この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
雪の阿蘇から、四国経由で帰宅。
元旦の朝の「道の駅 阿蘇」は、実に悩ましい様相を呈していた。昨夜からの雪がうっすら積もって、駐車場は写真の通り凍結状態。
2日まで荒れるという天気予報を信じて、明日まで電源と温泉やコンビニがあるこの地に留まるべきか、さらに雪が積もって動けなくなる前に、別府まで移動すべきか…
その判断がつくまで1時間以上悩んだが、雲が切れて太陽が顔を出したことで腹が決まった。
雪がなければ、一度小国郷に出て、そこから「やまなみハイウェイ」で由布院を経由し、別府まで行くつもりだったが、さすがにこの路面コンディションでは、2駆のハイエースにはハードルが高過ぎる。
そこで竹田から大分市内を通り、別府を目指すことにした。このルートなら、さほど山道や峠を通らずに済む。
せっかくなので、道中にある滝廉太郎の銅像が建つ、岡城址に立ち寄った。
そう。ここは昭和の名曲「荒城の月」の、舞台の候補のひとつと云われている。
ご存知の通り「荒城の月」は、作詞・土井晩翠(どいばんすい)、作曲・滝廉太郎で、当然それぞれにこの曲にゆかりのある「城跡」があっても不思議ではない。
大分県竹田市は滝廉太郎の出身地ゆえに、ここがそう呼ばれるのはわかる。では作詞の舞台はどこなんだろう。
答えは、戊辰戦争で白虎隊の悲劇を生んだ、会津の鶴ヶ城が有力らしい。
土井晩翠は仙台出身なので、鶴ヶ城を訪ねた時に「荒城の月碑」があるのをみて、なんとなく違和感を感じたのだが、「荒城の月作詞48周年記念音楽祭」のスピーチで、本人がそのエピソードを語っている。
さて。標高325mの高台にそびえ立っていた岡城は、雲海やドラマのロケ地で有名な但馬の竹田城に、勝るとも劣らない見事な石垣を残している。
通常はその保全費用を賄うために有料となっているが、年末年始は嬉しいことに無料開放されていた。
岡城を過ぎたところで猛烈な吹雪に見舞われ、道路はアッという間に真っ白に。よくぞ、スタッドレスタイヤとワイパーを新調しておいたものだ(笑)。
さて今回、別府温泉を目指しているのには、特別な理由がある。
ひとつは、この景色を撮るためだった。
鉄輪温泉が一望できる「湯けむり展望台」の存在は知っていたが、なかなか場所が特定できず、これまではもう少し低い場所から撮影していた。
だが今回は、ここもキッチリ突き止めてきた。
展望台に駐車場はあるが、やってくるのはタクシーばかり。まるでマイカー旅行者には、「秘密にしておきたい場所」のようだった(笑)。
そしてもうひとつは、無料車中泊スポットの確認だ。
確かに、別府温泉街には大手を振って車中泊ができる無料の駐車場はない。
だが年末年始だけは例外になる。
上の表示にある通り、別府公園の有料駐車場は毎年、年末年始に限って無料開放される。
なおトイレが近いのは東駐車場。道路を挟んだ右側にきれいな水洗トイレがある。この情報はずっと前から古いブログで見つけて知っていた。だが、なかなか年末年始に行く機会がなく、長らく確認できないままだった。
最後は、この真新しい市営の温泉施設「不老泉」だ。
不老泉は2013年10月に取材で別府温泉を訪ねた時は工事中で、入湯することができなかった温泉だが、この日はラッキーなことに無料開放デー。
100円とはいえ、再訪したことへの「ご褒美」をいただいた気分だった(笑)。
これですべての用件を終えた筆者は、予定よりも早く佐賀関に向かうことにした。11時発の国道九四フェリーに乗れば、高松付近まで走ることができる。
その計算通り、この日は香川県の「道の駅・たからだの里さいた」で車中泊となった。
この道の駅は、さぬきうどんツアー時の「定宿」で、もう何度も泊まっている。
隣接する環(たまき)の湯の温泉はpH9.0のアルカリ性で、ヌルヌル感がたまらない。ただし塩素臭いのがちょっと気になる。
3日は早朝の3時半に出発。宝塚トンネルでの多少の渋滞を覚悟の上で、瀬戸大橋を渡って山陽道から帰阪した。
理由は淡路島経由よりも高速代が橋一本分安いから(笑)。だが、拍子抜けするほど道は空いており、午前7時には無事帰宅となった。
一足遅れのわが家の正月はこれから始まる。