25年のキャリアを誇る車中泊旅行家がまとめた、青森県の十和田湖・奥入瀬渓流・八甲田山を車中泊でめぐりたい人に向けた情報です。
「正真正銘のプロ」がお届けする、リアル車中泊旅行ガイド
この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国各地の「クルマ旅にお勧めしたい観光地」を、「車中泊旅行者目線」からご紹介しています。

~ここから本編が始まります。~
ポイントは、奥入瀬渓流へのベストなアプローチ・ルートを辿ること

「奥入瀬渓流」の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2009.07.18
2010.08.29
2011.10.25
2013.08.14
2015.07.15
2024.10.20
※「奥入瀬渓流」での現地調査は2024年10月が最新で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2025年10月に更新しています。
十和田湖・奥入瀬渓流・八甲田山 車中泊旅行ガイド

奥入瀬渓流のロケーションと、紅葉シーズンのベスト・アプローチルート
奥入瀬渓流のロケーションと、紅葉シーズンのベスト・アプローチルート

杉や檜の植林が少ない東北地方には、自然林が多く残り、秋には色鮮やかな紅葉絵巻が各地で見られるのだが、とりわけ気品に満ちた「奥入瀬渓流」は別格だ。
ゆえに、いかにしてうまくその「奥入瀬渓流」に辿り着くか…
この旅のおもしろさはそこにある。

紅葉シーズンの場合、このルートの”前哨戦”となるのは、秋田県と岩手県にまたがって広がる「八幡平」だろう。

近頃は紅葉より、初夏に見られるこの「ドラゴン・アイ」で有名だが、「日本百名山」に名を連ねる「八幡平」を、縫うように走る「アスピーテ・ライン」の最大標高は1500メートル近くあるため、標高約200メートル地点を流れる「奥入瀬渓流」より、ひと足早く紅葉のピークを迎える。
その「八幡平」を見た後の、「奥入瀬渓流」へのアクセスルートが以下になる。

ところで。
ツアーや公共交通機関を使う旅行と、自らハンドルを握って進むクルマ旅とのいちばんの違いは、”点と線”だ。
極端に云えば、ツアーや公共交通機関を使う旅行は、乗り物に乗れば”勝手”に目的にまで連れて行ってもらえる。
すなわち旅人は、観光スポットという”点”だけを旅しているわけだが、自らハンドルを握って進むクルマ旅は、移動中もまた旅になる。
そもそも、前者は移動ルートを自ら選ぶことが難しいうえに、背景にはどうしても日程とコストが強く影響してくる。

だが我々は、”寄り道”も”道草”も自由。
そしてそのためには、多少”無駄遣い”したってかまわない(笑)。
それこそが、車中泊クルマ旅の特権「ロード・トリップ」の醍醐味なのだ。
1st STAGE/十和田湖

山は富士、湖は十和田湖、
広い世界にひとつずつ
これは紀行文作家の「大町桂月」が、「十和田湖」の美しさを評した有名な句だ。
「十和田湖」は、青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがって広がる湖で、広さは国内で12番目だが、深さでは「田沢湖」「支笏湖」に次いで第3位にランキングされている。
最大深度は327メートル、それが神秘を感じさせる青さの源になっている。

上の写真は、標高631メートルから見下ろす「十和田湖」随一の呼び声が高い、この「発荷峠第一展望休憩所」から撮影した。

十和田湖国立公園協会
「発荷峠第一展望休憩所」にはトイレがあるので車中泊も可能そうだが、2024年10月に、約3.2キロ・クルマで5分ほど下った湖畔に「道の駅十和田湖」がオープンしており、車中泊をするならそちらのほうが確実だ。
秋田県側の「八幡平ビジターセンター」からは、下道で約65キロ・クルマで1時間30分ほど。
また紅葉のピーク時に、「奥入瀬渓流」へのパーク&バスライドの乗り換え駐車場になる「奥入瀬渓流館」までは約26キロ・40分と、”旅の宿”に利用するにはちょうどいい場所と云えるだろう。
なお「十和田湖畔」を歩くなら、乙女の像と十和田神社のある「休屋(やすみや)」エリアのほうが感慨深い。

「十和田湖」に突き出た「中山半島」の湖畔にひっそりと立つ「乙女の像」は、「高村光太郎」の遺作だ。

「坂上田村麻呂」が創建したと伝わる「十和田神社」。江戸時代には恐山と並ぶ北東北の霊場として信仰を集めたという。
2nd STAGE/奥入瀬渓流

お楽しみの「奥入瀬渓流」については、その撮影方法から車中泊事情に至るまで、別の記事に詳しくまとめている。
それだけでも十分な旅行ガイドになると思っているが、
「奥入瀬渓流」が美しいのは、筆者が重ねて云わなくても、もう誰もが十分に分かっている話かもしれない(笑)。

