「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「わいた温泉郷」は、熊本県の「小国郷」にある車中泊旅行者に人気の温泉地
「わいた温泉郷」の概要
「わいた温泉郷」は、小国富士とも呼ばれる涌蓋山(わいたさん)の麓に広がる「はげの湯温泉」「岳の湯温泉」「山川温泉」「地獄谷温泉」「鈴ヶ谷温泉」「麻生釣(あそづる)温泉」の6つの温泉地の総称だ。
「阿蘇の奥座敷」とも呼ばれ、緑豊かな山々をバックに、幾筋もの湯煙が立ち上る鄙びた雰囲気が漂っている。ここは基本的にクルマがないと来れないので、いつも空いているのがいい。
「わいた温泉郷」の日帰り温泉
「わいた温泉郷」は、全国でも珍しいコイン式の日帰り家族風呂や貸切風呂が多いのが特徴で、中には蒸気を利用した「地獄蒸し」の釜を持ち、温泉利用客に無料で開放している温泉館が3軒ある。しかもそのうち2軒は、そのまま車中泊をさせてくれる。
ここでは、筆者が知る5軒の温泉施設を紹介しよう。
初めての人は、まず「ゆけむり茶屋」で情報収集
「わいた温泉パビリオン」の看板が立つ「ゆけむり茶屋」は、日帰り温泉施設を兼ねた「わいた温泉郷」の観光案内施設で、ここへ行けば各温泉館のパンフレットが手に入るほか、エリアのマップで土地勘がつかめる。
また2020年12月に一部がリニューアルされ、農福連携レストラン「天空の豆畑」がオープンしている。トイレも真新しく、ここで食事を兼ねて情報収集するのも悪くない。
ゆけむり茶屋 オフィシャルサイトなし
☎0967-46-5750
おとな500円
温泉営業:13時~21時(最終受付20時まで)・木曜定休
「わいた温泉郷」で車中泊ができる温泉館
また、地獄蒸しや車中泊をしない「家族風呂重視」の人には、静かな山の中にあって、まさに「シック」という言葉の似合う「守護陣温泉」がお勧めだ。
「わいた温泉郷」のグルメスポット
鄙びた山中にある「わいた温泉郷」にはほとんど店がなく、コンビニやスーパーは10キロほど離れた小国市内に行かなければないのだが、有名なパン屋と豆腐屋があるので紹介しておこう。
「そらいろのたね」は、まさに「たね」の名に相応しい本当に小さなパン工房で、なんと店も基礎工事以外は夫婦がセルフで手がけたという。
あまりの狭さゆえ、買い物は一人またはひとグループづつ店内に入って行い、次の人は外に並んで待つシステム。
幸い、訪ねた日は前に一組のカップルしかいなくて助かった。
我々はパンの詰め合わせと、パン生地に使っているという牛乳とそのカフェオレを買ったのだが、しっとりと焼き上がったパンもさることながら、この牛乳が驚くほど濃厚でおいしかった。
また「わいた温泉郷」に来る機会があれば、「そらいろのたね」には100%リピートすると思う。
いっぽうこちらは、深い山あいで豆腐の製造・販売をしている老舗の岡本とうふ店で、店の前が広い駐車場になっているので立ち寄りやすい。
店内は中高年が馴染める純和風のつくりで、落ち着ける。
さて、これが自慢の田舎豆腐。涌蓋山から流れる伏流水で濃厚な大豆を感じる一品であることに間違いはないが、よもやスーパーで売っている通常サイズの3倍近くもあるとは思わなかった。
湯豆腐にして、なんとか夫婦で食べ切ったが、当分の間豆腐はもう見たくないと思ったね(笑)。