四国の名湯「道後温泉」の、”車中泊クルマ旅ならでは”と云える楽しみ方を、経験豊かな「車中泊旅行家」がご紹介。
「クルマ旅のプロ」がお届けする、車中泊で訪ねた名湯レポート
この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国の温泉地の車中泊事情や温泉情緒、観光・グルメにいたる魅力を再評価し、「車中泊旅行者目線」から紹介しています。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
~ここから本編が始まります。~
道後温泉は、日本書紀にも登場するわが国最古級の温泉
「道後温泉」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2010.07.08
2011.01.23
2012.03.17
2012.11.23
2013.10.13
2014.01.16
2016.01.01
2018.05.10
2019.02.05
※「道後温泉」での現地調査は2019年2月が直近で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2024年11月に作成しています。
道後温泉・本館改修工事は2024年7月に完了
2019年1月15日に開始された、国重要文化財「道後温泉本館」の保存修理工事は、当初は2024年12月までの予定だったが、約半年早く2024年7月11日に完了し、現在は全館での営業が再開されている。
道後温泉の概要と車中泊事情

車中泊で行く道後温泉
居心地度・総合評価 4.0
1.車中泊好適地度:○
2.滞在好適度:○
3.湯めぐりサービス度:✕
4.温泉情緒度:○
5.名湯・秘湯度:○
総合:4.0 ○○✕○○
ワンポイント・アドバイス
●名湯「道後温泉・本館」のほかに、「椿の湯」と2017年に新たにできた「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」の3つの公衆浴場の外湯めぐりが楽しめる。
●「道後温泉・本館」前の冠山頂上にある市営有料駐車場には、夜間割引があって車中泊が可能。
●道後温泉がある松山市内には、夏目漱石の「坊っちゃん」と司馬遼太郎の「坂の上の雲」にちなんだ歴史名所が数多くあり、観光には事欠かない。
●道後温泉駅から本館に通じる「道後ハイカラ通り」には、「一六タルト」や「鯛めし」専門店、さらに「砥部焼」などの松山の名産品・特産品を売る店が揃っている。
道後温泉の歴史と概要
「道後温泉」は、鎌倉時代後期に編纂された「釈日本紀(伊予国風土記逸文)」に、
出雲の国の「大国主命」と「少彦名命(すくなびこなのみこと)」が伊予の国を旅した時、急病に苦しむ「小彦名命」を道後温泉の湯に入浴させると、たちまち元気を取り戻し、この石の上で踊りだした。
という神話の記述が残る、”日本最古級”の温泉地だ。
そのため日本最古の温泉は、古文書からすると「道後温泉」、伝説的要素を除いた「状況証拠」から考察すると、和歌山県の「湯の峰温泉」になるという。
また「大国主命」が登場してくる神様の時代に遡れば、「道後温泉」・島根県の「玉造温泉」・兵庫県の「有馬温泉」の3ヵ所が「日本三古湯」に該当し、客観的な事実と見られる根拠から判断すると、「道後温泉」「有馬温泉」「白浜温泉」の順に並ぶらしい。
もっとも…
温泉は『古ければ古いほどいい』わけではないので、それはそれとして(笑)。
なお神代の時代からの「道後温泉」の歴史に興味がある方は、以下のページをご覧いただくのがいいと思う。
さて。
「これから道後温泉のことを知ろう」という人のために補足すると、正しい「道後温泉」の定義は、33軒の宿泊施設と3つの外湯を持つ温泉地だ。
だが一般的に「道後温泉」と呼ばれているのは、外湯のひとつである「道後温泉本館」の場合が圧倒的に多い。
しかし、それでは片手落ち。
ということで、ここでは正しい定義にしたがい、それぞれの魅力を紹介していこう。
道後温泉のお湯

