【2022年12月更新】
車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、「長湯温泉」の概要と車中泊事情に関する記述です。
「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

「日本一の炭酸泉」と称される、長湯温泉の概要と車中泊事情を簡潔にご紹介。
「長湯温泉」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2011.04.28
2013.02.12
2013.10.19
2017.05.04
2022.06.17
※「長湯温泉」での現地調査は2022年6月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2022年12月に更新しています。
長湯温泉 車中泊旅行ガイド
長湯温泉のロケーション
「長湯温泉」は、昔から「奥豊後」と呼ばれる久住高原の東部に位置している。
マイカーによるアクセスはけして悪くないと思うが、近くを高速道路が通っていないうえに、「やまなみハイウェイ」からも外れているため、偶然やってくる人はほとんどあるまい。
つまり大半は、”世界屈指の炭酸泉”をお目当てにやってくる温泉好きで、「別府」や「由布院」に比べれば「おのぼりさん」は少なく、落ち着ける。
そのかわりに温泉街は、この通り(笑)。
長湯温泉の「車中泊・居心地度」チェック
1.車中泊好適地度:○
2.滞在好適度:☓
3.湯めぐりサービス度:○
4.温泉情緒度:△
5.名湯・秘湯度:○
長湯温泉・車中泊居心地度
総合評価:3.5 ○☓○△○
湯めぐりワンポイント・アドバイス
●日本有数の炭酸泉が湧く温泉地で、人気の「ラムネ温泉館」から200円の公衆浴場まで、幅広い「おゆば」が揃っている。
●地域の歴史や温泉の基礎知識と温泉割引クーポン券が一冊になった「奥豊後温泉文化伝」が利用できる。
●温泉街の中心部に道の駅がある。
●温泉街は廃れていて、見どころといえるようなところはない。
●これといった特徴を持つ名物やグルメは見当たらない。
長湯温泉が「日本一の炭酸泉」と称される理由
長湯温泉には、「日本一の炭酸泉」にまつわる面白い話がある。
日本一とは大きく出たものだが、確かに長湯のお湯が、世界でも類を見ない炭酸濃度の高さと効能を持っているのは事実のようで、「日本一の炭酸泉」というのは、まんざら嘘ではあるまい。
ただし見出しにまでこう書いてしまうと、温泉マニアを自称する人達からは、「日本一の炭酸泉は七里田温泉では?」と、話の腰を折られかねない(笑)。
確かに、七里田温泉のお湯は素晴らしいと筆者も思う。
だが、この先の話を読めば、温泉の価値は、お湯の良し悪しだけで決まるわけではないことが分かるはずだ。
長湯温泉の紆余曲折の歴史
意外なことに、長湯温泉で最初に「日本一の炭酸泉」というキャッチフレーズを使ったのは、温泉組合でも観光協会でもなく、入浴剤バブでお馴染みの「花王」だった。
命名の理由は、炭酸が抜けやすい高温泉でありながら、多量の炭酸が湯船に残っていることによるそうだが、日本一という表現はあくまで花王の「主観」であって、炭酸濃度などの客観的な指標に基づくものではなかったという。
だが、この「主観」による日本一の表現が、20年後に大きな論争を巻き起こすことになる。
もともと長湯温泉は、1978年に国民保養温泉地に指定された由緒ある温泉地だが、1988年に花王が公表した「日本一の炭酸泉」の話を契機に、温泉療養の本場ドイツとの人材・文化交流を重ね、独自性の高い保養温泉地へと歩んでいく。
その資金に竹下内閣が打ち出した「ふるさと創生事業」の1億円が使われたというのもいい話だと思う。
そして2006年には、九州初の源泉かけ流し宣言を行い、町ぐるみで高品位な温泉地イメージの確立に向けた取り組みを加速しつつあった。
だがその翌年、 「日本一の炭酸泉」と謳っていることに対し、「根拠が不明確である」として大分県から行政指導を受け、その表現を差し止められてしまう。
県からの通達を受けて、長湯温泉の旅館経営者らでつくる長湯温泉協会は、自分たちで実態調査に乗り出した。
炭酸泉を調査分析した結果、その当時に全国で「日本一」を名乗っている炭酸泉は6ヶ所あり、長湯温泉は炭酸ガス濃度では指摘された通りの中位だった。
しかし同時に、湧出量はトップクラスで、温度も適温であることが判明する。
実際問題、炭酸ガス濃度がいくら高くても、一定の湧出量がなければ温泉施設は成り立たない。また源泉温度も重要で、水を加えたり、逆に加温したりすれば、肝心の炭酸成分は失われる。
つまり長湯温泉は、濃度はナンバーワンではないが、「源泉かけ流し」ができる「一級品の炭酸泉」であることが証明された。
それを受けて、長湯温泉は「日本一の炭酸泉」の意味を改めて熟考し、「日本一の炭酸泉を有する温泉地」としてのありようを「宣言」というかたちにまとめた結果、見事にその称号を取り戻すことに成功する。
振り返れば1988年の段階で、「花王」は長湯温泉の「温泉町としての姿勢」に、日本一の称号を与えていたのかもしれない。
先祖代々の資源を大切にし、訪れたお客には「おもてなし」の心を忘れない。
町の人々が当たり前と思っていたことに、「日本一」の折り紙が付けば、自信と誇りが根付き、より高いレベルに行こうとする意欲が自然に生まれる。
誰のための「日本一」なのか…
今の時代に「泉質」だけで勝負ができるほど、観光業界は甘くない。
長湯のような小さな温泉地に求められているのは、アットホームな「町ぐるみの癒やし」なのだろう。
長湯温泉の通りには、気取った割烹やネオンがギラつく酒場のかわりに、なんと「お弁当屋」さんが軒を並べている。
「お金の使い方で客を分け隔てせず、訪れる誰もを気持よく受け入れてくれる」。
そんな空気が長湯にはある。
割引クーポン券付きの「奥豊後温泉文化伝」
長湯温泉には、市営の温泉が3ヶ所、立ち寄りだけの施設が4ヶ所、さらに日帰り入浴のできる宿が、なんと16軒もある。
その一部の施設で利用できる割引券が付いた冊子が「奥豊後温泉文化伝」で、わずか150円で合計1800円分もの入浴割引券が付いているのだから、買わない手はない。
付録の割引チケットは、200円3枚、100券3枚の合計6枚だが、それで2名まで利用できるというのがミソ。
つまり夫婦やカップルを想定している。
長湯温泉では「御前湯」と「万象の湯」、そして老舗の「大丸旅館」でそれぞれ200円券が使える。また七里田温泉でも100円券が使えるのは嬉しい。
観光協会または加盟施設で手に入るので、到着したら最初に手に入れよう。
長湯温泉の車中泊事情
車中泊の旅人にとって、町の中心に道の駅があり、格安な立ち寄り湯がいくつも揃う長湯温泉は、このうえない「旅の宿」だ。

