「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

七里田温泉「下湯(ラムネ湯)」は、泡付きバツグン! ただし、待ち時間を覚悟で行こう。
TVチャンピオンで全国の温泉通の頂点に立った郡司勇氏が、「日本一の炭酸泉はどこかと聞いたら、多くの人はこの湯を挙げるであろう。」と評した七里田温泉「下湯(温泉共同浴場)」は、確かに一度入湯すると、その心地良さが忘れられなくなる温泉だ。
同じ炭酸泉で全国区の知名度を誇る「長湯温泉・ラムネ温泉館」とはネット上で常に比較され、遠く本州から行く旅人がその書き込みを見る限り、「長湯温泉まで足を運ぶ必要はなさそうだ」という気分にさせられる。
だが、本当にそうなのか?
両者を比較する前に、まず炭酸泉について話そう。
炭酸泉とは、炭酸ガス(二酸化炭素)が溶け込んだお湯のことで、別名「ラムネの湯」と呼ばれる。
入浴すると細かな泡が付着し、ぬるいお湯でも体の芯から温まる。また湯上り後も、ポカポカした温かさが長く持続するのが特徴だ。
その理由は、炭酸によって血管が拡がり、血流が4倍近くになるからだという。血流が良くなれば、血圧は下がり心臓の負担が軽減される。
温泉療法の世界で、炭酸泉が「心臓の湯」と呼ばれているのは、そのチカラのせいで、最近はスーパー銭湯でも、人口の炭酸泉浴槽を見かけるようになった。
実は天然の炭酸ガスは、熱いお湯には大量に溶けないという難点がある。しかし現在は人造炭酸泉を作れる機械がある。
云いたいのは、日本のような火山活動が活発な国では、高濃度に炭酸ガスを含む、天然のホットな炭酸泉に出会うことは極めて稀。
それは、養殖ならどこでも食べられるが、天然は滅多に口に入らない「ウナギ」と、どこか似ている(笑)。
その希少性が噂を呼び、長湯温泉と七里田温泉は、テレビや雑誌で一躍脚光を浴びる存在になったというわけだ。
さて、本論に戻ろう。
一般に七里田温泉といえば、大分県竹田市直入にある日帰り温泉施設のことを指す。そこでは地元温泉組合によって、「木乃葉の湯」と「下湯(ラムネ湯)」の2箇所が統一管理されている。
噂の「下ん湯」は、意外な建物の中にあった。
七里田温泉館の自動販売機で「下湯の券」を買って鍵をもらい、クルマは駐車場に置いたまま、そこから看板に従って歩くが、ここまでは5分もかからない。
湯船は6人がちょうどくらいの大きさだが、どうやら8人を目安に入れているらしい。ただし、お客の誰もが30分以上は長湯をするため、回転は極めて悪い。
筆者は運良く待ち時間なしで入れたが、日によってはかなり空き待ちをすることにもなりそうだ。
筆者が感じた長湯温泉・ラムネ館との一番の違いは源泉温度だった。
前述のとおり、炭酸ガスは高温のお湯には大量に溶けないといわれ、冷泉が当たり前とされているのだが、七里田温泉は37.5度で長湯温泉よりも5度近く高い。
内風呂と露天風呂の違いはあるが、途中に体温を挟むこの温度差は想像以上に大きいはずだ。
さらに炭酸含有量は1,250mgで、長湯温泉の781mgをやはり大きく凌いでいる。そのため、明らかに泡付きが早く、しばらくするとカラダがムズムズするような感覚に襲われた。
なるほどたしかに、「源泉勝負」では数値・体感ともに、七里田温泉に軍配はあがる。
だが筆者は、「泉質」や「効能」だけではなく、「居心地の良い温泉地」という価値観を求めている。
その観点からすると、周囲に何もない野中の温泉館よりも、ガニ湯のような野湯や古びた温泉街が残る、長湯温泉のほうが面白く思える。
「日本無類の炭酸泉」と「日本一の炭酸泉」の違いは、どうやらそのあたりにありそうだ。
両者の距離はクルマでわずか15分ほどだけに、両方行ってみる価値は十分にあるだろう。
七里田温泉 オフィシャルサイト
〒878-0202 大分県竹田市久住町大字有氏4050-1
電話:0974-77-2686
●入浴料:おとな300円
●営業時間:9:00~21:00・毎月第2火曜日定休
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