このコーナーには、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」と、旅でのエピソードを綴ったエッセイを収録しています。
紅葉の小豆島をじっくりまわる
勤労感謝の日の3連休を利用して、2014年11月22日(土)の早朝、神戸・三宮にあるジャンボフェリーターミナルから、寒霞渓の紅葉がピークを迎えた小豆島に渡り、四国・淡路島を経て25日(火)の早朝に帰宅した。
当初の予定では、金曜日の夜に三宮に着き、メリケンパーク駐車場にクルマを置いて、車中泊までのひとときをハーバーランドのモザイクで過そうと考えていた。
だが、名神高速と阪神高速で事故があり、夜の8時を過ぎても渋滞が解消されないため、翌朝早く出発することにした。
ちなみに小豆島に行く場合、コストから見た「前泊のベストスポット」は阪神高速道路の京橋PAになる。
だが、大阪方面から来る場合は、三宮フェリーターミナルに最寄りの「京橋出口」よりも少しだけ先(西より)にあるため、そこで車中泊する際は、次の「柳原」出口で降りて、1区間分だけ引き返す必要がある。
まあ、それでもメリケンパークの駐車料金よりは安いわけで、寝るだけならココのほうがお勧めだろう。
ジャンボフェリーで小豆島へ
さて。小豆島と本州・四国を結ぶフェリー航路は9つあり、佐渡や隠岐、あるいは屋久島、利尻・礼文島に比べると渡航運賃も格段に安い。
筆者が利用した神戸と小豆島を結ぶジャンボフェリーは、乗船時間は約3時間と長いのだが、京阪神からはもっとも走行距離が短い航路で、小豆島から四国の高松に渡る便との共通割引チケット「瀬戸内マイカーするーきっぷ」が使える。
5m未満の車両と夫婦2人のフェリー料金は、12,680円。経費と労力を考えれば、利用価値はかなり高いといえそうだ。
ちなみに三宮フェリーターミナルのある場所は、幕末に勝海舟が開いた「海軍操練所」の跡地。当時は、坂元龍馬もこのあたりを闊歩していたに違いない。
船は明石海峡大橋の真下を通って、瀬戸内海へ出る。
船から見えた小豆島。
着岸する坂手港は島の東側に位置し、小豆島を一躍有名にした「二十四の瞳」の舞台、岬の分教場のすぐ近くにある。
二十四の瞳
さて。今回小豆島を訪ねるにあたり、筆者は2本の映画を見てきた。言うまでもないことだが、そのうちの1本は「二十四の瞳」である。
1954年(昭和29年)に公開された木下惠介監督・脚本、高峰秀子主演によるこの映画は、日本が第二次世界大戦を突き進んだ歴史のうねりに、否応なく飲み込まれていく女性教師と生徒たちの苦難と悲劇を通して、戦争の悲壮さを描いた作品で、当然モノクロだが、2007年にデジタル・リマスター版が制作されている。
「二十四の瞳」はこれまで9回映像化されている(映画化2回、テレビドラマ化6回、テレビアニメ化1回)。
だが、「岬の文教場」にも「映画村」にも、初作の動画とパネルが用いられており、やはり高峰秀子による大石先生のイメージが強い。
当然やってくる客層は筆者よりも年上ばかり。1954年といえば、筆者はまだ生まれてもいないのだから当然か(笑)。
それにしても、放映後60年を経てもなお、集客力を持続し続ける映画やドラマのロケ地コンテンツに、地方の観光行政はもっと力を入れるべきだと思う。
その点における小豆島と富良野の姿勢は素晴らしい。
魔女の宅急便
ただ同じ映画でも、若い世代には今年2014年3月に放映された「魔女の宅急便・実写版」のロケ地が人気のようだ。
「魔女の宅急便」は角野栄子による児童文学で、1989年にスタジオジブリの宮崎駿監督によってアニメ映画化され、一躍有名になった。
ただ実写版はアニメ版のリメイクではなく、原作の第1巻・第2巻を基に実写化している。
「八日目の蝉」とは違い、肩も凝らずに気軽に見られる映画なので、小豆島に行くなら、二十四の瞳と両方見ておいても損はない。
「魔女の宅急便・実写版」の舞台となったのは、オリーブ公園。グーチャキパン屋さんはハーブショップになっていた。
エンジェル・ロード
夕方4時前、潮が引き、ようやくエンジェル・ロードが顔を出した。
潮が引いて通れるようになるまで時間があったので、先に入浴と買い出しを兼ねて土庄の町へ出ることに。
ちなみにエンジェル・ロードは、潮が満ちると海に消える。
「オリーブ温泉」を併設している土庄のスーパー・マルナカ。エンジェル・ロードから5分ほどのところにある。
さて。小豆島には3つの道の駅と3つのキャンプ場、さらにそのほかにも、トイレがある無料駐車場が点在しており、車中泊場所で困ることはまずない。
筆者は朝日を狙って、道の駅オリーブ公園の「離れ」になっている海辺の「オリーブナビ小豆島」の駐車場で泊まった。
ここはトイレがあるほか、ゴミ箱もきちんと置かれている。
ただしこの道の駅は、温泉施設のサン・オリーブまで歩いていけるメインの駐車場が、なぜか夜間は閉鎖される。
紅葉の寒霞渓
一夜明けて、朝から寒霞渓へ向かう。
紅葉の寒霞渓を満喫するには、3つのルートから攻めるといい。
ただしチャンスは午前中。午後からは日が当たりすぎて山全体が霞んでしまう。
中高年にオススメなのは、まず朝一番でロープウェイの登り駅にクルマを停め、行きにロープウェイで山頂まで行き、帰りは12景の登山道を歩いて下るコースだ。
始発便が出るのは午前8時。ただし、それに合わせていたのでは、既に駅前の駐車場は満車。後は延々と路上に縦列駐車が続く。
寒霞渓の全景が見られるロープウェイは、下側の窓から見える景色がきれい。帰りは乗らないので、行きに後の窓に近い場所に陣取ろう。
ちなみに登山道は約2キロで、ゆっくり歩いて1時間ほど。低山とはいえ、登るのはかなりキツイだろう。
途中で、野猿の群れに遭遇。箕面とは違って、すぐ近くを通っても危害を加えるようなことはない。
最後はクルマでブルーライン・スカイラインと乗り継ぐドライブコース。時折クルマから降りて景色を楽しもう。
オリーブ公園
最後は小豆島名物のオリーブについて。
生の実が間近に見られるのは、道の駅オリーブ公園だ。
ここには、商品の販売だけでなく、小豆島でなぜオリーブ栽培が盛んになったのか、あるいは今日までの歩みといった情報も展示されており、北海道のラベンダー農園「ファーム富田」と似たような一面がある。
もちろん園内の「演出」においては、まだまだ大きな差はあるが、もっと魅力的になれる素地環境は揃っている。
絶品の試食コーナーへは、ぜひ(笑)。
当初は小豆島では2泊する予定だったが、思いのほか島は小さく、1日半で予定していた全ての取材が終了したため、夕方の船で高松へ渡ることに。
明日は徳島に足を伸ばして、紅葉に染まる祖谷渓を巡る予定だ。