この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
紙芝居型のパネルで、冒険生活を楽しく紹介
豊岡市出身で、1984年に国民栄誉賞を受賞した世界的冒険家・植村直己氏の偉業顕彰を目的にした展示資料館。
館内には寄贈された北極圏犬ゾリ単独行装備品を含む、約300点の遺品と写真が展示され、当時の貴重な映像も見ることができる。
1984年2月12日、43歳の誕生日に世界初のマッキンリー冬期単独登頂を果たした植村直己は、翌13日の交信以降連絡が取れなくなり、消息不明となった。
その後、明治大学山岳部によって2度の捜索が行われたが、発見されることはなく、植村が登頂の証拠として山頂付近に立てた日の丸の旗竿と、雪洞に残された植村の装備が遺品として発見されるに留まった。
現在に至るまで遺体は発見されていないため、最後に消息が確認された1984年2月13日が植村の命日となっている。
享年43歳、早すぎる死だった。
植村直己冒険館は豊岡市の植村直己記念スポーツ公園内にあり、その入口はクレバスをイメージした狭い通路の先にある。
建築家・栗生明が設計したこの奇抜な冒険館は、構造物の大半が地中にあるユニークなデザインで、1996年度日本建築学会賞受賞、1998年には公共建築百選に選出されている。
筆者はこれまで3度訪れているが、ここはアウトドアを楽しむファミリーに特にお勧めしたい博物館だ。近くには神鍋高原キャンプ場や、高規格でコテージもある湯の原温泉オートキャンプ場があり、車中泊でなくても行きやすい。
その理由は、展示方法にある。
映像や遺品の展示だけでなく、ここでは紙芝居型のパネルで植村直己の冒険生活を楽しく紹介するなど、小さな子供達の興味を引く工夫が幾つも見られる。
また実際にエベレストで背負っていたリュックと同じ重量のものを背負う体験ができるなど、見学とは違った切り口から、彼の偉業の一端を知ることができる。
ちなみに筆者が見たかったのはこのカメラ。
チタンを使用した「F2-ウエムラスペシャル」は、ニコンが植村直己のリクエストに応えるべく開発した特別なF2。依頼する方もすごいが、それを実現化するニコンも素晴らしい!
館内には北極圏を走った犬ぞりの展示もある。
植村直己冒険館
兵庫県豊岡市日高町伊府
☎0796-44-1515
入場料:一般 500円
開館時間 9:00~17:00 (入館は16:30 まで)・水曜定休(年末年始 12/28~1/4)
出石城から約16キロ・30分。山やアウトドアが好きな人は、ぜひクルマを走らせてみていただきたい。それに見合うだけの見応えがあると思う。