「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
別府温泉郷は、源泉数・温泉湧出量ともに国内ナンバーワンを誇る、温泉旅の「聖地」
古今東西を問わず、一度別府を訪ねて以来、その魅力に取り憑かれてしまったという温泉ファンの数は計り知れない。おそらく、その一番の理由は「飽きない」ことにあると思う。
これが別府の実力!
大分県は自称「おんせん県」を名乗っているが、その本丸にあたるのが別府だ。行けば「百聞は一見に如かず」になってしまうが、とりあえずテキストでその実力の一端を紹介しておこう。
世界に誇れる温泉力
まず、別府温泉郷には世界で確認された11種類の泉質のうち、放射能泉を除く
10種類の温泉が湧いている。
日本最多の「源泉数」
別府温泉郷にある源泉の数は2508箇所。この数はなんと日本国内の源泉総数の約10%に相当し、日本はもちろん、世界でもナンバーワンだ。
「温泉湧出量」日本一
国内で湧出量が多いとされる、奥飛騨温泉郷と草津温泉の湯量を足しても、まだ別府温泉には追いつかない。
さて。
地元で「別府八湯」と呼ばれる通り、別府温泉郷は8つの温泉地の総称だ。
その「別府八湯」は、クルマなら約30分で周回できる狭いエリアに集中し、日帰りで利用できる温泉施設の数は、ゆうに100軒を超える。
しかも中には、価格、泉質、入湯方法、ロケーション等における様々な個性を持つところが数多くあり、一度や二度の訪問ではとても全てを知るには至らない。
着いたら最初に、「別府八湯温泉本」を手に入れよう。
そこで別府温泉に到着したら、まずはコンビニに立ち寄り、この「別府八湯温泉本」500円を手に入れることをお勧めする。
「別府八湯温泉本」は、別府温泉郷の詳細マップと、無料&割引クーポン券、さらに別府八湯の基礎知識からグルメ情報などが盛り込まれた、スペシャルなガイドブックで、無料クーポン券を使えば元が取れる。
ただし無料クーポン券はひとりしか使えないので、夫婦なら2冊が必要だ。
なお、買ったらそのまま駐車場でサクッと目を通し、それから次の行動に移るといい。
というのは、別府温泉市街地には無料駐車場が上人ヶ浜公園の1ヶ所しかない。キャンピングカーならお弁当を買って、そこで食べながら見てもかまわないが、面倒なら買った店の駐車場か、どこかで食事をするついでに見るのが良策。ナナメ読みすれば、15分ほどで概要はつかめる。
別府温泉の情緒は、旅人も利用できる「百円温泉」にあり。
由布院と違い、別府は「庶民の温泉地」というイメージが強い。とりわけそれが感じられるのが、いわゆる100円温泉だ。
別府温泉郷には、今でも100円で入湯できる市営温泉がたくさんあり、地元のご年配達の憩いの場所になっている。しかも嬉しいことに、ここでは他府県から来た旅行者にもその値段が適用される。
なお長くなるので、別府温泉郷の個別情報は以下のページに収録している。
自慢の「湯けむり」を愉しむ
「別府の湯けむり」は、2001年にNHKが全国の視聴者から一般公募した「21世紀に残したい風景百選」で、富士山に次ぐ第2位に選ばれ、国の重要文化的景観にも指定されている。
確かに別府温泉郷では、行く先々でその「湯けむり」と出会うことができるが、特にのんびりと温泉情緒を味わいたい人には、鉄輪温泉がお勧めだ。
石畳の鉄輪銀座通りには、ほかの温泉地ではあまり見ない「足蒸し」や、旅芸人の芝居が楽しめる大衆劇場が今も残り、散歩する人の心を和ませている。
またお腹が空けば、手ぶらで「地獄蒸し」も食べられる。
それに加えてクルマ旅の客人には、さらなる特等席が用意されているのをご存知だろうか。
「湯けむり展望台」から一望する景観は、昭和の初めに「山は富士 海は瀬戸内 湯は別府」と詠んだ、別府観光の父・油屋熊八が夢見た風景そのものだ。
別府温泉の界隈には、おサルで有名な高崎山や、水族館の「うみたまご」といった観光施設もあるのだが、中高年が「本物の別府」を味わうところではなさそうだ。