この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
モデル散策ルートは、南禅寺発・哲学の小道経由・金戒光明寺行き
まず、クルマは広めの有料駐車場がある南禅寺か、岡崎公園の市営地下駐車場に停めるといい。ただし南禅寺は、朝一番からでないとたぶん停められない。
南禅寺は日本最初の勅願禅寺で、京都五山、鎌倉五山のさらに上位に位置する「別格」扱いの寺院で、日本全国の禅寺の中で、もっとも高い格式を持つ。
と、ほとんどのガイドブックに紹介されているが、たぶん書いているライターも、その意味をよくわかっていないと思う(笑)。
南禅寺の開基(創立者)は亀山法皇で、○○上人と呼ばれるような高僧が、仏様のお告げを受けて建立したのではなく、現代風に云えば「国立のお寺」ということになる。
ただ残念なことに、度重なる火災で創建当時の姿はほとんど残っていない。また写真の三門を舞台とする有名な石川五右衛門の「絶景かな」も、歌舞伎の中の「作り話」だ。
ついでに「五山」とは、鎌倉時代末期に北条氏が南宋にならって導入した臨済宗の寺院格付制度のこと。ゆえに「京都五山」よりも「鎌倉五山」のほうが歴史的には古い。
京都では後醍醐天皇の「建武の新政」以降に導入されたが、最終的には足利尊氏により、南禅寺・天竜寺・相国寺・建仁寺・東福寺・万寿寺という寺格に設定された。
寺社の由緒に関心があるなら、公式サイトを見るのが一番いい。
仏心もない筆者が語ったところで、面白くもありがたくもないし、なによりこのサイトには、「そんなことは期待されていない」と思う(笑)。
知りたいのは、南禅寺は「インスタ映え」するのかどうか…
答えはYesだ。
ただし「紅葉撮影」にお勧めなのは、三門や水路閣がある境内であって、拝観料の必要な法堂や塔頭の中ではない。
実際に見ていないのでなんとも云えないが、写真を見るかぎりは拝観料を支払って「南禅院」や「天樹院」の庭の紅葉を愛でるなら、嵯峨野の「天龍寺」か、世界遺産の「龍安寺」まで足を運ぶほうが良さそうに思える。
車中泊の旅人には「ベッド付きのマイカー」があるのだから妥協することはない。せっかく京都に来たのだから「一番」と呼ばれるものを見て帰ろう。
さて。ここからは南禅寺周辺の紅葉スポットを紹介する。
「永観堂」って、どう?
南禅寺から哲学の道に向かう途中にあるのが、「東福寺」と並んで有名な京都市内の紅葉スポット、「永観堂」こと禅林寺だ。
撮影ポイントは放生池周辺とされているが、雑誌やウェブで見る高台からのアングルは、ドローンを使っているかもしれない。
苔の上に広がる落葉の絨毯も、永観堂の鉄板アングル。
筆者は過去に永観堂を3度訪ねているが、2013年以降は遠ざかっている。理由は拝観料が1000円に値上げされたからにほかならない。
ちなみに2018年現在でも、普段は600円だが、紅葉シーズン(11月3日(土) ~ 12月2日(日))は「寺宝展」と題して1000円になる。
紅葉が美しいかどうかは別として、筆者が問題視しているのは、ほとんどの京都の紅葉紹介サイトが、そこをちゃんと調べていないこと。
つまり書き手が「現地に足を運んでいない」なによりの証拠だ。
名刹と紅葉のコラボが撮りたい筆者にとって、永観堂は撮れるアングルが少なく、拝観料との折り合いがつかない。裏返せば「寺宝に関心のないお客は来なくていい」ということなのだろう。
「哲学の道」は、すべて歩かなくてもいい。
「哲学の道」は、哲学者の西田幾多郎が、この道を歩きながら思いにふけったことからそう呼ばれるようになった疎水沿いの遊歩道で、若王子橋から銀閣寺まで、約1.5キロにわたって続いている。
ここで大事なのは、写真のような紅葉並木が、全域にわたって続いているわけではないということ。紅葉区域は点在しており、極端な話、こういうロケーションを1ヶ所見れば、あとは同じだ。
加えて銀閣寺だが、どのガイドブックでも大きく取り上げていないのは、世界遺産と云えども、紅葉に関しては「名所」と呼ぶほどではないからだろう。
真如堂はメジャーな寺院ではないが、境内には燃えるような赤に染まるカエデの木があり、写真を撮る人の間では、ちょっと知られた存在だ。
こちらは、幕末に京都守護職についた会津藩が本陣を構えたことで有名な金戒光明寺。歴史に興味がある人にはお勧めだろう。