この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
京都御苑は「国民公園」
京都に関するたくさんの観光ガイドが出ているが、「京都御所(きょうとごしょ)」に関する観光案内は意外に少ない。ましてや「京都御苑(きょうとぎょえん)」になると、その数はさらに減る。
加えて、京都市民は「京都御苑」をあわせて「御所」と呼ぶ人が多いようだが、正確には「京都御所」と「京都御苑」は別物だ。
正しい話をすると、「京都御所」は宮内庁が管轄する「皇室用財産」で、それを囲む「京都御苑」は、環境省が管理している国民公園である。
中には「京都御所」は有料で「京都御苑」は無料なんてバカげたことを云う人もいるらしいが(笑)、どちらも無料で入場できる。
その意味で、筆者はこの地を「京都でいちばん素晴らしい無料の観光スポット」と呼んでいるわけだが、まずは国民公園である「京都御苑」から説明するとしよう。
「京都御苑」は京都御所と仙洞御所、大宮御所を包含する東西700メートル、南北1300メートルの広大な緑地で、車両以外は東西南北四方から自由に出入りすることができる。
歴史を振り返ると、現在の京都御苑一帯は、幕末まで200軒あまりの邸宅が立ち並ぶ公家町であった。しかし1869年(明治2年)に明治天皇とともに公家が東京へ移ると、京都御所周辺はたちまち荒廃してしまった。
それに歯止めをかけたのが岩倉具視で、古式慣習の保存と火災延焼を防ぐという提案に沿って、京都府が御所周辺の空き家となった公家屋敷などを撤去。その跡地を整備したのが京都御苑の始まりとされている。
それから150年近くが経過した現在は、約5万本といわれる樹木が生育し、御所周辺の景観を維持する庭園としての機能はもちろん、古都の中心部に位置する市民公園としても重要な役割を担っている。
ただし管轄は環境省なので、ここは「市民公園」ではなく「国民公園」になる。ということは、旅行者も大手を振って利用できるというわけだ(笑)。
自然面での特筆すべき点は「野鳥」の多さ。
京都御苑は大阪城と並ぶ京阪神屈指の野鳥観察スポットで、バードバスを中心に100種以上が確認されている。小鳥以外にも冬はオオタカが餌場として利用したり、夏はアオバズクが繁殖に来るなど猛禽類も見られる。
また歴史に目を移すと、蛤御門には「禁門の変」の弾痕とみられる傷跡が生々しく残されている。
禁門の変は幕末の1864年7月19日(新暦8月20日)に勃発した長州藩の「クーデター」で、会津・桑名・薩摩藩連合軍と、この蛤御門・堺町御門付近で激しい戦いを繰り広げた。だが長州軍は敗北、尊王攘夷派の重鎮であった久坂玄瑞は、その責任を負って自刃した。だが、この戦いの直後に「風向き」が変わり、時代は一気に大政奉還へと傾いていく。
今はその蛤御門横に市営駐車場が設けられており、車中泊をすることもできる。