歴史に精通する、車中泊旅行歴25年のクルマ旅専門家がまとめた、坂本龍馬と岩崎弥太郎の史実に基づく関係です。
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この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」がまとめた、「一度は訪ねてみたい日本の歴史舞台」を車中泊で旅するためのガイドです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
大河ドラマ「龍馬伝」での2人の最初の出会いは「脚色」?

若き日々の龍馬と弥太郎は見知らぬ仲

出典:日本商工会議所
岩崎弥太郎は日本の実業家で「三菱財閥」の創業者。
のちの明治の動乱期に政商として暗躍し、巨万の利を得たもっとも有名な人物だ。

出典:NHK
香川照之がクセのある弥太郎を演じた大河ドラマ「龍馬伝」では、地元の土佐で青年時代に坂本龍馬と交流するシーンが数多く登場するが、史実上、記録として確認できる二人の接点は、長崎における海援隊発足以降とされている。
ただ海援隊以前の龍馬と弥太郎にも、間接的な接点がなかったわけではない。
海援隊で龍馬の右腕と云われた近藤長次郎(大泉洋)や、龍馬の古くからの同志だった池内蔵太(桐谷健太)は、弥太郎が私塾をしていたときの門弟だ。
ゆえに彼らから弥太郎の名前ぐらいは聞いていたかもしれない。
さて。この記事は「坂本龍馬ゆかり」がテーマなので、岩崎弥太郎の土佐でのプロフィールは割愛させていただき、ここからは本論に進んでいこう。
岩崎弥太郎の長崎での業績
1867年(慶応3年)、弥太郎は後藤象二郎により藩の商務組織・土佐商会の長崎留守居役に抜擢され、長崎の地で藩の貿易に従事する。
1867年(慶応3年)4月、「亀山社中」は龍馬が脱藩罪を許されたことで土佐藩が支援を続けることとなり、場所も隊員もそのままで「海援隊」に改称された。
そして岩崎弥太郎は、その海援隊の会計を担当することになるのだが、その直後に「いろは丸事件」が起こる。
いろは丸事件
伊予大洲藩から海援隊が借り受け、初航海に出た「いろは丸」は、瀬戸内海の讃岐・箱の岬近くで紀州藩船の「明光丸」と衝突し、積荷ごと沈没した。
事故現場に近い「鞆の浦」で始まった賠償交渉には、後藤象二郎、坂本龍馬、そして岩崎弥太郎があたるが、相手が御三家だけに交渉は難航する。
そこで龍馬は長崎の街中に紀州を揶揄する歌を流行させ、さらに万国公法を持ち出して「明光丸」の過失を追及し、紀州藩を慌てさせる。
その結果、五代友厚のとりなしもあり、紀州藩が折れて積荷代に相当する賠償金約8万3526両を支払うことが取り決められた。
この賠償金額を現在の貨幣価値に換算すれば、およそ164億円にもなるというから驚きだ。しかも後年に沈没船の調査が行われ、積み荷の話はホラであったことが判明する。
賠償金は7万両に減額されたうえで11月7日に長崎で土佐藩に支払われ、更にその後龍馬に支払われるはずだったが、8日後の11月15日に、龍馬はその大金を受け取ることなく、京都河原町の近江屋で暗殺された。
つまり、龍馬と弥太郎がともに過ごした時間は1年にも満たない。
明治時代の岩崎弥太郎
1868年(明治元年)に長崎の土佐商会が閉鎖されると、弥太郎は大坂の土佐商会に異動し、1870年(明治3年)10月に、土佐藩士たちによって設立された海運業を行う私商社「九十九商会」の監督者となる。
「九十九商会」は廃藩置県後の1873年に「三菱商会(後の郵便汽船三菱会社)」と改名し、岩崎弥太郎個人の企業となった。
土佐藩主山内家の三葉柏紋と、岩崎家の三階菱紋の家紋を合わせた「三菱のマーク」が誕生したのはこの時だ。
ここから先は、2021年に放送された大河ドラマ「青天を衝け」で描かれた通り。
「三菱商会」は新政府の軍需輸送を独占して巨額の利益をあげ、全国汽船総トン数の73%を手中に収める。
また並行して海運業からの多角化によって三菱財閥の基礎を築いていく。
とりわけ1877年(明治10年)に勃発した西南戦争時には、 「三菱商会」の所有するほとんど汽船が軍用船として需要を独り占めし、 これによって得た運輸代金は1300万円という莫大な額にのぼった。
しかし1881年(明治14年)に最大の保護者であった大隈重信が失脚し、 弥太郎は三井家の背後にいる井上馨・渋沢栄一を敵に回し、共同運輸会社と死闘を繰り広げた。
そして闘争最中の1885年(明治18年)、健康の衰えから50歳でこの世を去る。
なお、「坂本龍馬」に関する記事はこちらにまとめているので、興味があればぜひ。
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