「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。

「長崎鼻」は、薩摩半島の最南端にある岬
「道の駅 道の駅山川活お海道」から約11キロ・クルマで15分のところにある長崎鼻は、薩摩半島の最南端に位置する岬で、岬及び周辺の海岸線一帯が霧島錦江湾国立公園に属している。
岬の展望台からは、西方面に海越えの開聞岳が望め、また晴天時には遠く屋久島の宮之浦岳や硫黄島が見える日もあるという。
その長崎鼻一帯の砂浜には、今でもウミガメが産卵のために上陸する。
この写真は和歌山県の千里浜で撮影したものだが、ウミガメの産卵と云えば屋久島が有名。実は鹿児島県には、日本で産卵する全ウミガメの半数以上が上陸すると云われている。
ウミガメが産卵する場所は、近くに豊かな漁礁があり、カメの餌が豊富にあること、 また外敵が少なく安全で、孵化した赤ちゃんガメが無事に海に戻れるような、砂浜が広がっていることが挙げられる。
裏返せば、ウミガメが上陸する海岸には、海の幸を育む豊かな自然がある。
ゆえに昔から漁師や釣人達は、海の守り神としてウミガメを保護し、神話や伝説とあいまって、浦島太郎や乙姫を祀って信仰する風習が、日本各地に根付いていった。現在の日本には、浦島太郎伝説が残る有名な場所が7ヶ所ほどある。
そして、御多分に洩れず、長崎鼻にも竜宮神社が鎮座する(笑)。しかもここには、長崎鼻を「竜宮伝説の発祥の地」と記してある。
信じる信じないは、貴方に任そう。
筆者はパワースポットとか、縁結びの御利益といった、近代になってからこじつけられた話にはまったく興味はない。
まして、こういう下世話な商売を見ると、目を背けたくなる(笑)。
気の毒なことに、浦島太郎も金儲けのダシにされている始末…
少なくとも伊勢神宮や出雲大社では、こういうものは見かけない。
たぶん「信仰」と「商売」は対局に位置するもので、それがきちんと維持されているのは地元の人々のおかげだ。
だが、そういう世俗的なものに目を瞑れば、ここには素晴らしい景観がある。
彼女の目に映っていたのは、
なんと「鶴」。
この時は12月だったが、同じ鹿児島県にある越冬地の「出水」を目指す群れが、長崎鼻の沖を通っていった。