日本遺産の熊野磨崖仏/国東半島 トリビア・マイカーアクセス・駐車場・車中泊情報 2023年2月更新

熊野磨崖仏大分県の史跡

【2023年2月更新】
車中泊旅行歴25年の歴史に精通するクルマ旅専門家がまとめた、大分県・国東(くにさき)半島にある、熊野磨崖仏の着眼ポイントと駐車場及び、マイカーアクセスと周辺車中泊事情に関する情報です。

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国東半島に残る「六郷満山」文化の痕跡を色濃く残す「熊野磨崖仏」は、日本遺産『鬼が仏になった里「くにさき」』の構成遺産

熊野磨崖仏

「熊野磨崖仏」の筆者の歴訪記録

※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。

2017.04.29

※「熊野磨崖仏」での現地調査は2017年4月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2023年1月に更新しています。

日本遺産の熊野磨崖仏/国東半島 

熊野磨崖仏

この記事を書くにあたり、筆者はプロ・アマを問わず、けっこうな数の「熊野磨崖仏」に関連するネット上の記事に目を通したが、「熊野磨崖仏」が日本遺産の構成要素であることに触れているものはほとんどなかった。

そもそも「磨崖仏」は”いったい誰が何のために創るのか…”

このまさに”一丁目一番地の話”から入らなければ、その大きさとか表情、あるいはお目にかかるのに苦労する(笑)といったような、うわべのことしか書けないのは当たり前。ゆえに読む側に感銘や、訪ねてみたいという好奇心を与えることができない。

出典:大分県ホームページ

日本遺産は2015年に創設された新たな取組みとはいえ、「熊野磨崖仏」が日本遺産の構成要素である理由を知ったことで、筆者の視界を遮っていた「磨崖仏」どころか、国東半島の「六郷満山」に対する「影」は一気に消えた。

ここでは、その感動を皆さんにも味わっていただきたいと思う。

日本遺産とは

出典:ポプラ社

簡潔に云うと、日本各地の魅力的な文化・伝統を語る「ストーリー」で、2015年(平成27年)に創設されている。

世界遺産との違いは大きく2つ。
●世界遺産は保存、日本遺産は活用が目的
●世界遺産は不動産、日本遺産はストーリーが認定対象

世界遺産にはどのジャンルであっても、遺跡・地形・生息地といった「有形の不動産」であることが求められるが、日本遺産は遺跡だけでなく、習慣・伝統・信仰といった、文化財を生み育んできた「文化そのもの」を結びつけ、ストーリーとして魅力的なパッケージにできるものを対象にしている。

つまり、”世界遺産の日本版”ではなく、異質で独自の「価値観」を有している。

『鬼が仏になった里「くにさき」』

国東半島のガイドには、必ずといっていいほど「神仏習合 発祥の地」と「六郷満山」という言葉が登場する。

ただこの2つのキーワードから詳しく説明すると、まず途中で脱落したくなると思うので(笑)、後ほどゆっくり以下の記事でご覧いただきたい。

超大雑把に云ってしまえば、

国東半島は古くから、大陸と奈良・京都にあった朝廷が交流する海上交通の要衝にあり、古代から日本にあった山岳信仰と、大陸から伝わってきた仏教が重なる「神仏習合」が生じ、それを新たな信仰形態とする固有の「六郷満山」文化が発祥した。

そしてその一部は、1300年の時を経た現代まで脈々と受け継がれている。

これをストーリーと呼ばずに何と呼ぶ。

ということだ(笑)。

もちろんそこには、「宇佐神宮」や「八幡大菩薩」が深く絡んでいるが、それは上の記事に驚くようなミステリーとともに掲載している。

では、鬼はどこから現れた?

