え、個性を競い合っている。各店舗が独自に発達させてきたため、鹿児島ラーメン総体としての特徴はないとも言われている。
なるほど、筆者の勘はそれほど外れてはいないようだ。
つまりこの地では、ご当地ラーメンというよりは、「鹿児島市内にある人気のラーメン店」を探すということになる。
ただし、その前に鹿児島市民と他府県在住者の味覚が違うことを認識しておく必要がある。
特にラーメンはそれが顕著に出る料理だと筆者は思っているので、食レポを見る時には、投稿者の素性を合わせて確認するほうがいい。
ちなみに筆者はこの時58歳、男性、大阪生まれだ(笑)。
こむらさき(アミュプラザ鹿児島店)
昭和25年創業で、鹿児島では老舗と呼ばれるラーメン店のひとつ。
一口サイズに切られたチャーシューと大量の千切りキャベツ、そして「かん水」を使わずに作った白っぽい蒸し麺という「明確な3つの特徴」を有しているため、なにより記憶に残りやすい。
後日テレビなどで見た時に、「あ~コレ、鹿児島で食べたよね」っと、昔話のネタになるようなラーメンだ。
独特の麺のせいだろうか、これまであまり味わったことのない新鮮な食感が印象的で、スープもさっぱりしていて関西人との相性は悪くない。
ラーメンというよりは、むしろチャンポンに近いようにも感じた。
ただし、写真は「鹿児島黒豚シャーシュー入り」のラーメン並盛だが、筆者と2歳違いの家内にはちょっと量が多すぎたようだ。同年代の女性は小盛にするか、空腹時に行かれることをお勧めしておこう。
ざぼんラーメン(鹿児島中央駅店)
こちらも鹿児島古参のラーメン店で、創業は1946年(昭和21年)。
写真は鹿児島中央駅にある店舗だが、かつての西鹿児島駅の時代から、この地で営業をし続けているという。
筆者の中では、この記事に紹介した3つのラーメンの中の「第1位」にランキングされる。
関西人が好むやや薄めの豚骨スープと、ツルツルの中細ストレート麺、さらにもやし、メンマ、きくらげと歯ごたえのある具材が実に良く噛み合っている。
裏返せば「特徴がない」ともいえるのだが、インパクトではなく「実益優先」で選ぶならここだろう。
なお、ざぼんラーメンは、食べる前に下からよくかき混ぜるのがセオリーだ。写真は税込830円の「普通」、ここにも小盛710円があるのだが、家内も普通をペロリと平らげていた(笑)。
こちらはアミュプラザ鹿児島の中の店舗で、こむらさきとは隣り合わせ。ここならどちらか空いている方を選ぶこともできる。
鹿児島ラーメン豚とろ(天文館本店)
創業は2003年と比較的新しいラーメン店ながら、既に県内に4店舗を持ち、特に若者から高い支持を得ているようだ。
写真はそんなことは露知らず、飲む前にぶらりと入った天文館の本店。
鹿児島と云えば、「西郷どん」が如く、何につけても「濃いイメージ」を抱くわけだが、豚トロのラーメンはまさにそれだった(笑)。
写真からでもその濃厚さが伝わるほどのコッテリ系で、飲んだ後ではたぶんカラダが受け付けなかったと思う。
大阪の場合、豚トロ(とんとろ)と云えば豚のホホ肉を指す場合が多いのだが、鹿児島ではネックの肉のことをそう呼ぶようで、見た目はイメージと少し違っていた。
しかし、その柔らかさは評判通り。ラーメンはチャーシュー重視という人には絶賛お勧めの店だろう。
筆者がこの店を訪ねた時は、まだギリギリの40代だったので、さして苦もなく食べられたが、今はちょっと自信がない(笑)。