この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
「九重”夢”大吊橋」は、「震動の滝」が一度に見られる写真好きの穴場スポット
2006年に完成した「九重(ここのえ)”夢”大吊橋」は、「やまなみハイウェイ」からほど近いところにある、長さ390メートル・高さ173メートルを誇る日本一の歩行者専用吊橋だ。
大吊橋の幅は1.5メートルあり、大人でもすれ違うことができる。また大人1,800人の荷重に耐えるよう、コンクリートと鉄骨でできている。
しかし、中央部の床版はすのこ状のグレーチングになっているため、安全と分かっていても、下を見ること足がすくむ。
高所恐怖症の筆者は、よほどのことがない限り、まずこういう橋を渡ることはないのだが、「九重”夢”大吊橋」には、その「よほどのこと」があった。
しかも500円の通行料を支払ってまで!(笑)
こちらが、橋の上から筆者が見たかった景色。
「九重”夢”大吊橋」からは、2本の滝で構成され「日本の滝百選」に名を連ねる「振動の滝」が見える。
左が雄滝、右は雌滝と呼ばれているが、ドローン抜きに両方を一度に撮れるのは、たぶんここだけのようだ。
「震動の滝」の雄滝の落差は83メートル。筆者は大きな滝ほど離れてみるほうが美しいように感じる。
写真を見ると、鳴子川渓谷は紅葉も美しいみたいなので、今度取材の要請がでたら、ぜひ秋に訪ねてみたいものだ。
「九重”夢”大吊橋」の愉快なエピソード
「九重”夢”大吊橋」誕生のきっかけは、1956年7月に地元商店会のひとりが、「谷に橋をかけりゃ、滝も紅葉もきれいに見えるぞ」と発言したことにあるという。
その時は長老たちから、「寝ぼけている」「誰が金を出すのか?」と一蹴されたが、それから40年近く歳月を経た1993年に、なんとこの話が町の観光振興計画に盛り込まれる。
橋の名前は公募で選ばれたのだが、「長年の夢」のような話にちなんで、“夢”を冠した今の名前が選ばれたらしい。
公式サイトに「総事業費は周辺整備費などを含めて20億円。これには国・県の補助金はありません。」と記されているのだが、確かに実用性の低い「夢」のような話に、補助金を出してくれる自治体はないと思う。
しかし九重町は、あの手この手で資金を捻出し、実現にこぎつけている…
本当は、そういう話をもっと聞かせてほしいよな~。
クルマ旅の旅人は、スリル満点に揺れる祖谷のかづら橋や、日本どころか世界一長い大吊橋の「明石海峡大橋」を知っている。
「観光地の素材」としては悪くないが、ただ「怖い」とか「長い」みたいな、誰でも思いつく話に、「ポン!」と500円を出すほどお客様は甘くない(笑)。
ホームページは、地元商店会の気持ちを汲んで、夢を語ってくれるような本物のプロに頼んで作ってもらうほうがいいのでは。
「九重”夢”大吊橋」のへのアクセスと駐車場
県道40号線の「中村エリア」と、鳴子川を挟んだ「北方エリア」を結ぶ「九重“夢”大吊橋」は、大分自動車道・九重ICから約25分のところにある。
アクセスが良く、収容駐車場が多いのは中村エリアで、大半はこちらから橋を渡っているようだ。
「中村エリア」には普通車229台を収容する、トイレ付きの無料駐車場があるが、夜間は閉鎖される。
なお普通車46台と規模は小さいが、空いているのは「北方エリア」の駐車場だろう。