「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
それはチャラ男・ギャル・インバウンドが「つまらない」「めんどくさい」と感じるところ
大人が湯布院で幻滅せずに済む一番の方法は、若者とインバウンドが闊歩する「湯の坪街道」を最後に訪ねることだと思う(笑)。
また「金鱗湖界隈」も、日中よりは早朝に訪ねるほうがいい。
とどのつまり…
若者相手のガイドブックや食べログを参考にするほど、幻滅して帰ることになるだけで、我々のニーズは彼らのビジネスの蚊帳の外にある。そう割り切れる人のほうが、間違いなく湯布院を満喫して帰れるはずだ(笑)。
目次
最初に行くべきは、由布院駅横にある総合観光案内所
由布院駅の横に2018年4月にオープンした「由布市ツーリストインフォメーションセンター」・通称「YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)」は、コンシェルジュが駐在する湯布院の総合観光案内所。
2階はちょっとした図書館になっており、パンフレットが入手できるだけでなく、テーブルのあるラウンジで観光情報を入念に調べることも可能だ。
中高年になれば、1日に観光できる数はたかが知れてる(笑)。量より質を求めるなら、「下調べ」に時間を費やすほうがいい。
地元住民の生活の場でもある由布院駅界隈には、少し歩けばこんな店も見つかる。近頃頃流行りの「農家レストラン」は、田園が広がる湯布院にこそ相応しいのかもしれない。
そんな湯布院の素顔が見られる場所が、由布院駅から1.6キロ、クルマなら5分もかからないところにある、この「宇奈岐日女神社(うなぎひめじんじゃ)」だ。
由布院には弥生時代以降の遺跡が残るが、当時は沼地で、土地の開墾は水との戦いの連続であったという。
そのため人々は治水に頭を悩まし、「鰻(うなぎ)」を精霊として祀ったことが、この神社の由来となったと伝えられている。
広い境内には杉の木が自生しているが、台風で倒れてしまったご神木の切株が、こうして大切に祀ってあるのも珍しい。これぞまさしく「ニッポンの神社の原風景」だ。
自慢のマイカーを生かして、高台から田園風景を望む
由布院駅前でざっくり湯布院のイメージを掴んだら、メインの湯の坪街道と金鱗湖に行く前に、湯布院の町全体が見渡せる「狭霧台」へと足を運ぼう。これはクルマで旅する我々ならではの特権だ。
「湯の坪街道」ではなく、大分川沿いを歩く
湯布院のメイン・ストリートとされる「湯の坪街道」の裏手には、初夏にホタルが見られる「大分川」が流れていて、川沿いに歩くことができる。
そこでのお勧めコースが、上のマップに印したオレンジのラインで、できれば先にこちらを通って金鱗湖まで歩くほうがいい。
最初に現れるのが、天然酵母のパンで有名な「まきのや」。車中泊なら翌朝の朝食にもできるので、「せっかくここまで来たのだから、何か買って帰りたい!」という人にお勧めする。
ただし、焼ける数に限りがあるうえに人気があるので、午後2時には売れ切れ閉店になる可能性が高い。
「まきのや」の隣にある「ゆのつぼ温泉」は歴史のある共同浴場で、江戸時代の文献にもその名前が残っているという。
現在の建物は1995年に建てられているそうだが、見た目はもっと新しく感じた。湯布院には何件か共同浴場があるが、それなりに風情があって入りやすいのはここだろう。
湯船は内湯のみで、男女とも床と越壁に御影石、湯船の縁にヒノキを使用している。脱衣所にはコインロッカーも用意されているので、貴重品も保管できる。
【営業時間】10時~22時(時期により変動あり) 不定休
【利用料金】200円
【問い合わせ】0977-84-3111(湯布院町商工観光課)
さて。こちらは「湯布院御三家」と呼ばれる高級旅館のひとつ、「湯布院 玉の湯」。
「玉の湯」は湯布院が現在の人気を確立するにいたった立役者だが、「いつかはクラウン」のCMを見て育った我々中高年は、フロントに通じる前庭を見て、そんな想いを馳せてみるのも悪くない(笑)。
こちらは「玉の湯」のすぐ近くにある「花野そば」。
人気店なので空いている保証はできないが、下を噛みそうになるカタカナの名前がついたランチを、並んで待って食べるよりは、こちらのほうがずっといい(笑)。なお、この店にはオリジナルの食べログを書いている。
「花野そば」から金鱗湖に向かって進むと、今度は「湯布院御三家」の「亀の井別荘」が見えてくる。
旅館「亀の井別荘」は、別府の観光開発に尽力した油屋熊八が、客人をもてなすために中谷巳次郎とともに大正10年に築いた別荘が前身であることから、今もその名を残しているのだが、まさに「別府の奥座敷」として発展を遂げた、湯布院のルーツとも呼べる存在だ。
1万坪とも云われる広大な敷地の中には、日帰り客が利用できるカフェもある。
秋冬に行くなら、金鱗湖は早朝がいい
Ps
さて。最後にもう一度、冒頭のフレーズに戻りたい。
そこでは筆者は次のように書いている。
大人が湯布院で幻滅せずに済む一番の方法は、若者とインバウンドが闊歩する「湯の坪街道」を最後に訪ねることだと思う(笑)。
湯布院まで来てメイン・ストリートを歩かずに帰るのは、パリまで来てシャンゼリーゼを歩かないのと同じ(爆)。