25年のキャリアを誇る車中泊旅行家がまとめた、長崎県の世界遺産「軍艦島」の予約と観光に関する詳しい情報です。
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この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国各地の「クルマ旅にお勧めしたい観光地」を、「車中泊旅行者目線」からご紹介しています。

~ここから本編が始まります。~
「軍艦島」には、事前に知っておくべき話がある。
「軍艦島」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2017.05.01
「軍艦島」での現地調査は2017年5月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2025年4月に更新しています。
軍艦島 目次
軍艦島(端島)は、日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」の舞台
歴史や世界遺産が好きな旅人に向けて、今この記事をご覧いただいている方の多くは、既に「軍艦島」がどういうところであるかをよくご存知だと思う。
と最初に書いた時は、
まだ「海に眠るダイヤモンド」は放送されていなかった(笑)。
しかし2024年に、TBS系の「日曜劇場」でこのドラマが放送されたことにより、「端島=軍艦島」の知名度は大きく跳ね上がったに違いない(笑)。
「日曜劇場」と云えば、「半沢直樹」「下町ロケット」そして「VIVANT」等々、数々の名作ドラマを配信し続けていることで有名だが、ドラマとしての「海に眠るダイヤモンド」は、”尻切れトンボ”感が残る内容で、ストーリー的には過去の名作ほどの感動はなかった。
しかし「軍艦島」の再現ぶりは、見事を通り越して”圧巻”とも呼べるものだった。
筆者には6歳まで「軍艦島」で暮らした友人がいるが、その彼をして「まったくこの通りだった」というのだから、そのこだわりは半端なものではないだろう。
運良く(笑)、
これから「軍艦島」に行かれるのなら、「海に眠るダイヤモンド」を観て行かれる方がいいのは間違いない。
そのリアルな全盛期を知るからこそ、「軍艦島」の価値が分かるというものだ。
軍艦島とは…
「軍艦島」は長崎港の南西約19kmの海上に浮かぶ島の俗称で、正式名を「端島(はしま)」という。
幅160m、長さ480m。東京ドームのグラウンド約5個分という小さな島だが、江戸時代後期に石炭が発見され、明治23年からは三菱の手により、本格的な海底炭坑として良質な製鉄用原料炭を供給してきた。
防波堤がぐるりと島を囲み、高層アパートが立ち並ぶその外観は、当時三菱重工業長崎造船所で建造中だった日本海軍の戦艦「土佐」に似ていることから、大正時代に「軍艦島」のニックネームがついた。

出典:軍艦島デジタルミュージアム
最盛期には5,200人もの人々が暮らし、日本初の鉄筋コンクリート造りの高層集合住宅をはじめ、小中学校・購買部・飲食店・映画館・娯楽施設・病院などの都市機能に加えて、いかにも三菱らしく、当時の最先端技術で作られた電化製品が各家庭に配備されるなど、世界でも例を見ないような炭鉱都市としての栄華を誇っていた。
ちなみに当時の人口密度は「日本一」。実に東京の9倍を超えていたそうだ。
だが、石炭から石油へと転換した国のエネルギー政策の煽りを受けて、昭和49年に無念の閉山。
以降「無人島」となり、長らく放置されることになる。
廃墟が一転、世界文化遺産に!
