25年のキャリアを誇る車中泊旅行家が、島根県松江市を舞台に描かれた、NHK連続テレビ小説「ばけばけ」ゆかりの地の、『失敗しない周り方』をご紹介しています。
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この記事は、1999年から車中泊に関連する書籍を既に10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「車中泊旅行家・稲垣朝則」が、独自の取材に基づき、全国各地の「クルマ旅にお勧めしたい観光地」を、「車中泊旅行者目線」からご紹介しています。

~ここから本編が始まります。~
「ばけばけ」で描かれた松江は、ドラマの中の”世界観”。ゆえに大事なのは、それを「思い起こせる場所」

松江の筆者の歴訪記録
※記録が残る2008年以降の取材日と訪問回数をご紹介。
2008.06.22
2009.03.19
2011.07.29
2013.02.25
2015.05.08
2016.10.09
2018.03.17
2019.06.08
2025.05.26
「松江」での現地調査は2025年5月が最終で、この記事は友人知人から得た情報及び、ネット上で確認できた情報を加筆し、2026年4月に更新しています。
朝ドラ「ばけばけ」最大の聖地は、「小泉八雲旧居」

「ばけばけ」ゆかりの地をめぐる秘訣

筆者は大阪生まれだが、既に40年以上一緒にいる家内は、島根県の「出雲」と「松江」のちょうど中間に位置する「平田」出身で、少なくとも既に100回近くは島根県を訪れている。

「松江」は帰省の通り道にあるので、国宝指定された「松江城」を筆頭に、メジャーな観光地にはそこそこ足を運んできた。

しかし「ばけばけ」が放送されるまで、「小泉八雲」は知ってはいたが、筆者の中では松江観光のコンテンツになるほどの人ではなかった。
これはたぶん、島根県民とそう大きくは変わらないと思う。

そもそも、戦国時代に名を馳せた、「尼子氏」と「毛利氏」の領地を受け継ぐ「松江」は、「徳川家康」の孫に当たる「松平直政」が、長野県の「松本」から入府して以来、明治維新まで「親藩大名」として代々続いた名門の城下町だ。
すなわち見どころの多くは、江戸時代以前に関係している。

出典:NHK
そのため明治になってからやってきて、わずか1年3か月しかいなかった「小泉八雲」は、どちらかといえば学識者の研究対象に近い存在だった。
それが分かっていたので、「小泉八雲記念館」「小泉八雲旧居」の取材は、「ばけばけ」の放送前に済ませていたが、あえてドラマが全話放送されるのを待ち、どのように描かれるのかを見届けてから、この記事を書くことにした。
結果から云うと… このドラマは想像以上におもしろかった。

出典:NHK
それは特に、「髙石あかり」の特筆すべき演技力によるところも大きかったが、「主題歌」に使われた「笑ったり転んだり」の”おんぼら”した雰囲気と相まって、ドラマの中の純和風に彩られた「松江」の世界観は、実に素晴らしかった。
「ばけばけ」により、「松江」の印象は以前とは大きく変わったと思う。
確かにこれを見れば、『京都のように多少は当時の名残が見られるのでは』と期待して、「松江」を訪れてみようと思う人が増えるのは当然だ。

出典:NHK
典型的な例は、ドラマに頻繁に登場した明治時代の「松江大橋」だろう。

だが、こちらが現代の「松江大橋」。
150年近くも経てば、保存を目的とする史跡以外の「生活空間」は様変わりし、その時代を描こうとすれば、「スタジオセット」がメインになるのはやむを得ない。

出典:NHK
ちなみにこちらは、NHK大阪放送局で公開された「松江大橋」のロケセット。
これが、ああなるとは…!
今さらながら、テレビというのは信じられない(笑)。

出典:NHK
また今の「宍道湖」は、松江付近の湖岸は大半がコンクリートで護岸されているため、ドラマの多くのシーンは「琵琶湖」で撮影されている。
問題は観光情報サイトが、それを正直に伝えようとしないことにある。

出典:NHK
真実を書くことが、観光ビジネスのマイナスになると思っているのかもしれないが、「ばけばけ」の視聴者が見てみたいのは、ドラマが繰り広げられていた「花田旅館」や、おときが女中をしていた頃のヘブンの屋敷、あるいは家族がスキップを練習していた「長屋」まわりの素朴な情景では…
しかし実際には、そういうシチュエーションが残っていないため、本来はほとんど関係のない「松江城」や「堀川めぐり」、さらには「出雲大社」まで絡ませて、『「ばけばけ」ゆかりの地めぐり特集』なんて子供騙しみたいなことをやるから、見た旅行者をシラケさせてしまう(笑)。
そんなセコいことをせず、「それはそれ」「これはこれ」のほうが、よほどスッキリしていていいし、それでも十分に松江は楽しめる。
とどのつまり…
「ばけばけ」ゆかりの地をめぐる秘訣は、ドラマの面影が残るインドアの施設を周ることだ。
小泉八雲旧居

