この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、原稿作成のためのメモ代わりに書き残してきた「忘備録」を、後日リライトしたものです。
ちょっとコアな山陰の温泉地めぐり
13日の午後に自宅を出て鳥取県を目指した。
最初の目的地は神話「因幡の白ウサギ」で有名な白兎海岸にある道の駅だ。だが、三連休だけあって名神・中国道ともに午前中いっぱいは渋滞がひどく、それが解消された午後2時に出発し、5時前に到着した。
白兎海岸は神話だけでなく、サーフポイントとしても有名なビーチで、波の良い日は湘南海岸のように数多くのサーファーがやってくる。
この日は波はそこそこあったが、残念ながら「オンショア」。さすがに誰も海には出ていなかった。
サーフィンに適しているのは「オフショア」と呼ばれる陸風で、風の抵抗で波が滑らかに、そして長くきれいにブレイクする日だ。
サーフィンはしないが、映画「ビッグ・ウェンズデー」でそのあたりの用語だけは「勉強」している(笑)。写真は「オフショア」の白兎海岸で数年前に撮影したもの。こういうのは動画より写真のほうが想像性があっていい。
この日は、明日以降のオフショアに期待するサーファーが車中泊をする姿が多く見られ、旅行者と相まって道の駅は夜間も満車だった。しかもハイエースだらけ…(笑)。
筆者はこの日、北海道から広島まで陸路で帰る途中の知人、K氏と待ち合わせていた。K氏は気功の達人で、実はこの夏に北海道でお世話になった経緯がある。
まさに神業ともいえるチカラを使い、足に打撲を負ってまともに歩くことができない状態を、たった一夜で正常にしてくれたのだ。そのお礼をかねて、この日は「Wiz-bar」にご招待。持参してきたダバダ火振りは、一夜で北海道の思い出話とともに飲み干された。
翌朝K氏と別れ、取材を始める。
最初の取材先は、世界有数のラドン泉で知られる三朝(みささ)温泉だ。今回が3度目だが、本を書くだけの情報収集はできていなかった。取材は旅とは違い、「こんなところ?」みたいな場所を押さえておく必要がある。
例えば… 写真は三朝温泉の元湯にあたる日帰り温泉施設「株湯」へ通じる道だ。角に建てられた石の道標にそれが書かれているが、まずドライバーの目には留まらない。駐車場があるのに、サインは歩行者向けにできているのだ。
ネットでは多くの温泉ファンが、株湯の外観から浴室や温泉の効能をこと細かに紹介していると思うが、実は株湯の駐車場までキャンピングカーで行こうと思えば、通れるルートはここからのひとつしかない。
道を誤れば確実に立ち往生してしまうところなのである。当然行ける車両は制約される。並みの腕前ならハイエースのワイドボディーまでが限界だろう。
三朝温泉を出て向かったのは、10キロほどのところにある倉吉の町。
ここには倉敷の美観地区や、飛騨の高山と同じ伝統的建造物群保存地区が打吹玉川(うつぶきたまがわ)に残されている。
これまで日本各地の伝統的建造物群保存地区をずいぶん歩いてきたが、その規模と賑わい、また町並みの美しさにおいて、倉吉は間違いなくトップクラスにランクされると思う。特に町はずれにひっそり佇む「倉吉淀屋」と、「豊田住宅」は必見の価値がある。
逆に雑誌によく紹介されている赤瓦のお土産さんは、長浜の黒壁スクエアと似たり寄ったりで、目の肥えた旅人が満足できる場所ではなさそうだ。
さて。筆者は今、東郷温泉にある道の駅・燕趙園でこのブログを書いている。
ここは以前から東郷温泉の中核を成してきた施設で、日本最大の中国庭園だ。ただ、道の駅に登録されたのは2011年4月ということで、まだあまりその存在が認知されていないのか、白兎海岸に比べると夜は拍子抜けするほどガラガラだ。100台をゆうに収容する駐車場で車中泊をしていたのは、筆者を含めてわずか10台ほどだった。
ちなみに燕趙園では、入園料の500円だけで「中国雑技ショー」のステージライブが見られる。これはたぶん大満足のアトラクションだと思うので、来られた際にはぜひご体験を。
なお、東郷温泉とはわい温泉は、東郷湖の湖畔に並ぶ「兄弟」的な温泉地で、はわい温泉には360円で利用できる日帰り温泉施設の「ハワイゆ~たうん」がある。
値段が値段なのでシャンプーはないが、珍しく石鹸は置かれている。ただお湯は循環で塩素系消毒剤の匂いがはっきりと感じられた。
「通」と呼ばれる人の行く温泉とは思わないが、「旅の汗を銭湯並みの料金で落とせば最高」という筆者のような旅人には十分だ。
もちろん車中泊スポット探しにも抜かりはない。ここでも「極上」を一件探し当ててきたので、またそのうち、どこかで詳しく紹介しよう(笑)。