この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
湯浅・由良白崎から白浜
先週の金曜日から2泊3日で和歌山県の西岸を旅してきた。
大阪から見れば「お隣」の県だが、和歌山は未だ高速道路の普及においては「発展途上県」。そのためこの日程では、有名な潮岬や串本まで行くにはかなりハードだ。
吹田から潮岬に要する時間は、富士山までのそれと変わらない（笑）。
ただ今回は10年振りにアカウミガメの産卵を見たい、ということが主な目的だったので、いつになくのんびりとした時を過ごすことができた。
エーゲ海のような美しい景観をみせるのは由良の白崎海洋公園。道の駅とオートキャンプ場、そしてダイバー施設を園内に備えるお勧めのスポットだが、その前に有田ICで高速を降りて湯浅に寄り道し、地元の特産品を物色することにした。
湯浅は「醤油」で有名な土地だが、その歴史は鎌倉時代にまで遡る。
ルーツは紀州由良禅寺「興国寺」の開祖・法燈円明國師が、中国（南宋）の金山寺から持ち帰った味噌作りの技術にあるという。
この金山寺味噌を醸造する際に使われた野菜から滲み出る「たまり」は、元来不要の汁として捨てられていたが、それを誰かが調味料として食し、改良に改良を重ねたものが、日本における醤油の起源だという。今では信じられない話だが、醤油は味噌の「おまけ」から生まれたものらしい…
湯浅では醤油や味噌を作る蔵と周辺の町並みを「湯浅伝建地区」に指定し、観光資源として活用している。
伝統的建造物群保存地区とは、城下町や宿場町などの伝統的建造物群および、それと一体をなして歴史的風致を形成している環境を保存するために市町村が定めた地区のこと。
文化財としての建造物を「点」（単体）ではなく「面」（群）で保存しようとするもので、保存地区内では社寺・民家・蔵などの「建築物」はもちろん、門や石仏などの「工作物」、また庭園や生垣などの「環境物件」を特定し、保存措置を図ることとされている。
2012年（平成24年）4月現在、日本全国には40道府県77市町村の93地区が存在する。筆者はこれまで半分くらいの地区に足を運んでいると思うのだが、湯浅は秋田県の角館や福島県の大内宿、あるいは金沢の東茶屋町、兵庫の出石などに比べると、明らかに「地味」で華やかさはない。
しかし代わりに落ち着いた佇まいが感じられ、旅慣れた人には面白く思える場所かもしれない。ちなみに町内には熊野古道が通っており、後鳥羽上皇がここを通って熊野詣をされたという記録もあるようだ。
さて。こちらが白崎海洋公園のフリーサイト。
平日は2500円で利用できる。海辺なのに夜はタヌキが本当に傍までやってきたのには驚いた。なお、ここはいつ強風が吹き出すかわからないので、夜はサイドオーニングを片づけ、車内で寛いだ。
翌日は白浜に近い南部に移動し、千里の浜でウミガメを待つことに。写真は土曜日の明るい時間帯に撮影。
数は少ないが既に何匹かは上陸して産卵を終えているようだ。この浜は屋久島と違って、観察するのに費用はかからず、ストロボを使わなければ産卵シーンの撮影も可能だ。しかも… 車中泊のできるスペースがある。
しかし、その夜は12時まで待って何度か浜を訪れたが、結局ウミガメの姿は見つからなかった。ということで、できれば今月中にもう一度リベンジに行きたいと思っている。
ちなみにこちらは10年前にここで写した写真。当時はD100というニコン最初のデジタル一眼レフの時代で、画素数もわずか600万…
つまり、今のカメラとは「ウミガメとスッポン」ほど性能が違う（笑）。ゆえにできるものなら撮り直したい。
翌日は白浜に出て、日本最古の湯とされる「崎の湯」で朝から湯浴み。それから竜神スカイラインで高野山を目指すつもりだったが、途中の道が土砂崩れで通行止めになっており、それは断念せざるを得なかった。
昨年の台風による集中豪雨の傷跡は今も紀伊山地の各地に残ったまま。復興を目指す被災地は東北だけではなく、奈良・和歌山にも残されている。
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