25年のキャリアを誇る車中泊旅行家が、四国の東の玄関にあたる「鳴門」の見どころと車中泊事情を紹介しています。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド

この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国各地の「クルマ旅にお勧めしたい観光地」を、「車中泊旅行者目線」からご紹介しています。

~ここから本編が始まります。~
いちばんの「鳴門」の見どころは、大鳴門橋の袂にある。
「鳴門」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2011.05.05
2012.11.25
2018.05.13
2022.12.28
2025.02.08
「鳴門」での現地調査は2025年2月が最新です。
鳴門の見どころと車中泊事情
鳴門市のロケーションと概要
1985年6月8日に、淡路島と四国を結ぶこの「大鳴門橋」が開通して以来、「鳴門」は京阪神方面から四国を訪れる旅人の、『東の玄関口』になっている。
とはいうものの、
車中泊の旅人は、先に多種多様なコンテンツに恵まれた「淡路島」を通ってくるため、そこで時間を費やすことになり、すぐまた「鳴門」で高速道路を降りて、観光しようと思う人は残念ながら多くはない。
そんな旅行者心理については、以下の記事で詳しくふれている。
だが「うずしお」が巻く「鳴門海峡」は、「淡路島」より「鳴門」から眺めるほうが、環境はよく整っている。
ということで、まずはその展望スポットの紹介から始めていこう。
鳴門公園

出典:うずしおぐるぐる
徳島県側の鳴門海峡周辺は、「鳴門公園」として整備されている。
「鳴門公園」には、「鳴門山展望台」「千畳敷展望台」「孫崎展望台(孫崎灯台)」「お茶園展望台」の4つの展望台があり、高さや角度を変えて「大鳴門橋」や「鳴門海峡」を眺望できる。
加えて、園内にある有料施設の「大鳴門橋遊歩道 渦の道」には、「鳴門のうずしお」が間近で見られるチャンスもある。
以下の記事には、「鳴門公園」の各展望台から見える景観はもとより、その駐車場事情からソウルフードの食レポにいたる、詳しい情報を収録している。
大塚国際美術館
「鳴門公園」と合わせて、徳島県における『観光スポットの”双璧”』と呼べるのが、「大塚国際美術館」だ。
「大塚国際美術館」は、鳴門に本社を構えるポカリスエットでお馴染みの「大塚製薬」が、創業75周年の記念事業として創設した「陶板名画美術館」。
日本最大級の常設展示スペースを持つ館内では、ミケランジェロの「最後の審判」、レオナルド・ダ・ビンチの「モナリザ」、モネの「睡蓮」、さらにフェルメールの「真珠の首飾りの少女」など、厳選された古代壁画から、世界26ヶ国・190あまりの美術館が所蔵する、至宝の西洋名画・約1,000点を、心ゆくまで鑑賞できる。
ただし当サイトでは展示されている名画の紹介ではなく、「大塚国際美術館」の『くたびれない周り方と駐車場情報』を筆頭に、創設された経緯と建設秘話、さらに「陶板名画美術館」の魅力と存在意義に関する内容に、重きをおいた紹介記事を用意している。
その他の見どころ

出典:徳島市公式観光サイト
阿波おどり会館
『いつでも楽しめる阿波おどり』をコンセプトに、1999年7月に開館した「阿波おどり会館」は、「阿波おどり」関連の展示とその公演を行う専用施設だ。
後述する「徳島城」の中でもふれている通り、「阿波おどり」のルーツは徳島城下の盆踊りにあるとされており、今でも例年8月12日から15日に開催されている。
そのため、車中泊で生本番を観るのは至難の業だが、この施設の中にある「阿波おどりホール」では、専属連の踊りを見学し、その後一緒に踊ることができるほか、「阿波おどりミュージアム」では祭り本番の様子を映像で紹介している。
また1階は、徳島県の特産品や、藍染・大谷焼などの伝統工芸品、そして「阿波おどり」の関連商品などが並ぶショップ「あるでよ徳島」になっており、午後9時まで営業(ただし夜のおどり休演日は18時まで)している。
阿波おどり会館
☎088-611-1611
阿波おどりホール
おとな1300円(20025年4月以降)
阿波おどりミュージアム
おとな300円・9時~17時
徳島城
日本100名城に名を連ねる「徳島城」は、もともとは「細川頼之」が築城した城だが、その後「三好氏」「長曽我部氏」を経て、1585年(天正13)年に「豊臣秀吉」の忠臣「蜂須賀小六」こと「蜂須賀正勝」の嫡男「家政」が、「秀吉」から阿波国を与えられたのち、修築してその居城となった。
その「家政」が「徳島城」の完成に際し、城下に「祝いとして、好きに踊れ」という触れを出したのが、今日の「阿波踊り」の始まりとも云われている。
「蜂須賀氏」は「豊臣」というより『秀吉の忠臣』であったため、「石田三成」とは反りが合わず、「関ヶ原の戦い」では「家政」の嫡男「蜂須賀至鎮(よししげ)」が東軍で出陣し、「大坂夏の陣」でも戦功をあげたことで、家康から旧領安堵のうえ、新たに淡路国を与えられている。
その後、阿波・淡路両国を統治する「徳島藩主」となり、約290年間君臨して明治に至るが、「徳島城」は1873年(明治6年)年に公布された、「廃城令」によって取り壊された。
「徳島城」の跡地は「徳島公園(のちの徳島中央公園)」となり、1941年(昭和16年)に「徳島城表御殿庭園」が国指定の名勝に、2006年(平成18年)には「徳島城跡」が国の史跡に指定されている。
「蜂須賀小六(正勝)」は、若い頃から「秀吉」とは切っても切れない間柄なので、2026年放送予定の大河ドラマ「豊臣兄弟!」でも必ず登場すると思う。
ゆえに2026年には「徳島城」が話題にのぼるかもしれないが、「徳島城跡」そのものには、今のところ観光客が見ておもしろいと感じるところは見当たらなかった。
お遍路とは…
「鳴門」の近くには、「四国八十八箇所霊場」の一番札所にあたる「霊山寺(りょうぜんじ)」があり、季節を問わず白装束の「お遍路さん」の姿が絶えない。
ということで、「お遍路」についても説明しておこう。
彼らがめぐる「四国八十八箇所」とは、四国にある「空海」ゆかりの八十八箇所の仏教寺院の総称で、それを巡礼することを「四国遍路」あるいは「遍路」といい、巡礼者のことを親しみを込めて「お遍路さん」と呼んでいる。
「空海」が42歳のときに開いたと伝えられる「四国霊場」をめぐる歴史は、平安時代の修行僧や修験者による「空海」の聖地巡礼がルーツで、室町時代から江戸時代初期にかけて一般庶民にも広がり、「弘法大師信仰」が高まった。
そのムーブメントは現代に引き継がれ、2015年(平成27年)には「日本遺産」として認定されている。

