このコーナーには、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」と、旅でのエピソードを綴ったエッセイを収録しています。
紅葉の祖谷渓
前日、小豆島から高松港に着いたのは夕方の5時過ぎ。この時期は既に日が落ち、あたりはもう真っ暗だ。
それを見越して、乗船前に小豆島で夕食の買い出しと入浴を済ませ、この日は一番近い「道の駅・源平の里むれ」で車中泊をした。
翌日、朝6時過ぎに道の駅を経ち、祖谷へと向かった。 もちろん、途中でさぬきうどんを朝飯代わりに食べた。
今回立ち寄ったのは、近年人気の「よしや」。
香川県には800軒ともいわれる数のさぬきうどん店があるが、さすがにこの時間から店を開けているところは少ない。
それもあって、ここは県外ナンバーのクルマが目立った。
ちなみに、さぬきうどんには、釜揚げ、かまたま、ぶっかけなどの様々な食べ方があり、それぞれを看板メニューにしている店も多い。
だが、旅人には「かけ」または「ひやあつ」と呼ばれる温かいうどんが無難だと思う。「ぶっかけ」を頼むと、最後にはアゴが疲れるほど強靭なコシを持つ麺に遭遇するかも(笑)。
ちなみに、筆者にとってこの店は10件目。がもう・山越・宮武・長田といったメジャーな店のうどんは既にお試し済だ。
その後はひたすら地道で祖谷渓を目指す。
紅葉真っ盛りの祖谷
写真は途中で偶然見つけた祖谷の絶景。川に映り込んだ紅葉は、まるで錦鯉のようだった。
こういうところでは、路側帯の開けた場所があれば、適度にクルマを停めてカメラを構える。
もっともそれには、クルマがあまり通らない早朝というのが条件になるわけだが、車中泊ならそれができる。
こちらは有名な「小便岩(小便小僧)」。
像は高さ約200mの絶壁に突き出た岩に建てられており、この岩から谷底を見下ろせば足がすくむことから、昔は度胸だめしに使われたという。
周辺は紅葉の名所でもあり、今では祖谷渓のシンボルになっている。
ただし駐車場はなく、代わりに路肩に5台ほど停められるスペースがある。停め方が悪いと渋滞になるので、状況をよく考えて行動しよう。
そして、こちらが有名なかずら橋。
シラクチカズラ(重さ約5トン)で作られた、長さ45m・幅2m・水面上14mのこの橋には、弘法大師が祖谷に来た時、困っている村民のために架けた、あるいは平家の落人がこの地に潜み、追手が迫ってもすぐ切り落とせるように葛を使って架設したとの伝説が残る。
現在は3年毎に架替えが行われ、国指定重要有形民俗文化財に指定されている。
ちなみに「かずら橋」は2つある。
もうひとつは「奥祖谷二重かずら橋」と呼ばれ、ここからさらに1時間ほど対向できない細い道を走り、戻ってこなければならないと聞いて、今回は諦めた。行くなら軽自動車に限る(笑)。
なお、かずら橋の駐車場は道路を挟んだ両脇にあるが、左のキレイな方は500円で、右は300円だ。
「大歩危」は、嵐山の保津峡よりも岩肌は険しい。
たっぷり祖谷渓の紅葉を堪能した後は、国道192号に出て、淡路島経由で自宅を目指した。
だが、その途中で「いいところ」を発見し、寄り道することに。
写真は道の駅・貞光ゆうゆう館の前にあるパークゴルフ場。
本州で道の駅にパークゴルフ場が隣接しているのは極めて珍しく、他に筆者が知っているのは群馬県の吉岡温泉くらいだが、ここはなんと「無料」。
というわけで7月以来、約4ヶ月ぶりにクラブを握り、一汗かいた。
ついでに「うだつのある町並み」を見たあと、大鳴門大橋をわたり淡路島へ入った。
できればそのまま帰りたかったのだが、この日も阪神高速は15キロの渋滞…
さすがにくたびれたので、淡路サービスエリアで車中泊し、翌朝ラッシュアワーが始まる前に帰宅した。
京阪神も「西」方面は行き帰りがたいへんだ。