国東半島

「熊野磨崖仏」の本論はここからだ。

奈良時代の日本人にとって、瀬戸内海に突き出た国東半島は、玄界灘の彼方にある別世界との境界であり、“最果ての地”とも呼べる場所だった。

その中央にそびえる両子山(ふたごさん)の岩峰に足を踏み入れた修験者たちは、荒々しい自然の造形を目の当たりにし、「ここには実際に鬼が棲んでいるに違いない」と思い込んだことから、腕力で大岩を割り、割った石を積んで一夜で石段を造ったなどという、鬼にまつわる伝説が広まっていった。

そしてその話に便乗したのが、天台密教を信仰する僧侶たちだ。

鬼は古来より不思議な法力を持つ存在として、僧侶達の憧れの存在であったという。

出典:豊後高田市

僧侶達は鬼を探して両子山の岩峰をよじ登り、鬼の棲む洞穴を削って「岩屋」と呼ばれる修行場を作り出し、岩屋を巡る「峯入り」を始める。

それを718年(養老2年)にこの地に入山した、仁聞(にんもん)というひとりの僧が「かたち」にした。

仁聞は法華経の巻数に合せた28のお寺を建て、僧侶が学習・修行・布教をするための、天台仏教の一大組織「六郷満山」を作り上げる。

鬼会の里

面白いことに国東半島では、鬼はその法力を使って災厄を払う存在として、人々から厚く信仰されている。

なぜなら「六郷満山」では、鬼は最高位の仏様とされる大日如来の化身である「不動明王」と重ねられているからだ。

そのため「六郷満山」の大半の寺では、僧侶が鬼に扮して国家安泰から雨乞いまで様々な願いを唱える「鬼会(おにえ)」が行われ、国東半島では他に例を見ない、鬼に祈る文化が花開いた。

鬼と熊野磨崖仏の接点

熊野磨崖仏

いよいよ第一章のゴールが見えてきた。

「熊野磨崖仏」がある「熊野神社」には、興味深い伝説が残されている。

昔この地域にいた鬼が、権現様に「人間の肉が食べたい」と願い出た。

権現様は冗談で、「日暮れから翌朝までに百段の石段を造れば許そう。しかしできなければお前を喰う」と云ったのだが、鬼はあれよあれよという間に99段まで積み上げ、ついに最後の一段を完成させる直前まできた。

このままではヤバイ!となった権現様は、咄嗟に「コケコッコー」と夜明けを告げる鶏の鳴きまねに打って出た。

鬼はその声を聴いて「権現様に喰われる~」と、石を抱えて逃げて行った。

とまあ多少は端折ってきたが、これが「熊野磨崖仏」が日本遺産『鬼が仏になった里「くにさき」』の構成遺産に組み込まれている理由だ。

橋杭岩

なんだか、紀州串本に残る「橋杭岩」の伝説と似ているような気もするが(笑)、この先をお読みいただくと、もっとこの話には納得が行く。

「神仏習合」「六郷満山」、なかなかおもしれ~じゃないかってね!

ひとまず、ここで一息入れよう。

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熊野磨崖仏のトリビア

「熊野磨崖仏」は、「六郷満山65ヶ寺」のひとつである「胎蔵寺」から 「熊野神社(熊野権現)」へいたる、300メートルほどの山道と、前述した”鬼が一夜で築いたという伝説の石段”を登った左手の岩盤に彫られている。

出典:豊後高田市公式観光サイト

「熊野磨崖仏」とともに日本遺産に登録されている「胎蔵寺」は、「六郷満山」に伝わる「峯入り」(行程150kmの10日間に及ぶ荒行)の出発点になっており、かつては修行僧や修験者を多く抱え、明治の神仏分離で熊野神社になった熊野権現を管理する別当(山の寺務を統轄した僧職)がいた。

熊野神社

こちらが、12世紀の初めに紀州の熊野本宮から権現様を勧請(かんじょう)して創建されとされる熊野神社。

熊野本宮大社

「本宮」と名がつく通り、世界文化遺産にも名を連ねる熊野本宮は、平安時代に上皇様が度々参拝するほど由緒のある大社だ。

熊野磨崖仏

それを勧請すること自体が難しいと思うのだが、ここではなんと寺院が成し遂げており、石段にある鳥居を含めて強い「神仏習合」の名残を見ることができる。

熊野磨崖仏

さて。

伝説によると、718年に「六郷満山」を立ち上げた仁聞が彫ったとされる熊野磨崖仏は、2体の仏様から成っており、国の重要文化財に指定されている。

つまり磨崖仏とは、密教を信仰する僧侶の修行によって創られた像のこと。

よもや仏教徒ではない現代人が、そんな「いにしえのアート」を見るために、こんな山中まで喜んでやって来るとは思わなかったに違いない。

熊野磨崖仏

こちらが「不動明王」像。

優しい表情である理由は、前述したように「六郷満山」では、鬼は最高位の仏様とされる大日如来の化身である「不動明王」と重ねられているからだ。

もしこの磨崖仏が怖い顔をしていたら、「やっぱり鬼は怖いやん!」ということになる(笑)。

いっぽうこちらは、「大日如来」像と云われている。

化身である「不動明王」があるのに、大元の「大日如来」まで彫られているのはおかしいのでは?

