この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、日本全国で1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、「車中泊ならではの歴史旅」という観点から作成しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
2018年の増床で見応えがアップした、桂浜にある「高知県立坂本龍馬記念館」
高知市の桂浜にある「高知県立坂本龍馬記念館」は、幕末の志士「坂本龍馬」の人物像と生涯を紹介している博物館で、全国でもっとも多くの坂本龍馬に関する資料を展示している、まさに「龍馬の殿堂」だ。
1991年の龍馬の誕生日である11月15日に開館し、2018 年には増床を含む大リニューアルを完了した。
※車中泊の情報はかなり下のほうにあるので、お急ぎの方はこちらをクリックしてください。
高知県立坂本龍馬記念館
新館の見どころと楽しみ方
まず、現在の「高知県立坂本龍馬記念館」の入口は新館にある。
新館は「龍馬と“心通わす”」をテーマに、その生涯を映像で紹介するシアターのほか、龍馬の手紙や掛け軸などを常設展示するゾーンになっている。
龍馬ファンなら先を急ぎたいのはわかるが、ここでは坂本龍馬の生涯や生まれ育った土佐の風土を紹介している、いわば「プロローグ」にあたる映像を観ることからはじめよう。
残念ではあるが、これを見れば筆者がこのサイトにツラツラと書いている内容を、わずか数分間で理解できる(笑)。
新館の2階が「龍馬の殿堂」。ここに「高知県立坂本龍馬記念館」が誇るお宝が展示されており、龍馬ファンが見たい数々の「書簡」を見ることができる。
ただし、所蔵物には「レプリカ」も含まれる。まあ、全部がある意味「国宝級」のアイテムだけに、それは致し方なしというところだろう。
その中から、ここでは有名な3つの「書簡」を取り上げたい。
薩長同盟の裏書き。正式には「尺牘 龍馬裏書(せきとく りょうまうらがき)」という。
1866年(慶応2年)1月21日、京都で坂本龍馬立会いのもとに薩長両藩の盟約が成立したが、慎重な長州の藩政・木戸孝允は、盟約六ケ条を書き綴り、龍馬に確認のための裏書を求めた。
ただ龍馬はその直前に、伏見の寺田屋で代官所の襲撃を受け、手を負傷していたため、2週間後の2月5日に朱で裏書をし、翌日お詫びと近況を伝える手紙を添えて、長州の木戸のもとへ届けた。ちなみにオリジナルは「宮内庁」にある。
龍馬は、霧島にある女人禁制の高千穂峰におりょうを連れて登り、あろうことか山頂に突き刺さる「天の逆鉾」を引っこ抜いたことを、得意のイラストで伝えているが、この手紙のレプリカは、霧島温泉のゆかりの地にも展示されている。
ちなみに本物は京都国立博物館が所蔵しており、国の重要文化財に指定されているのだが、神様を冒涜した悪戯の証拠が、「国の重要文化財」に指定されるなんて、龍馬をおいて他にはあるまい(笑)。
新政府綱領八策(しんせいふこうりょうはっさく)
坂本龍馬が1867年(慶応3年)11月に示した、維新後新政府設立のための政治綱領。龍馬の自筆が2枚残っており、現在は国立国会図書館と下関市立長府博物館に保管されている。
よく似たものに「船中八策」があるが、ウィキペディアは「主として歴史小説に登場するが、原本は存在せず、今日では『新政府綱領八策』と『五箇条の御誓文』等を混ぜて作られたフィクションとされる」と、それを伝説扱いしている。
いっぽう国立国会図書館は、「土佐藩船の中で、藩政・後藤象二郎と相談し、時局救済の8箇条を作成、これをもとに起草されたもの」として「船中八策」の存在を暗に肯定している。
「船中八策」が伝説というのは、さすがに夢がなさすぎぜよ!。お役人のほうがウィットに富んでいる(笑)。
内容
第一義では幅広い人材の登用、第二義では有材の人材選用、名ばかりの官役職廃止、第三義では国際条約の議定、第四義では憲法の制定、第五義では両院議会政治の導入、第六義では海軍・陸軍の組織、第七義では御親兵の組織、第八義では金銀物価の交換レートの変更 が述べられている。
なお「龍馬伝」では、後半部分の○○○の伏せ字を大きく取り上げ、大政奉還前の人間関係を浮き彫りにする演出に利用していた。
またドラマ「JIN」では、さらに第級九義として「保険」が付け加えられていたのだが、もちろんそれはフィクション。
しかし、うまいこと考えるものだと感心させられた(笑)。
とまあ、3つだけでもここまで書けてしまうので、残りはオフィシャルサイトの所蔵品リストでご覧いただきたい。
高知県立坂本龍馬記念館
本館の見どころと楽しみ方
これはリニューアル前からある、龍馬が暗殺された時の近江屋の内部。中にあがって記念写真を撮ることも可能だ。
近江屋の模型は京都にある「霊山歴史館」でも見られる。
「霊山歴史館」ではさらに、幕府見廻組の桂早之助が近江屋で坂本龍馬を斬った刀も展示している。
筆者の本館のお勧めは、リニューアル後に設けられた「幕末写真館」だ。
ここには、約130人の龍馬と同時代に生きた幕末の人物の写真が並ぶだけでなく、龍馬との関わりが実に分かりやすく紹介されている。
武市半平太に始まり、勝海舟、西郷隆盛等々、坂本龍馬を取り巻く人々との相関関係が見えてくると、時代が立体的に捉えられるようになり、単なる「龍馬ファン」から「幕末好き」へと進化できる。
筆者は2009年から通算で6度、この記念館に足を運んできたが、2018年のリニューアルで付加された最大の魅力は、このコーナーだと思う。
高知県立坂本龍馬記念館
〒781-0662 高知市浦戸城山830
☎088-841-0001
9:00~17:00(最終入館 16:30)・無休
企画展開催時 大人(18歳以上)700円、その他期間大人(18歳以上)500円
駐車場無料 大型4台、普通車50台
車中泊について
まず「高知県立坂本龍馬記念館」は、国民宿舎「桂浜荘」とともに浦戸城跡に建っているため、駐車場には24時間出入りできる。
「桂浜荘」では、15時まで日帰り温泉を受け付けている。
ただし、写真で見えているのは「桂浜荘」の駐車場で、坂本龍馬記念館の駐車場は敷地のもっと奥にある。
坂本龍馬記念館の駐車場は2ヶ所に分かれているが、こちらは新館の裏にある普通車専用の駐車場。
緩やかな傾斜地に2段で作られているが、いずれも路面はフラットに整備されていて、車中泊に支障はない。また駐車場のすぐそばにトイレもある。
こちらがトイレ。坂本龍馬記念館の団体客も利用するので、個室は数も多い。
駐車場の奥は展望所になっていて、土佐湾が一望できる。ただし、方向的に桂浜は見えない。
展望所には水場があり、灰皿も可燃物用のゴミ箱も置かれている。
大型車が停められる駐車場は、本館の裏にあるがトイレはない。
2020年6月に取材した時点では「車中泊禁止」の看板は見当たらなかったが、名目上は有料施設の駐車場になっているだけに、ここで車中泊をするのは「坂本龍馬記念館」見学の前後というのが常識だ。
日の短い冬場なら、見学後に「桂浜荘」でお風呂に入り、少し休憩すれば日が暮れる。明らかに旅行者と分かる出立ちなら、そういうタイミングで利用しても、特に目くじらを立てられることはあるまい。
なお、ここからクルマで5分ほど走れば、大手を振って自炊も車中泊もできる、無料の公園がある。