この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
これがスマートな大人の、竹田城の楽しみ方
雲海に浮かぶ「竹田城跡」の概略と、3つの撮影スポット【目次】
竹田城の概要と歴史をサクッと
竹田城は兵庫県朝来(あさご)市和田山町にあった、日本100名城の56番目にリストアップされている国内屈指の山城だ。
その城跡は近畿有数の雲海スポットとして有名なだけでなく、最近では2012年に放映された高倉健主演の「あなたへ」、さらに2014年のNHK大河ドラマ「軍師勘兵衛」などのロケ地として、多くの日本人に知られている。
竹田城の歴史
標高約354メートルの山頂に位置する竹田城は、嘉吉年間(1441-43年)に但馬の守護大名・山名宗全が、配下の太田垣氏に命じて築かせたのが始まりとされている。
太田垣氏は7代に渡って城主を務めたが、織田信長の命による羽柴秀吉の但馬征伐で、1580年(天正8年)に落城し没落した。
その後、秀吉の弟の羽柴秀長(城代)、桑山重晴と城主が続き、1585年(天正13年)に播磨の龍野城主であった赤松広秀が入城する。
名君と呼ばれた赤松広秀は、秀吉の支援を受け、本格的な竹田城の整備を行ったと考えられているが、「関ヶ原の戦い」を経て切腹。竹田城は家康の命で廃城となった。
現在残る城跡は、南北約400メートル、東西約100メートルに及び、完存する石垣遺構としては日本屈指の呼び声が高い。
遠くから眺めると、山上にまるで虎が臥せているように見えることから「虎臥城(とらふすじょう)」とも呼ばれる石積みの城郭を見ると、当時の全容をぜひ再現して欲しいと思うばかりだ。
竹田城の再現エピソード
実は「バブル」の絶頂期にあたる1989年に、角川春樹が映画「天と地と」の撮影の為に、竹田城址に天守を再現している。
その貴重な映像がこちら。
国定史跡のため期間限定であったとはいえ、膨大な量の発泡スチレン製の部材と、家紋入り瓦6万枚など、420トンに及ぶ資材をヘリコプターで運び上げ、のべ1600人の作業員と地元和田山町の人々の協力を得て1ヶ月で完成させ、約2週間だけ山頂に幻の城が出現したという。
ちなみに「天と地と」は、海音寺潮五郎の歴史小説。
戦国時代に天才的な軍略で越後を統一し、甲斐国の武田信玄と名勝負を繰り広げた上杉謙信を描いている。
竹田城は、その中で謙信の居城「春日山城」として撮影されている。そりゃ、残したくても残せないわけだわ(笑)。
実はその映像もこちらで見ることができる。いや~、本当にいい時代になったものだ(笑)。
竹田城の雲海が見られる時期とタイミング
さて。
ご承知のとおり竹田城跡の周辺では、秋から冬にかけて、よく晴れた早朝に朝霧が発生し、今ではすっかり但馬の風物詩になっている。
雲海に包まれた竹田城跡は、まさに天空に浮かぶ城を思わせ、幾多のウェブサイトやガイドブックに「日本のマチュピチュ」と紹介されることも多い。
その幻想的な光景が見られる時期とタイミングは以下の通り。
●時期
9月~11月。※2月末までは見られるが、晩秋が一番発生しやすい。
●時間
明け方から午前8時頃まで。
●条件
1.当日、日本海に高気圧の中心があること。
2.よく晴れていること。
3.朝方と日中の気温の差が大きいこと。
4.風が弱いこと。
まあ、ここまではどんな竹田城跡の紹介にも記されている(笑)。
では、竹田城跡の雲海撮影スポットが3ヶ所あることをご存知だろうか。
竹田城の雲海撮影スポット
その違いは「竹田城跡から雲海を眺めたいのか」、「雲海に浮かぶ竹田城跡」が見たいのか… に起因している。
そこで、ここからはその3ヵ所について詳しくガイドしていこう。
竹田城跡・雲海撮影スポット1
竹田城跡
石垣だけが残る竹田城跡に登り、その敷地から撮影する。
アクセス&駐車場事情
通常はマイカーをこの「山城の郷」の駐車場に停め、ここから約2.1キロの坂道を50分ほどかけて徒歩で登るか、雲海バスで「中腹第二駐車場」まで行き、そこから約20分歩いて竹田城跡まで行く。
詳細は下記の記事の中ほどに書かれた「山城の郷の車中泊事情 ~2021年10月更新~」を参照に。
なお、本来の「竹田城跡の見どころ」は雲海ではなく、この石垣と見事に残る曲輪跡で、それを見るなら、むしろ澄み切った青空の日のほうがいい。
ゆえに秋は、少し離れた場所から「雲海に浮かぶ竹田城跡」を見るのがお勧めだ。
竹田城跡・雲海撮影スポット2
立雲峡
ポスターやガイドブックでお馴染みのこの光景は、竹田城跡から少し離れた立雲峡から望遠レンズで撮影したものだ。
ただし展望台までの登山道は竹田城よりもかなりハード。
秋が深まれば、足元もできればトレッキングシューズのほうが安全だ。
50台が収容できる立雲峡の駐車場。駐車は無料だが、雲海展望台へ行くには300円が必要になる。
なお、立雲峡が事実上の「竹田城・雲海撮影スポット」になると思うので、別記事にてさらに詳しい現地レポートをまとめている。
竹田城・雲海撮影スポット3
東和(ふじわ)峠
東和峠は立雲峡の反対側にある撮影ポイントで、ご来光と雲海に浮かぶ竹田城跡が見られるが、モロに逆光となるためスマホでの撮影は難しい。
道の途中にあるため、クルマでアクセスできる。
ただし駐車できる台数は5.6台で、後は周辺に路上駐車となる。もちろんトイレはないので、ここでの車中泊は難しいだろう。
なお立雲峡と藤和峠は、要領よく行動すれば一度の訪問で両方撮影することは可能だが、藤和峠で日の出を撮ってから立雲峡に到着する頃には、雲海はかなり減っていることを覚悟しよう。
PS:雲海に浮かぶ「天守」のある山城 備中松山城
規制が強化されただけでなく、入場料も徴収されるようになった竹田城跡に変わり、最近注目を集めているのが、岡山県高梁市にある備中松山城だ。
竹田城跡と同様に、実取材に基づく詳細ガイドを作成しているので、興味があればぜひご覧いただきたい。