「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
「天然砂むし」が体験できるのは、砂むし会館 「砂楽」と山川砂むし温泉「砂湯里」の2軒
指宿では、「砂風呂」のことを「砂むし」と呼ぶ。
「砂風呂」は、温かい砂を首から下の全身に掛け、その温熱効果で体を温める一種の「サウナ」で、一般的な入浴の3倍近い発汗作用があるといわれている。
鹿児島大学医学部の学術調査により、美容だけでなく神経痛や関節痛、あるいは冷え性などへの有効性が実証された「砂風呂」は、若い女性よりもむしろ、中高年に適した入浴法と云えるだろう。
さて。「指宿温泉」は地下を流れる天然温泉が、うまく海岸の砂を温めてくれる地形になっており、摺ケ浜海岸と伏目には、全国でも希少な「天然砂むし」が体験できる施設がある。
ちなみに別府温泉にも、「天然砂むし」が体験できる公共浴場があるのだが、こことはスケールが違う。
「指宿温泉」に行くなら、ぜひそのどちらかに足を運んでいただきたい。
摺ケ浜海岸にある、砂むし会館 「砂楽」
指宿温泉の中心街に位置しており、ツアーや公共交通機関で訪れる観光客の大半は、こちらの「天然砂むし」を訪れている。
建物の裏側には摺ケ浜海岸が広がっている。もちろんビーチにも「砂むし場」はあるが、天候や海面水位の影響で使えない日も多いため、一画に全天候型の「砂むし場」が用意されている。
中はこういう感じ。
ちなみに、砂をかけてもらう時の秘訣は、低温やけどを避けるために、できるだけ直に素肌が砂に当たらないよう、浴衣で手足も覆うこと。
そうしないと砂むしの目安とされる10分間は耐えられない。
なお、熱いと感じたら10分以内でも砂から出よう。貧乏人根性を出して頑張っても、ここでは誰も褒めてはくれない(笑)。
また「砂むし」の後は、シャワー完備の大浴場でちゃんとカラダを洗えるのでご心配なく。うちの家内はそれを気にしていたが、女性なら当然だろう。
最後に気になるのは砂の衛生面だが、砂むし会館 「砂楽」では、区画を分けて定期的に80度以上の源泉で熱湯消毒を行っている。
砂むし会館 「砂楽」
☎099-323-3900
おとな1100円
8:30~21:00
無休
なお、駐車場は少し離れた山手にある。
伏目にある、山川砂むし温泉「砂湯里」
「砂むし」のシステムは「砂楽」と大差がないのだが、こちらは指宿温泉の郊外にあるため、マイカーがないとアクセスしづらい。
しかし開聞岳を望む絶景のロケーションが、それを補って余りある。
また入口の横には蒸気蒸しができる「スメ」があり、温泉情緒も「砂湯里」のほうが遥かに勝る。料金が安いのもいいね。
ただし施設は古びていて、砂むし会館 「砂楽」に比べると明らかに見劣りする。そのため、よく調べないと、こちらには足が向かないかもしれない。
砂むし温泉「砂湯里」
大人830円
9時~17時30分(受付17時まで)・無休
Ps
実は、筆者が山川砂むし温泉「砂湯里」を推す理由はもうひとつある。さきほどの「よく調べないと」という話はここからだ。
砂むし温泉「砂湯里」を管理している「ヘルシーランド」は、「砂湯里」の隣にも露天風呂施設を有しており、両者には1240円の「たまて箱温泉セット券」というお得な共通券がある。
そして、その「たまて箱温泉」の和風露天風呂が、実に素晴らしい!