さて。
ここから本論になるのだが、「小泉八雲旧居」は「松江城」の北側にあって、もっとも城下町の情緒が色濃く残る場所として知られる、「塩見縄手」に位置している。
この屋敷は「八雲」と「セツ」夫妻が、1891年(明治24年)6月から、11月に熊本に赴くまでの約5ヶ月、実際に新婚生活を送った場所だ。

かつての武家屋敷の趣をそのままに残しており、ドラマで描かれていた通り、家の中では和服で過ごしたという「八雲」が、執筆の合間に眺めたという「三方の庭」が、今も美しく手入れされている。

また室内には、「八雲」が実際に使っていた執筆机のレプリカも置かれていたが、これはちょっとした演出で、本物は「小泉八雲記念館」に展示されているとのこと。
ここではドラマのシーンは撮影されていないが、イントロに登場する室内写真が撮られているほか、スタジオセットのモデルとして大いに生かされたようだ。

出典:NHK
ゆえに『実際の見どころ』は乏しいが、逆に「ばけばけ」の中に登場する家の中のシーンを思い浮かべると、圧倒的な登場回数を誇る”ロケ地”であると云えるだろう。
この「小泉八雲旧居」が残っていなければ、「ばけばけ」はまったく違うビジュアル展開になっていたかもしれない。
ちなみにこの家は、松江藩士「根岸干夫(たてお)の武家屋敷だが、その長男の「磐井(いわい)」は島根県尋常中学校・熊本第五高等中学校・東京帝国大学で、「八雲」の指導を受けた教え子だったというから驚きだ。
「磐井」は東京帝国大学卒業後、日本銀行に勤務していたが、「八雲」が愛した旧居を保存するため、1913年(大正2年)に松江に帰り、1920年(大正9年)から屋敷の一部を公開し、その後、記念館設立などにも尽力している。
旧居は代々「根岸家」によって保存され、2018年(平成30年)に松江市の所有となったが、その後も「根岸家」の意思を継いで、大切に保存されている。
駐車場について

「小泉八雲旧居」に専用駐車場はない。
というか「潮見縄手」そのものにもないので、クルマは少し離れたところに停めて、そこから歩いてアクセスする必要がある。
筆者が利用したのは、約350メートル・徒歩で5分ほどのところにある「松江市営城山西駐車場(小泉八雲記念館西駐車場)」で、指定された幾つかの施設を利用すると駐車料金は半額になり、その対象に「小泉八雲旧居」も含まれている。
松江市営城山西駐車場
158台 24時間利用可能
8時〜19時
普通車1時間未満 300円
1時間以上2時間未満 500円
以降30分毎 +100円
19時~8時
30分未満 100円
30分以上 200円
以降30分毎 +100円
※上限600円
※指定観光施設利用により駐車料金半額
小泉八雲記念館

「小泉八雲旧居」のすぐ隣に建つ「小泉八雲記念館」は、「八雲」の生涯を紹介しながら、直筆原稿や初版本、遺品や手紙を展示していると同時に、彼を支えた妻「セツ」との絆を深く学べるミュージアムだ。

小泉八雲記念館
具体的には「八雲」の文筆活動を支えた「リテラリー・アシスタント」としての側面や、二人の波乱に満ちた生活、ドラマの基となった「怪談」の制作秘話などを観ることができる。
その意味では、ここも「ばけばけ」の名場面を思い浮かべるのに適した場所と云えるだろう。
館長は「八雲」の曾孫にあたる「小泉凡(ぼん)」氏で、島根県立大学名誉教授。
2016年夏に展示構成を拡充・一新し、ライブラリーやホール、ミュージアムショップを備えた現在の「小泉八雲記念館」にリニューアルされている。
2026年9月6日まで、企画展「小泉セツ—ラフカディオ・ハーンの妻として生きて」を開催中。
小泉八雲記念館
☎0852-21-2147
おとな600円
「小泉八雲旧居」との2館共通券は800円
4~9月:9時~18時
10~3月:9時~18時
受付は閉館30分まで
12月と3月に年2回休館日あり
なお、「小泉八雲」のことが3分で分かる、いい動画がみつかったので、ここで紹介しておこう。これを見るかぎり、「ばけばけ」は「八雲」の人生をほぼ忠実に描いている。
「松江大橋」界隈

ここはドラマを見ていた人には、いい意味では『よくあそこまで、明治時代のように描けたな』、悪く云えば『よくもうまく騙してくれたな』と思える場所で、まさしく「ばけばけ」だ(大笑)。
ゆえに筆者は、2番目の「ゆかりの地」としてノミネートしている。
そして実は番組スタッフも、おもしろいコメントを残していた。

橋がかかる大橋川を隔てて武家の町と庶民の町が分かれているのを見て、セツさんが武家の町から橋を越えて庶民の町の側に住むことになった気持ちを想像するところから物語を編み始めました。
だからこそ松江の風景として松江大橋の北と南を表現する必要があり、VFXも使って再現しています。実際、あの橋のあたりに行くと、ここか、と感じていただけると思います。

出典:NHK
なるほど~!

