この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。

長崎の世界文化遺産をめぐる
2話からかなり時間が空いたが、「取材記録」を中途半端に終わらせるわけにもいかず、頑張って続きを書くことにする。今書かないと、来週には北海道に渡ってしまうため、この話はたぶん「迷宮入り」してしまうに違いない(笑)。
さて、この日は早朝のうちに長崎港に来ていた。目的は「軍艦島」だ。筆者がこの島の存在を知ったのは、初めて車中泊旅の取材で長崎を訪れた2009年のこと。
車中泊スポットを求めて野母崎まで下った際に、約5キロ沖合にある、何とも奇怪なこの島の存在に気がついた。なにしろ名前が「軍艦島」だし、最初はてっきり軍事施設跡かと思ったくらいだ(笑)。
もちろん当時は世界遺産ではなかったため、知る人ぞ知る長崎の珍名所のような存在だった。
それから8年の歳月が流れたが、2011年に大河ドラマ「龍馬伝」があったこともあり、長崎には幾度か足を運んでいた。
記録を数えると今回が6度目。九州では阿蘇に並ぶ回数になるのだが、それでもこの島には渡れずにいた。
言い換えれば… それほど長崎には「見どころ」がある。
その「軍艦島」については長い話になるので、別記事に詳細をまとめている。興味のある方は以下の記事を、のちほどご覧いただければ幸いだ。
さて。軍艦島は午前中のツアーだったので、長崎港に戻ったその足で、予定していたレストラン「ニッキーアースティン」へと向かった。
お目当ては、グルメの間では長崎発祥の食べ物として、「ちゃんぽん」に次ぐ地位を築いているという「トルコライス」。
Wikipediaには、「一皿に多種のおかずが盛りつけられた洋風料理で、最も一般的なのはピラフ(ドライカレー風も有)、ナポリタンスパゲティ、そしてドミグラスソースのかかった豚カツという組み合わせ」。
と紹介されている。
このランチについても帰宅後すでに「食レポ」の記事をアップしているので、詳細はそちらでご覧いただきたい。
その後、出島に寄ってからクルマに戻り、繁華街の思案橋へと向かった。
この日はビジネスホテルを予約していた。
過去5回の長崎訪問は、市内に適当な車中泊地が見つけられず、20キロほど離れた郊外にある「道の駅夕日ヶ丘そとめ」や、野母崎の無料駐車場、あるいは長崎自動車道のSAなどを利用してきた。
しかし長崎は夜も魅力的で、それを味わうには割り切ってホテルに泊まるほうがいい。
市内でコインパーキングを利用し、お風呂に入って朝食を食べるコストを考えれば、夫婦で5000円ほどの持ち出しでおさまるホテル泊を、筆者は許せる。車中泊のクルマ旅では、ホテルのことを「伝家の宝刀」と呼ぶらしい(爆)。
ところで。トルコライスと同じく、長崎が発祥の地といわれる卓袱(しっぽく)料理をご存知だろうか?
和華蘭料理とも評されるこの豪華絢爛な食事を、筆者も一度は食してみたいと思うのだが、値段もさることながら、家内と二人ではここまでの量は到底食べきれまい… これは次回に向けて要再調査の課題となった。
さて。思案橋で卓袱料理の話が飛び出した理由は、このお方に由来する。
「龍馬伝」をご覧になっていた方の中には、龍馬が高杉晋作と初めて出会い、蒼井優演じる芸者の「お元」が出入りしていた、花街丸山にあった料亭引田屋を覚えている人は多いと思う。
その花街丸山は思案橋から歩いて行けるところにあり、公園の一画に龍馬の銅像が立っている。
だが、見どころはそこじゃない。
ドラマの中で卓袱料理が並んでいた、旧引田屋こと花月は、今もそこに残っているのだ。
京都と同じで、長崎にはこういうタイプスリップ感のある見どころが多く、歴史を知れば知るほど面白い。
散歩から戻り、ホテルでしばらく静養した後、タクシーで最後の取材地グラバー園へと向かった。
写真はその途中で立ち寄ったオランダ坂。いちばん雰囲気が良いのは、この活水女子大学に通じるあたりだ。
この時期のグラバー園は「ローズガーデン・フェスティバル」を開催していて、ナイター営業も行っているが、料金は普段と変わらない。
つまり「一粒で二度美味しい」ということで、日没前にやってきた。
「ローズガーデン・フェスティバル」の見どころは、グラバー園の中にある「旧オルト住宅」。
住人だったオルトは、大浦慶と組んで九州一円からお茶を買い求め、輸出で財を成した話が有名だが、土佐藩とも親交があったようで、「いろは丸沈没事件」では、紀州藩との勝訴に一役買っている。
そうこうするうちに夕暮れを迎え、念願のカットを無事撮り終えた。
だが、この直後に予期しなかったクライマックスが訪れる。
この日の長崎港松が枝国際ターミナルには、イタリアの豪華客船「コスタ・セレーナ」号が停泊しており、日中は軍艦島クルージングの船からその様子がよく見えた。
こういう船が撮影できる機会は滅多にないので、それはありがたかった。
しかしグラバー園からは、その巨体が全景を撮る際の障害になっていた。ちなみにグラバー園は、ひとつ上の写真の山頂左側にある。
仕方ないと、あきらめて帰ろうとした矢先… 唐突に汽笛が響き、なんと豪華客船が静かに岸を離れ始めた。
おかげで希少どころか、まさに「一期一会」なるワンショットが筆者のカメラにおさまった。
しかも見学不可の世界遺産「長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン」までが、船の後方にライトアップされて写っている。
狙っていても、こう上手くはいかないのが「風景写真」というもの。
まさに「持ってる男」の本領発揮の瞬間だった(大笑)。
思案橋に戻ってから、刺し身のうまい居酒屋で少し遅めの夕食。思案橋にはたくさんの店があるので飲食には困らないが、筆者はちゃんと昼間にチェックしていた。
頑張ったご褒美は、ちょっと贅沢なお酒ということで(笑)。









「アラ還」からの車中泊

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