この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
個人旅行者向けのロケーション
日本全国を旅していると、「○○の台所」と銘打たれた観光市場をよく見かけるが、残念ながらその多くは「誇大広告」(笑)。
これまでに「なるほど!」と思ったのは、八戸の八食市場、金沢の近江町市場、小倉の旦過市場あたりなのだが、これから紹介する京都の錦市場は、紛れもなくそのひとつに挙げられる。
ただ他の観光地と違うのは、市内の観光スポットの数だ。
行きたいところがありすぎる京都では、錦市場のランキングはさほど高くないのだろう。加えて近くに観光バスはおろか、普通車でも停められる駐車場がないため、団体ツアーやマイカー旅行者からも敬遠される。
ゆえに錦市場は、京都のど真ん中にありながら「エアポケット」のようになっている。もし、この観光市場が他府県にあったなら、訪れる観光客の数はずいぶん違うのかもしれない。
しかし、行ってみると実に面白い。
四条通の一筋北を東西に走る錦小路通の、約400メートルにわたる区間を占める錦市場には、およそ130の店舗が立ち並び、まさに京都ならではの食材が並ぶ「和食マルシェ」になっている。
とりわけ目を引いたのが、この「魚力(うおりき)」。1919年創業の老舗で、祇園祭でお馴染みの高級食材「はも」が、冬でも手軽に食べられる。
外はからっと、中はふっくら揚がった「はも」の天ぷらやカツのほかに、秘伝のたれで焼き上げた照り焼きもあり、どれも1本500円。リーズナブルとは思わないが、同じ食べ歩くなら京都にゆかりの深いものがいい。
千枚漬け・すぐき・しば漬けを総して「京の三大漬物」と呼ぶらしいが、浅漬けも京都ならではの食文化。サービスエリアや有名な寺社仏閣の参道にある「西利」と「大安」以外の漬物専門店も、ここには軒を並べている。
ちなみに錦市場の歴史を辿ると、約400年前の江戸時代初期に行き着くという。当時は井戸から地下水を汲み上げ、野菜や食べ物を冷やしていたそうだ。一年を通して水温が15~18℃と一定している「錦の水」は今も健在で、近くの新京極にある錦天満宮の境内で口にすることができる。
さて。ここからはマイカー旅行者に向けて、錦市場への具体的なアクセス方法を記すとしよう。
そこから河原町通りを渡って新京極に入り、錦小路通りまでまっしぐらに進めば15分以内に行けると思う。