経験豊かな「車中泊旅行家」が、道後温泉で本当に食べたものと食べた店を紹介しています。
「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊グルメガイド

この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国各地のソウルフードの素材・レシピ・老舗・行列店等を紹介しています。

~ここから本編が始まります。~
筆者が紹介しているのは、ソウルフードと地酒と特産品。
テイクアウトは「道後ハイカラ通り」と「道後温泉本館」界隈で。

筆者が人気グルメを追わない理由
筆者に「もっとグルメ情報を増やしてほしい」とリクエストする人は少なくない。
しかし年金受給者となった筆者に、今やそれは難しい相談で、食欲・時間・金銭など、「Food Crawl」に必要なすべての要素が欠乏している(笑)。
加えて、飲食店のメニューはコロコロ変わるし、店そのものがなくなることも珍しくはなく、手間暇かけて紹介した情報を維持することが難しい。
例えばこの「にきたつ庵」は、「道後温泉」でいちばんお気に入りの店で、以前は食レポも掲載していたが、コロナ禍で店じまいし、今は業態転換している。
サイトを見て現地まで行って、その店がなかった時は、ホントにがっかりするし、「ちゃんと調べとけよ!」と思っちゃうからねぇ~(笑)。
ここ最近、そういうサイトを始めた人はいいが、筆者のように大半が10年以上前からやってる店の場合は、コロナ禍を乗り切れなかったところも少なくはない。
とはいえ、
中にはソウルフードや地酒などの『普遍的で紹介する価値あり』と思うものもある。
なので実際に買って食べたものと、暖簾をくぐった店で食べた料理の中から、そういう品々をできるだけ選びながら記事にしている。
テイクアウトは「道後ハイカラ通り」と「道後温泉本館」界隈で。
両端にズラリとお土産店が軒を並べる「道後温泉」の目抜き通りは、「道後ハイカラ通り」と呼ばれる約250メートルのアーケード街で、「道後温泉本館」から「放生園」まで続いている。
雨風だけでなく直射日光も避けられる「道後ハイカラ通り」は、「道後温泉」での湯冷ましを兼ねた「そぞろ歩き」に最適だ。
また「道後温泉本館」界隈にも、有名店が並んでいる。
道後温泉名物「坊っちゃん団子」
「坊っちゃん団子」とは、上から抹茶・卵・小豆と色の違う団子を3個串刺しにしたもので、「道後ハイカラ通り」だけでなく、松山市内各地の土産物屋、ホテル・旅館、駅・港・空港の売店などで広く売られている。
そのルーツは、夏目漱石の小説「坊っちゃん」に、「大変うまいと云う評判だから、温泉に行った帰りがけに一寸食ってみた」と書かれた、赤餡と白餡の団子を三つ串に刺した「湯ざらし団子」にあるらしい。
ただ「坊っちゃん団子」と呼ばれるようになったのは、昭和に入ってからのようだ。
「坊っちゃん団子」は松山市内のいくつかの製菓会社で造られているが、もっとも早く世に出したのが、道後温泉街にある「つぼや菓子舗」とされる。
ただ現在、お土産屋・売店で一番よく売られているのは「うつぼ屋」のもので、食べやすいように、一本ずつ小型のトレイに入れた2本パックが、手頃で食べ歩くには適しているのだろう。
柚子餡の松山銘菓「十六タルト」
タルトといえば、『皿状にした生地にフルーツなどを盛りつけた焼き菓子』のタルト(tarte)が一般的だと思うが、愛媛県では薄く焼いたカステラ生地で、餡を巻いて作るロールケーキをタルトと呼び、そのルーツはラテン語の「焼き菓子」を意味するトルテ(torta)にあるという。
愛媛県のタルトは、長崎探題職を兼務していた松山藩主「松平定行」が、ポルトガル船の持ち込んだ南蛮菓子に接し、その味にいたく感動したことから、製法を松山に持ち帰ったと云われている。
餡入りのタルトは「定行」が独自に考案し、その後家伝とされたが、明治以降は松山の菓子職人の間に技術が伝わり、愛媛の銘菓となった。
中でも有名なのが、松山市に本社を置く「㈱一六本舗(いちろくほんぽ)」の商品で、生柚子入りの「こし餡」をスポンジで巻いている。
旅先で部屋やクルマに持ち帰って食べるには、写真の「一切れタルト」がいい。
