この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の紹介です。
真冬に行われる「長崎ランタンフェスティバル」は、車中泊旅行者向きの一大イベント
「長崎ランタンフェスティバル」は、中国の春節祭を起源にする冬の長崎の一大イベントだ。
期間中は約100万人の観光客が、15,000個ともいわれる極彩色のランタンに彩られた長崎の町にやってくる。
それだけにホテルの予約は争奪戦だが、車中泊ならそれに巻き込まれる心配はない。
長崎ランタンフェスティバル【目次】
プロローグ
長崎に根付いた中国文化
本論に入る前に、少し長崎と中国文化の話をしておきたい。
もともと東アジアに近い長崎県は、紀元前から中国大陸や朝鮮半島と深い関わりを持っていたが、とりわけ17世紀から19世紀にわたる日本の鎖国時代に、海外との唯一の貿易窓口であった長崎市には、中国との交易で伝えられた大陸の文化が、今も色濃く残されている。
たとえば繁華街に近い中島川にかかる石橋群は、最初は中国人によって造られたものがほとんどで、中でも「眼鏡橋」は日本最初のアーチ型石橋として、国の重要文化財に指定されている。
また唐寺は江戸時代の初期に長崎に来航した中国人によって建てられたもので、崇福寺で毎年行われる中国盆には、現在でも全国から多くの華僑が集まってくる。
いっぽう食習慣においても、チャンポンや皿うどん、豚の角煮、そして卓袱料理など、大陸文化の名残を強く感じるものが数多く残されている。
さらに中国文化の影響は、ペーロン競漕、精霊流し、長崎くんちの龍踊りなど、長崎伝統の年中行事にも大きく影響を及ぼしている。
その中の比較的新しいイベントが、長崎ランタンフェスティバルだ。
長崎ランタンフェスティバルの概要
「長崎ランタンフェスティバル」は、1986年(昭和61年)に長崎新地中華街に牌楼が建設されたことを契機に、翌年長崎に在住していた華僑の人々が、旧正月を祝う「春節祭」の一環として開催したのが起源とされている。
フェスティバル中に披露されるペーロンや龍踊りは、中国から伝わった長崎の伝統文化だが、「長崎ランタンフェスティバル」自体は、それをうまく取り込んだ昭和生まれの集客イベントの色彩が強い。
観光客の少ない時期だけに、長崎市を上げてPRしていることもあって、商店街はご覧の通りの大盛況。
寒いので、蒸したての肉まんや小籠包が飛ぶように売れていく。
加えて「中国雑技」は「長崎ランタンフェスティバル」の人気の的になっている。
アクロバティックな空中芸もさることながら、筆者は一瞬で面が変わる「変面」を見るのが楽しみだ。
それにしても… 長崎市は本当に観光行政がしっかりしている。
神戸・横浜も含めて、チャイナタウンのある港町は、「したたかさ」という中国文化まで、しっかり受け継いでいるようだ。
2022長崎ランタンフェスティバル
コロナ禍により、2020年2021年と2年連続で中止されてきた「長崎ランタンフェスティバル」だが、2022年は規模を縮小して3年ぶりの開催を予定している(2021年12月現在)。
ただ、コロナウイルスの感染拡大次第で状況が変わることも予想されるので、正確な情報を下記のサイトで確認してから出かけよう。
長崎ランタンフェスティバル時の駐車場事情&車中泊スポット
車中泊で「長崎ランタンフェスティバル」に行くことを検討中の旅人にとって、「最重要情報」といえるのはこちらだろう。
察しがつくと思うが、平日でも夕方からは新地中華街の手前から渋滞で動けなくなることが多く、周辺の平面駐車場は早々と満車になる。
そのため係員が市営駐車場に誘導してくれるのだが、行き先は「立体駐車場」だ。
車中泊をしない人はそれで構わないのだが、ハイルーフ車に乗る筆者は、さんざん並ばされた挙句に入庫できない「ドツボ」にハマった(笑)。
ちなみに現在お勧めの立駐は、96台の収容数を誇る「新観光タワーパーキング」。
メイン会場の「新地中華街・湊公園」まで徒歩1分で、7時から 23時までは最大料金900円(前払い)で利用できる。
さて。
ハイルーフ車やキャンピングカーが、「長崎ランタンフェスティバル」で「ドツボ」を回避する一番の秘訣は、まずは車中泊ができる駐車場に出向いて適切な区画を押さえ、昼間は市電を使って市内を観光し、夕方から歩いてアクセスすることだ。
「長崎水辺の森公園」から「新地中華街」までは1キロ弱で、徒歩約10分。
ただし「長崎ランタンフェスティバル」を目指すようなコアな車中泊旅行者は、既にここを知っている可能性が高い。
つまり「知っている者同士の争奪戦」になることを想定して、朝早めに行動するほうがいい。
なお近くには、バスコンとキャブコンも駐められる県営常盤駐車場(南)がある。
こちらは高さ2.5メートル以上はバス扱いで、以前は大型料金は24時間最大2400円だったが、現在は昼間(8時~18時まで)最大料金2,400円+夜間(18時~8時まで)最大料金2,400円の合計4,800円と大幅に値上げされている。
それでも他に選択肢がないの実情だけに、あれこれ迷うより「長崎まで来て、ケチケチしたって仕方がない」と潔く諦めるほうがいいと思う(笑)。