出典:松山市
「道後温泉」は周りに火山のない、「非火山性温泉」の典型例とされている。
ここでは地下1000~1500メートルにあるアルカリ性の深層地下水を、深さの異なる18本の源泉口から汲み出し、20~55度と温度差のあるお湯を、加水・加熱することなく、季節に応じた適温に保つためのブレンドを施している。
温度調整されたお湯は集中管理され、「道後温泉本館」と「椿の湯」「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」をはじめ、周辺のホテル・旅館へ配湯される。
つまり「道後温泉街」の施設は、「城崎温泉」や「下呂温泉」と同じく「単一」の泉質で、「箱根温泉」や「別府温泉」のように、異なる泉質を持つお湯場をめぐるような楽しみ方はできない。
そう云われると…
ますます「道後温泉本館」に入ってみたくなるのが、「人の子」だ(笑)。
道後温泉本館 利用ガイド
「道後温泉本館」は、温泉街の中心にある共同浴場で、戦前に建築された歴史ある近代和風建築として、国の重要文化財に指定されている。
しかし、それゆえに現代の「耐震基準」を満たしてはいなかった。
そこで松山市は、2019年1月15日から「道後温泉本館」の保存修理工事に着手し、およそ4年半後の2024年7月に、無事リニューアル・オープンを果たしている。
重厚感があってどこかレトロな雰囲気が漂う、重要文化財「道後温泉本館」の外観は、改修工事前とほぼ変わらず、懸念していた安全性が担保されたとあっては、以前にも増して、一刻も早く中に入りたくなるのは当然だ。
だが、館内には”知らなければ損”と云える「見どころ」がたくさんあり、それを最初に「予習」しておくと、「道後温泉本館」の印象は大きく変わる。
いっぽう「道後温泉」では、
「本館」工事に着手する前の2017年に、地域住民用に設けられていた「椿の湯」の隣に、新たな道後温泉別館 「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」をオープンしている。
「飛鳥乃湯泉」は「本館の代替え施設」というよりは、新たなコンセプトで再構築した温泉館と呼ぶほうがふさわしい。
この2つについては、公式サイトで詳細を確認していただくとしよう。
道後温泉界隈の、食べどころと見どころ
両側にズラリと店が軒を並べる「道後温泉」の目抜き通りは、「道後ハイカラ通り」と呼ばれる約250メートルのアーケード街で、「道後温泉本館」から駅前にある「放生園」まで続いている。
「道後ハイカラ通り」にはお土産屋と飲食店はもちろん、コンビニもあり、雨の日はここでほとんどの所用を済ませることが可能だ。
また「道後温泉本館」の界隈にも、人気のあるお店が揃っているが、グルメでは愛媛の名産「鯛」を筆頭に、地ビールや菓子類まで、一度は食してみたいソウルフードが目白押しだ。
続いては、食事と温泉の間の時間に訪ねてみたい「道後温泉」周辺の見どころを。
別名「坊っちゃん湯」と呼ばれる「道後温泉本館」の周辺には、松山中学の英語教員だった「夏目漱石」が、赴任時代の経験をもとに描いた、代表作「坊っちゃん」ゆかりの見どころがたくさんある。
ここで全部紹介するにはちょっと話が長くなるので、詳細は別記事にまとめているが、実態は「坊っちゃん」と云うより、『文豪・夏目漱石ゆかりの場所』と呼ぶほうが相応しい場所も多く、事実に基づく本当の話が知りたい人にお勧めだ。
合わせて観たい、松山の町
「いで湯と城と文学の町」は、「松山市」の観光PRで用いられているキャッチフレーズだが、「道後温泉」の広域観光事情は、「松山市」のそれとほとんど変わらない。

出典:NHK
「松山」といえば、俳句の”中興の祖”と呼ばれる「正岡子規」の故郷だ。
しかし「司馬遼太郎」の傑作「坂の上の雲」を知る人にとっては、「子規」の幼馴染みで、「日露戦争」を陸と海から勝利に導いた「秋山兄弟」の存在は欠かせない。
ただ「松山」の町はコンパクトにまとまっているので、クルマがあれば1泊2日で十分すべてを堪能できる。
道後温泉の車中泊事情
「道後温泉」はこじんまりとした温泉地で、現状通り「道後温泉(冠山)駐車場」が使えれば特に不自由することはない。
ただし、周辺には道の駅もRVパークもなく、公衆トイレを併設する無料の駐車場も見当たらない。
つまり事実上、この「道後温泉駐車場」が唯一の車中泊場所になる。
すなわち、ここが何らかの理由で車中泊禁止になれば、即「致命傷」になるだけに、今後も予断は許されないのだが、筆者が知る2010年以来、『今日まで禁止にならずに済んでいる』こと自体が、ある意味では驚きと云っていい(笑)。
それにしても…
なぜ誰も「道後温泉本館」界隈に、RVパークを作らないのかが不思議。
徒歩圏内なら10台以上の規模を構えても、採算が合いそうに思えるのだが…
車中泊で楽しむ、道後温泉
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