この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
近畿から日本一周を再開。
8月30日に能登から帰宅後、2週間を経て再び旅を再開した。ここから12月までは、途中一度信州には出るものの、小刻みに西日本を回っていくことになる。その手始めに1泊2日で久しぶりの丹後半島を周ることにした。
旅の目的のひとつは、今年7月に全線開通を迎えた京都縦貫自動車道と、その途中にできた「道の駅・京丹波味夢の里」の視察。そんなわけで、金曜日の夜に自宅を出て、車中泊をしてみることに。
道の駅のインプレの前に… まず、ここで車中泊をしてもETCによる割引の恩恵はほとんど受けられないという悲しい事実から報告しよう。
京都縦貫自動車道の前半ともいえる久御山IC~丹波IC間は、NEXCO西日本の管理区間になっており、利用者は丹波ICで一度料金を精算される。
通常、名神高速や東名高速のような長い道では、金曜に自宅を出て途中のSAで車中泊をすれば、いずれも30%オフになる深夜割引か休日割引が該当されるが、深夜割引の適用条件は深夜0時以降。
つまりそれまでに、丹波ICを通過してしまうとNEXCOの管轄区ではマイレージ以外の割引は得られない。
だが車中泊旅行者で日付が変わる時間まで走るというのはレアケースだろう。それならば、東からなら大津SA、西からなら桂川PAで車中泊をしたほうがお得になる。
ちなみに大山崎ICから丹波ICまでは1380円、またそこから宮津天橋立IC間は1350円、合わせて2730円。仮に丹波綾部道路・綾部宮津道路にETC割引が適用されても2320円、事実上はおよそ15%オフにしかならない。
さて、今度は「道の駅・京丹波味夢の里」だが、なぜここがサービスエリアではないのか? という、ごく当たり前の疑問を抱かずにはいられなかった。
高い高速料金を支払っているのに、国道沿いの道の駅と同レベルのサービスしか得られないというのは、ちょっと納得がいかない。この店は朝7時から営業するが、夜はトイレと自動販売機のみが稼働している。
ゴミが処分できる新しい道の駅と思えばそれなりだが、夜もトイレ横のモニターから大音量を伴う観光案内の映像が流れており、けして静かな環境とはいえない。週末にしては車中泊をするクルマの数が少ないと感じたが、既にそういう情報が出回っているのかもしれない。
帰りはデイタイムに寄ってみたが、売店の品揃えはなかなかで、インフォメーションもしっかりしている。民間発想なら、サービスエリアなみの営業時間にすると思うのだが。このあたりは「大人の事情」が丸見えだ(笑)。
翌朝。早々と道の駅を出て宮津から伊根町へと向かった。
写真中央の松林は向こう岸ではなく、海の真ん中を通る道。そう、これが世にいう天橋立だ。
もっとも… こういう景観を目にしなければ、誰も日本三景だと思わないだろう(笑)。
伊根町の見どころは、舟屋で知られる重要伝統的建造物群保存地区。とはいえ、町内は狭く高山のような土産屋筋もない、ごく普通の漁村だ。
クルマで走ればあっという間に通り過ぎてしまうが、下の写真の公園にクルマを置き、少し歩いてみるとけっこう面白い写真が撮れる。
こちらは道の駅から見た伊根湾。
パネルに書かれた「ええにょぼ」は、伊根町を舞台に1993年の4月から同年10月に放送されたNHKの連続テレビ小説。
戸田菜穂が神戸の医大を卒業して研修医となった主人公の宇佐美悠希を演じ、平均視聴率35.2%、最高視聴率44.5%という、今では信じられないような高視聴率を記録している。
伊根町からは丹後半島の先端にあたる経ヶ岬を経由し、ブランド蟹の元祖「間人(たいざ)」へ。
この断崖絶壁の道は、積雪と凍結に見舞われる冬は通行止めになることが多く、通れるのはグリーンシーズンだけと思っていい。京都といえども、丹後の気候は北陸なみに厳しい。
間人と書いて「たいざ」と読む。
この沖合で水揚げされた松葉ガニ(ズワイガニ)は、その日のうちに京阪神の料亭に運ばれることから珍重され、現在では「間人ガニ」として日本を代表するブランド海鮮として名を馳せている。
解禁は例年11月の中旬から。丹後の本当の「書き入れ時」は、夏ではなく晩秋から海が荒れる直前の初冬になる。
この日は久美浜まで行き、滝が露天風呂に流れ込む久美浜温泉湯元館で汗を流し、夕日ヶ浦の無料駐車場で泊まったが、出会うのは釣りやサーフィンが目的の人ばかり…
好ポイントが多い丹後半島での過ごし方を良く知っているのは、旅人よりもむしろ彼らだと思う。
翌日は福知山から丹波篠山を経て、大阪の能勢に抜け、そのまま国道で帰宅。3500円はもう出せない(笑)。