「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「いぶすき元湯温泉」は上質な美肌の湯を持つリーズナブルな温泉館だが、PRが下手。
「砂むし」で有名な指宿温泉にも、「元湯」があるというので訪ねてきた。
「いぶすき元湯温泉(旧市営温泉)」は、砂むし会館「砂楽」から若宮神社に通じる、かつての温泉街「子宝ロード」沿いにある。
これまでの経験上、古い温泉地の「元湯」というのは、駐車場がないか、あっても細い道を通らされることが多い。
そこで最初は近くまで行って、太い道沿いにクルマを置き、そこから徒歩で様子を見にでかけた。
幸いにも心配したようなことはなかったのだが、中途半端な今風の看板が目に留まって苦笑い。
どうせなら、「トルコ」と書いてあるほうが面白いね(笑)。
さて。こちらは2018年に撮影した写真。以前に訪ねた時より建屋がキレイになっており、雰囲気も少し若返った感じがした。
指宿は江戸時代以降に開けた温泉町で、「元湯」といっても、「鷺」とか「鹿」、あるいは「白猿」が傷を癒やしたというような、古い温泉地に付きものの伝説めいた話があるわけではない。
「いぶすき元湯温泉」は、確かに風情を装った木造湯屋づくりになっているのだが、こうなってしまうなら元湯の冠を外し、「指宿温泉発祥の湯」のプレッシャーから開放してやるほうがいいようにも思えた。
ただの「指宿市営温泉」なら、観光客が要らぬ先入観を抱くこともない。
さて。「いぶすき元湯温泉」の浴室には露天風呂はないが、温度の異なる2つの浴槽がある。
お湯は「しお湯」と呼ばれる高温の塩化物泉。ただでさえ温まる泉質のうえに、高温ときているので、冬はいい。
pH値は8.1の弱アルカリ性で、天然の保湿成分と云われる「メタケイ酸」を200ミリグラム近くも含むことから、つるつるとした肌触りが得られる。
こう書けば、何より上質な美肌の湯であることが分かるはず。
それがたったの350円なのだから、本当はすごく値打ちのある温泉館なのだが、Googleの上位に出てくる行政の紹介サイトは、どうでもいい形容詞ばかりを羅列しているばかりで、肝心なことが書いてない。真面目に働こうや(笑)。
内湯:男湯(2箇所)、女湯(2箇所)
泉質:塩化物泉(等張性、中性・高温泉)
泉温等:源泉温度85°C 加温なし・温度を下げるため加水
ドライヤーあり
駐車場:普通車(10台) 無料
いぶすき元湯温泉
☎0993-24-2701
大人350円
12時~21時・第1・3月曜日