ご承知の通り、「軍艦島」は2015年に「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成要素として世界文化遺産に登録された。
ただ「軍艦島」に関心を寄せる人の中には、「世界遺産」になったからというよりも、まるでマチュピチュのように「大繁栄から滅亡に近い道」を辿ったこの島の運命に、どこか惹かれるものを感じる人もあるだろう。
余談になるが、そもそも江戸時代後期の石炭と云えば、ペリー提督率いる黒船の燃料で、「黒船」と云えば坂本龍馬、「龍馬」と云えば亀山社中、そして「亀山社中」と来れば、三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎…
「軍艦島」が長崎に作られ、巡り巡って三菱が引き受けることになったというのも、きっと何かの縁に違いない。
軍艦島ツアーは5社が行っている
さて、本題に入るとしよう。
2025年4月現在、軍艦島ツアーを行っているのは、認可を受けた「軍艦島クルーズ株式会社」・「やまさ海運株式会社」・「株式会社シーマン商会」・「株式会社ユニバーサルワーカーズ(軍艦島コンシェルジュ)」の4社と、漁船の「第七ゑびす丸」の5件で、それぞれ1日2便ずつ、合計10便が軍艦島を往復している。
4社は長崎港から、「第七ゑびす丸」のみ軍艦島に近い野母崎から出港する。
実は、世界遺産登録後の軍艦島は、上陸しても上のマップの赤いラインを往復し、第1・第2・第3広場でガイドさんの説明を聞くしかできない。
ということは「ほとんどが見られない」に等しいわけだ。
そこで「島全体が見たい!」というリクエストに応えるべく、海上からの周遊ツアーが追加されたのだろう。
5社の詳しい比較と詳細は、以下のサイトで確認できる。
筆者が乗船したのは、軍艦島を「右回り」と「左回り」してくれる「やまさ海運株式会社」のマルベージャという船だが、実はこの「左右・両周り」がミソだ。
軍艦島の海域は晴れていても波が荒く、年間で100日ほどは上陸できない日があるという。
つまりこのツアーは、上陸できる日でもクルージング中にデッキの上を「立って歩く」ことが難しく、そのうえ満席ともなれば人の頭が邪魔で反対側の景色はほとんど見えない。
だが左右から周回すれば、どちらの席に座っていても「よく見えない」というリスクからは解放される。
行きに軍艦島がよく見えるのは、進行方向に向かって「右側」の座席。
しかしそこに座るには、まずチケット売り場に並んで、いち早く発券してもらい、次に速やかに船の前で並んで乗船開始と同時に乗り込み、狙いの席を確保しなければならない。
予約は乗船定員であることを保証してくれるだけで「指定席」ではない。
でもそこまでやるのは、よほどの人では?
それは大きな認識違い(笑)。
「国民総インスタグラマー時代」の人気スポット観光は、もはやどこもが「行列のできるラーメン店」と変わらない。
船からは、「見学不能」の世界遺産が見られる
冒頭で、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」 の話に少し触れたが、実は長崎には「軍艦島」のほかに、旧グラバー邸など8つの構成要素がある。
その中の「長崎造船所 ジャイアント・カンチレバークレーン」は見学不可なのだが、この船からならよく見える。
また、三菱長崎造船所の様子もよく見えるが、肝心の「第三船渠」は認識することができなかった。
実は、これらは対岸にあるグラバー園からも見ることができるのだが、せっかく大枚をはたいて乗るのだから、クルージングの出だしから「世界遺産見物」を存分に楽しもう。
車中泊旅行者にとっておきの朗報
最後は、キャンピングカーはもとより、ハイルーフ車やルーフボックスを積んだマイカーで、軍艦島を訪れる人に向けた「耳寄りな話」を記載しよう。
軍艦島ツアーのサイトを見ると、クルマは長崎港ターミナル横の県営駐車場に置くよう案内されているが、行ってみるとそこは「やはり」立体駐車場だった。
「やはり」というのは、かつて「ランタン・フェスティバル」で長崎を訪れた際にも、同様の説明で苦い思いをしたことがあったからだ。
そのため今回は、こういう事態を予測して、出港の2時間近く前に現地入りし、駄目なら近くで駐車可能な平面駐車場を探そうと思っていた。
読者の中には、なぜ事前に電話で「近くの平面駐車場の場所」を確認しないのか?
と思う人がいるかもしれないが、筆者のハイエースの車高は約2.4メートル、それに対し、平面駐車場の高さ制限は、高いところでも2.3メートルまでが大半だ。
つまり「数値上は入庫できない」。
そのため探してもらっても、「入れる駐車場は見つかりません」という返事が返ってくるのは当然だ。
その返事は間違いではないのだが、正しいとも限らない…(笑)。
実際は写真の通り、スレスレの程度に多少の差はあれど、まあ必ずといっていいほど停められる。
しかしそれは、このページのようなサイトを見つけるか、現地に行って確かめる以外には知る由もない話だろう。
というわけで、有料だが車中泊もできる長崎市内の平面コインパーキングを紹介しておこう。
ただし、現在ここは植木の問題でキャブコンは駐車禁止になっている。
なので上の記サイトには、その代替え駐車場の情報も記載しておいた。
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