ちなみにこちらが上のシーンで、松江に赴任してきた「ヘブン(八雲)」が当面の家代わりに滞在していた、大橋川沿いの富田旅館跡(現在の大橋館)。

出典:NHK
それがドラマではこんな感じで登場する。

出典:NHK
物語の舞台となるこの「花田旅館」は、「生瀬勝久」演じる「平太」と「池谷のぶえ」の演じる「ツル」が営み、「ヘブン」と「おとき」を温かく見守る重要な場所として描かれていた。
「ヘブン」はここに約3ヶ月間滞在した後、「錦織(吉沢亮)」の紹介で宍道湖の近くに借りた二番目の住まいで約7ヶ月間過ごすのだが、そこに身の回りの世話をするための女中として雇われた、「おとき(セツ)」がやって来る。

出典:松江城 with 史料調査課
その家は末次本町にあった「織原家」の離れ座敷だったようだが、現在は「ここにあった」ということのみがわかる状態とのことで、筆者も足を運んではいない。

出典:NHK
この”二番目の住まい”での出来事で、いちばん笑えたのはビールの話だろう。

写真は、そのビールを「おとき」ちゃんが買いに行っていた「山橋薬舗(現在の山口卯兵衛商店(山口薬局主屋))」で、今も大橋館のすぐ近くにある。
1772年創業というこの老舗の現在の建物は、明治時代中期に建てられた歴史的建造物で、店内には昔の薬箪笥や、蔵から出てきた古い薬瓶・ガラス製品などが並び、「まちかど博物館」として展示も行なわれているようだが、営業時間や定休日などは公表されていない。

出典:NHK
またドラマでは、「山橋薬舗」の奥に西洋料理店が、また2階に「白鳥倶楽部」というサロンがある設定になっていたが、実際の山口薬局には存在しない。
☎0852-21-2700

出典:松江ナビ
さて。
問題はアクセスだが、前述した「松江市営城山西駐車場」から「大橋館」までは、2キロほど離れているので徒歩では遠い。
「松江大橋」から比較的近いのは、「京店第一駐車場(75台)」と「京店第二駐車場(22台)」になる。
京店第一駐車場
25分¥100
6時~18時 最大料金 ¥700
18:時~6時 最大料金¥1000
営業時間
24時間営業

また「松江大橋」は、「堀川めぐり」の船着き場がある「カラコロ広場」からも近いので、時間があるなら船で行く手もある。
番外編 八重垣神社

最後は実際にドラマのロケが行われた、『小泉八雲ゆかりの地』を紹介しよう。
「八重垣神社」は、「古事記」に登場する「素盞嗚尊(すさのおのみこと)」が「八岐大蛇(やまたのおろち)」を退治した後、「稲田姫」と夫婦となった『古代結婚式発祥の地』で、歴史ある「縁結びの神社」として知られている。

「ラフカディオ・ハーン」の日本名「小泉八雲」の「八雲」は、「素盞嗚尊」が詠んだ日本最古の和歌、
八雲立つ 出雲八重垣 妻籠(つまごみ)に 八重垣つくる その八重垣を
の枕詞(まくらことば)、「八雲立つ」に由来している。
ドラマでは、”ラストサムライ”こと「おとき」の「おじじ様(小日向文世)」が命名したことになっているが、実際には妻の「セツ」が名付けたとか。
その「八重垣神社」には、古くから境内の奥にある神秘的な「鏡の池」で行う「縁占い」がある。
言い伝えでは、小銭を乗せて池に浮かべた占いの紙が、15分以内に沈めば縁が早く、30分以上かかると縁が遅く、近くで沈むと身近な人と、遠くで沈むと遠方の人とご縁があるとされている。

出典:NHK
ドラマでは、「おとき」の占いの紙は、まさに『30分以上かかって遠くで沈んだ』のだが、驚いたことにそれは実話をもとにしているという。
実際に「セツ」が縁占いをした際にも、占いの紙が池の奥へと漂い流れてからようやく沈み、「八雲」との運命を予感させるような結果になっていたそうだ。
ちょっと”出来すぎた話”のような気もするが、確かに『かなりドラマチックなご縁』なので、神様のお導きがあったのもしれないね!(笑)。
「八重垣神社」から「小泉八雲旧居」までは、約9キロ・20分。紹介したゆかりの地を全部まわって、ちょうど半日という感じだろう。
ほとんどの人は、これくらいで十分満足できるのでは。
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