ちなみに、「㈱一六本舗」は明治16年の創業で、社名の「一六」は創業年に由来しているそうだ。
「道後温泉」界隈には2軒の「一六本舗」の店があるが、浴衣姿の温泉客で賑わっているのは、店内に休憩スペースを持つ、本館側の商店街入口横にある「道後本館前店」だ。一階は売店、二階はカフェ「一六茶寮」になっている。
揚げたての「じゃこカツ」がテイクアウトできる、谷本蒲鉾店
「じゃこ天」は愛媛県の八重浜や宇和島など、南予地方の海岸部で作られている特産品で、近海で獲れたホタルジャコを生のまま骨ごと摺りつぶし、油で揚げたものだ。
松山では特に珍しいわけでもなく、たいていのスーパーに置いている。
「道後温泉本館」に近い「坊っちゃん広場」の前にある「谷本蒲鉾店」は、蒲鉾専門店なのだが、一番人気はその「じゃこ天」をカツにした「じゃこカツ」だ。
理由は、注文してから揚げてもらえるので、アツアツが食べられると多くのガイドブックは説明している。
だが筆者は、『ちょっと違うのでは?』と思っている。
チューハイのCMじゃないが、「じゃこカツ」はビールに合う!
『百聞は一食に如かず』ということで、
ぜひお試しを(笑)。
夜食にお勧め! 「うなぎ小椋」の100円焼きおにぎり
「道後ハイカラ通り」にある「うなぎ小椋」は、店頭でうなぎのタレで焼いた温かいおにぎりがテイクアウトできる。
筆者は大阪在住なので、甘めのタレを期待していたのだが、出てきたのは関東系のあっさり味で、ちょっと驚いた。
それはタレに頼らずとも勝負ができる、ちゃんとした素材を使っている証だろう。
中には少しだが具も混じっている。
店主は愛想もよく、ちゃんと温めてくれて1個100円はすこぶるリーズナブル。
もちろん夕方には売り切れているので、早めに手に入れておこう。
電子レンジがあるキャンピングカーなら、いい夜食になりそうだ。
湯あがりにグビッ!と行くなら、「道後麦酒館」。
「道後麦酒館」は、「水口酒造」が作る「道後ビール」の直営店で、「道後温泉本館」を出てすぐ右手にあり、温泉でひとっ風呂浴びた後にこの誘惑は堪らない。
案の定、店内には夕食前の旅館泊まり客の姿も多く、筆者のような車中泊の旅人を含めて大盛況だった。
自慢のビールは、坊っちゃんビール(ケルシュ)・マドンナビール(アルト)・漱石ビール(スタウト)・のぼさんビール(ヴァイツェン)・湯上がりIPA(セッションIPA)の5種類。
250ミリリットルのグラスで800円、ジョッキは1500円と、けして安くはないのだが、皆さん観光地の許容範囲と見ているのだろう。
筆者がオーダーしたのは、この「坊ちゃんセット」。
伊予地鶏の皮焼に、このあたりで「せんざんき」と呼ばれる鶏の骨付き唐揚げなどが入った盛り付け皿と、250mlのグラスで、好きな道後ビールを選ぶことができたのだが、2024年のメニューにはもうない。
ビール・料理ともに味はそれなりといったところで、旅の記念に雰囲気を味わう意味では及第点だろう。
なにせ、ここはBarなのだから…
ちなみに道後ビールは、「道後ハイカラ通り」のお土産屋さんでも、ローソンでも手に入る。「家飲み」ならぬ「車内飲み」派には、それもありだ。
Ps 鯛めし
最後に、道後温泉のソウルフードと云われる「鯛めし」の話を。
愛媛県は真鯛の生産量日本一で、養殖真鯛の国内シェアはなんと50%強。実に国内産の養殖真鯛の2匹に1匹は、愛媛産という計算になる。
ゆえに愛媛の郷土料理が「鯛めし」なのは不思議ではないが、実は地域によって食べ方が違っている。
松山市を中心とした中予~東予地方の「鯛めし」は、焼いた鯛を昆布だしでふっくら炊き込んだ「松山鯛めし」。
それに対して、宇和島市を中心にした南予地方の「鯛めし」は、生卵入りのタレに漬けた鯛のお刺身を、タレごと温かいごはんに掛けていただく。
筆者はそれを知って3軒の店で両方注文してみたが、正直どれもあまり口に合うものではなかった。
猟師のように、毎日の食事が鯛というなら別だが、旅人には鯛はシンプルに刺身がいちばん旨いね(笑)。
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