映像・雑誌・ウェブを問わず、ありとあらゆる「奥入瀬渓流」の観光ガイドには、腕の確かなプロカメラマンが、時間とお金を費やして撮影した、「息を呑むほど美しい写真」が掲載されている。
ただ…
旅人は『本当に知りたい情報』を探す中で、似たりよったりの写真ばかりを否応なしに見せられているわけで、実はもうそれには感動するどころか、辟易している…
少なくとも、かつての筆者はそうだった。

あなたが知りたいのは、奥入瀬渓流を柔らかな絹糸が流れるように撮る方法と、必要以上にくたびれない散策のルートでは?
この記事はその想いから綴られたものだ。
さて。
「奥入瀬渓流」の「石ヶ戸(いしけど)」から「子ノ口 (ねのくち)」までの約9キロは、ゆっくり歩いて3時間、写真を撮りながらでも4時間あれば十分足りる。
そこで午後からは、八甲田山の麓に湧く名湯に、足の疲れを癒やしに行こう。
3rd STAGE/名湯めぐり

最初に紹介するのは、「奥入瀬渓流間」から6キロほどのところにある、”千年の秘湯”「蔦温泉旅館」だ。

名前は初めて聞くかもしれないが、この温泉宿を舞台にしたフォークソングの名曲を知らない中高年は、まずいない。
♪浴衣の君は すすきのかんざし~♪
続いて、八甲田山にある温泉宿の代名詞的存在とも呼べる「酸ヶ湯温泉旅館」へ。

その名の通り、強酸性の泉質にはしっかりと硫黄臭が宿っているが、実は鹿湯が訛って酸ヶ湯と呼ばれるようになったという。
ここはすぐ近くに、電源付きのオートキャンプサイトに加えて、トイレのある無料駐車場があり、どちらでも車中泊が可能だ。
なので”温泉はしご”が辛ければ、翌朝に楽しむという手もある。
ただし、周辺にはまったく店がないので、飲食物は忘れず持ち込もう。
Final STAGE/八甲田山

日本百名山に名を連ねる「八甲田山」は、大雪山と同じく単独峰が存在しない。
標高1584メートルの大岳を筆頭に、前岳、田茂萢岳、赤倉岳、井戸岳、硫黄岳、石倉岳、高田大岳の8つの岳が、甲のように見えることからその名がついた。
城ヶ倉大橋

「城ヶ倉大橋」は八甲田山の麓に架かる、全長360メートル・高さ122メートルの日本最長を誇る上路式アーチ橋。

橋の手前にパーキングがあるので、クルマを停めて橋の上から、心ゆくまで圧巻の景色を眺めることができる。

彼方にそびえているのは、標高1625 メートルを誇る青森県の最高峰「岩木山」だ。
八甲田ロープウェイ

山麓駅から片道約10分で、標高1324メートルの八甲田山・田茂萢岳(たもやつだけ)山頂に到着でき、天候に恵まれれば、青森市街地や陸奥湾、津軽半島、下北半島、岩木山などを見渡すことができる。
おとな片道1400円(往復2200円)
9時 〜 16時20分
八甲田山雪中行軍遭難記念像

最後は、その大自然が秘める過酷さを、現代に伝えるエピソードで締めくくろう。
ご覧の凛々しい銅像は、明治35年にこの地で起きた「雪中行軍遭難事件」を後世に伝えるもので、捜索隊の目印になるよう、雪の中に仮死状態で立つ「後藤房之助伍長」の姿を現している。
「八甲田山雪中行軍遭難記念像」が正式名のようだが、筆者はこういう像に「記念」という表現を使うことに抵抗感を覚える。

我々世代には、「新田次郎」の山岳小説「八甲田山死の彷徨」を原作に、「高倉健・緒形拳・北大路欣也」らの錚々たる俳優が主演した映画、「八甲田山」を思い出す人が多いのではないだろうか。
「八甲田山死の彷徨」の概要
※ウィキペディアより転用
日露戦争直前の1902年(明治35年)に、ロシアとの戦争に備えた寒冷地における戦闘の予行演習として、また陸奥湾沿いの青森から弘前への補給路をロシアの艦砲射撃によって破壊された場合を想定して、日本陸軍が八甲田山で行った雪中行軍の演習中に、参加部隊が記録的な寒波に由来する吹雪に遭遇し、210名中199名が死亡した、八甲田雪中行軍遭難事件を題材にした山岳小説。
演習当日には、北海道で史上最低気温が記録されるなど、例年の冬とは比べ物にならない寒さだったといわれている。
十和田・奥入瀬・八甲田山
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