この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
春の京都伏見の風物詩 十石舟が行き交う桜の濠川
京都の中でも「伏見」という町は、日本人観光客にとってあまり馴染みのない場所かもしれない。
外国人に大人気の「伏見稲荷神社」、坂本龍馬が襲撃された「寺田屋」、あるいは月桂冠や黄桜でお馴染みの日本酒酒蔵など、なるほど聞けば知ってはいるけれど、その前に行きたいところがたくさんあって、旅先の候補地にはなかなかあがらない…
そんなわけで、ここを訪れるのはリピーターや歴史ファンが多いようだ。
だが、桜の季節の「伏見」は、何も知らなくても楽しめる。
とりわけ美しいのは、十石舟、三十石舟(さんじっこくぶね)が行き来する宇治川派流の濠川(ごうかわ)沿い。
運河脇に咲く桜を、観光船から眺める場所は日本各地にあるが、伏見はその光景もまた絵になる町で、河畔に遊歩道が整備され、行き来が見渡せる橋の数も多い。
さて、伏見は豊臣秀吉によって整備された水運の拠点だ。
秀吉が聚楽亭や淀城、そして晩年を過ごした伏見城と大阪城を頻繁に行き来できたのは、このルートがあったおかげだが、そんな「太閤の足跡」を幕末の志士たちもまた辿っていた。
薩摩や長州、あるいは土佐から海をわたり、大阪の天保山についた彼らは、三十石舟に乗って淀川を遡り、伏見港まで来ていたという。
そのため伏見には尊王攘夷派の武士が多かったようだ。
坂本龍馬もそのひとり。
「龍馬伝」を見ていた人は記憶にあると思うが、写真の左手にある木造の建物が、龍馬の定宿だった「寺田屋」だ。
そのすぐ前には船着き場があり、当時もこれに近いロケーションの中に、龍馬やお登勢、そしてお龍の姿があったのだろう。
坂本龍馬や寺田屋の詳細は、下に書いた別の記事で詳しく触れているので、ここでは割愛するが、幕末の伏見を知れば、桜はその史跡めぐりの「付録」になってしまうかもしれない(笑)。
なお濠川を往来する十石舟、三十石舟の撮影スポットは、龍馬とお龍の夫婦像が建つ「京橋」周辺。様々なアングルから桜絡みのシーンが狙えるので面白い。
問題は駐車場だ。
寺田屋界隈には驚くほどコインパーキングが増えたが、料金の相場は20分220円とけして安くない。
そこで車中泊のできる駐車場探しのついでに、低料金で利用できるコインパーキングも見つけておいた。
最後は観光船について。
十石舟の定員は20名。弁天橋を渡ると「十石舟のりば入口」の大きな看板があり、階段を降りると十石舟のチケット売り場になっている。
ただし桜の時期は待ち時間が発生するので、先に乗船チケットを購入してしまおう。なお三十石舟(定員30名)は十石舟とは違う乗場から発着する。
伏見・桃山・宇治・醍醐… 洛南は歴史と日本酒が好きな旅人のパラダイス!