ただ本当かどうかはわからないが、今や長湯温泉は九州でトップクラスの人気を誇っており、由布院や黒川温泉の次に人が来るらしい…(笑)。
実際に現地に行けば、それが眉唾であることはスグにわかるが、来客総数が少なくても、車中泊のできる場所が「道の駅 ながゆ温泉」しかないため、そこに旅人が集中すれば、夜間も満車になることは十分にあり得る。
ゆえに当サイトでは、満車時に備えた代替えの車中泊スポットを紹介している。
またあらかじめそれを回避し、少し離れた「道の駅 原尻の滝」で泊まるというのも、いい作戦だと筆者は思う。
最後に。
居心地がいいからといって、車中泊で道の駅に何日も居座り、「湯治ごっこ」を決め込むのは、同じ車中泊旅行者から見ても「みっともない」し、真面目に湯治に来ている人にも失礼だ。
旅人には、「旅人らしい温泉地での振る舞い方」というものがある。
湯治とは…
専門医から入浴方法や体調の維持管理の指導を受けながら、特定の病気や怪我の治療を目的に、長期間(少なくとも一週間以上)温泉地に滞留する医学療法のひとつ。
すなわち、癒しや観光目的の温泉旅とは根本的に異なる。
長湯温泉 車中泊旅行ガイド





「アラ還」からの車中泊


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