そう疑問に感じたなら、あなたは鋭い!

近年の調査によると、「大日如来」像は11世紀後半の作で、「不動明王」像は12世紀後半の作と推定されている。

ということは仁聞が彫ったとしたら、300年くらい生きていたことになるので、宗教法人も「伝説」と茶化している(笑)。

しかしここは修業の場だから、何年にもわたって様々な僧侶が修行の跡を残していても不思議ではない。むしろ、そのほうが自然だと筆者は思う。

なお筆者の仏像に対する知識は稚拙で、磨崖仏の表情等については「語る資格なし」のレベルでしかない。

たとえ観光客をうまく誤魔化せたとしても、仏様の世界を熟知する人が読めば、それが滲み出てしまうだけなので、スパッと割愛させていただこう。

そんなありふれた話より、今回のほうがよほど面白かったのでは(笑)。

熊野磨崖仏

最後に。

鬼が作った石段は、サンダルで歩けるような道ではない。

中高年はシューズでも、帰りに「鬼」ではなく「膝」が笑うかもしれないので、見栄を張らずに受付で杖を借りて登ろう。

熊野磨崖仏の駐車場とマイカーアクセス

真玉海岸

「熊野磨崖仏」は国東半島の内陸部にあり、県道655号が近くを通っている。

県道655号から駐車場に入る導入路の交差点に道案内が出ているので、それを見落とさなければ、迷うようなところではない。

スマホでこのページをご覧であれば、下のマップをGoogleナビに切り替えられるので、それがいちばん確実だが、カーナビのほうがいい人のために住所を記載しておこう。場所が場所だけに、ご年配で興味のある人も多いと思う。

〒879-0853
大分県豊後高田市田染平野2546-3

熊野磨崖仏案内所 ☎0978-26-2070

熊野磨崖仏 駐車場

こちらが「熊野磨崖仏」専用の駐車場で、収容台数は約10台。駐車料金は無料だが、拝観料として大人300円が必要だ。

営業時間は

夏季(4月~10月):8時~17時
冬季(11月~3月):8時~16時30分

入口にゲートはないので高さの制限はないが、大型車は混み具合で制約を受けるかもしれない。キャンピングカーなどで心配な人は、事前に電話で確認するほうが無難だろう。

なお「熊野磨崖仏」は主要幹線道路から外れているため、どこかへ行くついでに偶然前を通りかかることはない。

従ってもし組み合わせるとしたら、「豊後高田昭和の町」あるいは「宇佐神宮」~「熊野磨崖仏」~「杵築城下町」といった旅行計画がお勧めだ。

マップをグーグルナビに切り替える方法
スマートフォンでご覧の方は、「拡大地図を表示」をタップし、画面が切り替わったら下の「ナビ開始」をタップするとナビゲーションが始まります。 高速道路か国道にするかを選びたい場合は、「ナビ開始」ボタンの左にある「経路」をタップすると表示されます。

熊野磨崖仏周辺の車中泊事情

道の駅くにみ

「熊野磨崖仏」は、国東半島にある「道の駅 くにみ」と「道の駅くにさき」から、いずれも約35キロ・クルマで45分ほどのところにある。

真玉海岸

ただ前日に車中泊をするのであれば、真玉海岸の美しい夕景が見られる「道の駅 くにみ」のほうがお勧めだ。

国東半島の右側には、外したくない観光スポットがあるわけではないので、朝から「道の駅 くにみ」を出て内陸部を縦断し、空いている午前中に「熊野磨崖仏」を見学してから、杵築の城下町に向かえばロスがない。

それでは、いってらっしゃいませ(笑)。

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