ちなみに「四国八十八箇所霊場」の参拝は「打つ」と呼ばれ、約1200キロにも及ぶ厳しい道のりを、徳島県にある一番札所からまわることを「順打ち」と云う。
この笠に書かれた「同行二人」の文字は、「弘法大師」と自分のふたりで旅をするという意味で、「遍路」に必要な衣装と道具は、霊場だけでなくサービスエリアなどでも販売しているからおもしろい。
ところで、なぜお遍路は白装束なのか?
まず仏教では、白を清浄や純粋を意味する色としている。
また「遍路」が旅修行の厳しさや深い信仰を象徴することから、一説では『旅の途中で命を落としても構わないという覚悟』を示すためだと云われている。
それを鑑みると、
その気もない観光客が、興味半分にこの小さな霊場を訪ねるのはどうかと思う。
もし「四国八十八箇所霊場」に関心があるなら、香川県にある75番札所「善通寺」がお勧めだ。
「善通寺」は「弘法大師」が生まれた大きな寺院で、お遍路さん以外の観光客も数多く訪れている。
鳴門のソウルフード 徳島ラーメン
「徳島ラーメン」といえば、この豚骨醤油ベースのスープが有名だが、地元ではその「茶系」のほかに、「黄系」「白系」の3つのスープの系統で人気の店を紹介していることが多い。
豚骨醤油スープでラーメンに系統があるのは、紀伊水道を挟んだ隣県の和歌山ラーメンと共通している。
徳島ラーメンの特徴は、醤油・砂糖・みりん・酒などで甘辛く味付けした豚バラと生卵のトッピングにある。
ただ県民に聞くと、生卵はスープが濃く感じてきた時にだけ入れるらしい。
また元々「おかず」としてご飯といっしょに食されていたとのことで、量は他のご当地ラーメンよりも少なめに感じた。
写真は1999年に「新横浜ラーメン博物館」に出店し、徳島ラーメンを全国に広めた、「いのたに本店」の”中華そば肉入中盛800円”に、生卵50円をトッピングしたもの(2023年5月時点の料金)。
中華そば いのたに本店
☎088-653-1482
10時30分~17時(売切次第終了)
実際は10時30分よりもっと早く開店し、10時30分には満席になっていることも。筆者が入店したのは朝9時45分だった。
月曜定休
駐車場あり 35台
ついでに紹介すると、
「金ちゃんラーメン」は徳島製粉のロングセラー商品で、発売は昭和42年。
昭和33年に誕生し、朝ドラの「まんぷく」で取り上げられた日清のチキンラーメンには敵わないが、大阪育ちの人なら子供の頃から慣れ親しんできた往年のインスタント食品だ。
さすがに大阪のスーパーでもほとんど見かけなくなったが、「鳴門」にくればこんな限定アイテムも手に入る。
鳴門の車中泊事情
かつて鳴門海峡周辺には、「道の駅 第九の里」しか道の駅がなかったが、2021年に「道の駅 いたの」、2022年に「道の駅 くるくるなると」がオープンしたことで、車中泊環境は大幅に向上している。
中でも「道の駅 いたの」は、規模も大きく設備も充実していて車中泊にもお勧めだ。
ただし「道の駅 第九の里」は、設備も古く、駐車場にも傾斜があるので、車中泊にはそぐわない。
とはいえ、ドイツとの関わりには知られざる歴史があるので、立ち寄ってみるのはいいと思う。
その他では、「大鳴門橋」がビーチから望める「千鳥ヶ浜」の前に、無料で車中泊ができる「網干駐車場(休憩所)」がある。
またその近くには、1泊1台2500円の「通常プラン」に加えて、ゴージャスな6000円のプレミアムプランを持つ、「RVパーク 鳴門天然温泉あらたえの湯」もある。