この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
中高年の脚で、往復4時間ほど
南九州の旅で、もし時間と体力に多少の余裕があるのなら、霧島の聖なる山「高千穂峰」に登り、伝説の「天逆鉾」を目の当たりにしたいものだ。
写真の鉾は、ニニギノミコトが降臨に際して国家の安定を願い、二度と振るわれることのないよう、逆さに突き立てたと伝承されている。
それはさておき、高千穂峰の山頂から見える360度の視界は素晴らしく、この日は錦江湾に浮かぶ桜島の噴煙をはっきり確認することができた。
ちなみに霧島は1934年に指定された日本で最初の国立公園のひとつである。
高千穂峰 登山ガイド
駐車場と準備
クルマは高千穂河原の有料駐車場に停める。
料金は1日500円だが、ここにはビジターセンターと霧島神宮の古宮跡があるので、下山後にゆっくり見て周れることを考えれば、けして高くはないと思う。
駐車場から山頂までは、高低差約600メートル、距離は約2.3キロ、時間にして1時間30分~2時間。途中に山小屋やトイレはない。
朝から登るにしても、水と軽食くらいは持参しよう。
なお途中には2カ所に急坂があり、滑りやすいガレ場・ザレ場が続くため、特に足元の装備は十分に。
もちろんきちんとしたトレッキングシューズは必須で、加えてスキーで使うスパッツがあるとがいい。
霧島神宮の古宮跡から登山道へ。
高千穂峰に通じる登山道は、天孫降臨神籬(ひもろぎ)斎場の横から始まる。最初は歩きやすい石畳と石段なので、飛ばさず確実にペースをつかもう。
中間ポイントの「御鉢」に続くガレ場
視界が開けたところで待っているのが、最初の関門。火山灰と岩が複雑に交わる急斜面で、歩き辛いうえに、足をくじきやすいので気をつけよう。
ゼリーは喉の渇きとエネルギーを同時に補給できるスグレモノ。体力を消耗する斜面の前で口にするほうが効果的だ。
疲れたら振り返ろう。ここは足場は悪いが、景色は素晴らしい!
ワイルドな火口風景が広がる御鉢
急斜面を登り切ったところに広がるのは、直径600メートル、深さ200メートルの「御鉢」と呼ばれる広大な噴火口跡。どれだけデカイかは、写真の左上を見ればわかる。
火口の外輪に登山道が通っており、登山客が点のように並んでいる。
こちらは、その登山道の拡大写真。
御鉢の縁を3分の1ほど歩くと、山頂への登山道に出られるが、ここはつかの間の平坦地。歩きながら息を整えよう。
待っているのは、「3歩進んで2歩下がる」火山礫の急斜面
そこから頂上までは再び急斜面が続く。ここで冒頭で紹介したスパッツがあると、堆積した火山礫が靴の中に入るのを防いでくれる。
ちなみにこの木道は、2010年に放送されたNHK大河ドラマ「龍馬伝」のロケのために設置されたそうだが、筆者が訪ねた2013年時点で、もう半分近く埋まっていた。
そして、山頂。
けして、山登りも坂本龍馬も好きではない家内が、「仕事」のために頑張ってくれた記念写真(笑)。
ツーショットの写真は、撮ってくれたおじさんには悪いけど、肝心の天逆鉾がアングルに入っていない。どう考えても、ここでの主役はそっちやで!(笑)。
ちなみに、坂本龍馬が高千穂峰を訪れた際に、この天逆鉾を引き抜いたというエピソードは実話のようだ。
塩浸温泉の龍馬資料館に、それを記した姉宛の手紙(複製)が展示されている。
御鉢の奥に広がる大きな山は、2011年の噴火で大量の火山礫と火山灰を放出した新燃岳だ。
山頂で軽く食事を済ませた後、この日の霧島連山が、大雪山とも北アルプスとも違う、独特の景観を見せてくれたことに感謝して、僕らは来た道を引き返した。