「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、20年以上かけて味わってきた全国のソウルフード&ドリンクを、そのレシピと老舗・行列店を交えてご紹介します。
高知県・四万十川のブランド焼酎
ダバダダバダ… 「三丁目の夕日世代」は、この響きを耳にすると「大橋巨泉の11PM」なる古い番組を思い出したりするのだが、この酒の名前の由来は全く別…のところにある(笑)。
ダバダ火振とは、「深山の小平地」という意味で、この地域の随所に残る地名「駄場」と、四万十州の伝統鮎漁法「火振漁」に由来し、自然と共生するふるさとの素朴な心を未来に伝えようとしている地酒だ。
ボトルに大きく書かれた無手無冠(むてむか)は、高知県の西部、幡多郡大正町で明治26年に酒造りを始めた蔵元の名前。
「冠におぼれず、飾らず、素朴な心を大切に、ひたすら自然を生かした地の酒づくり」という、創業当時からの姿勢に由来しており、豊かな郷土資源を生かした地酒造りに徹している。
生栗が50%も使用されているというこの焼酎は、栓を開けると栗独特の甘い香りが感じられるが、味にはクセがなく、焼酎が苦手な人でも比較的抵抗感なく飲めることから、女性のファンも多いと聞く。
飲み方は栗の甘みが十分に味わえるロックがいい。
ダバダ火振がブランド焼酎と呼ばれる理由のひとつは、ラインナップの豊富さだ。陶器に入れた「うんすけシリーズ」や、栗を75%使用し、長期貯蔵した「四万十大正」など、無手無冠の店頭だけでなく、インターネットの通販にも様々なバリエーションが揃っている。
だが、そこにも並ぶことのない「秘蔵」のダバダ火振が存在する。
それが一番右にある「四万十太郎」だ。
予約限定販売の古酒で、ダバダ火振を「四万十時間」、すなわち4年7ヶ月もの間、壷詰めにして地下の洞窟で寝かせている。
だが、その大半は地元の古くからの顧客の手に渡るため、まず市場に出回ることはなかった。
しかし、今はその銘酒が誰でも買える。
ポップに「四万十ミステリアスリザーブ」と書かれたこの酒は、ボトルの大きさは違うが、あの「四万十太郎」そのものである。
不定期ではあるものの、在庫があればこういうかたちで市場に出回ることがあるそうだ。