飲む前に知っておきたい、伏見のお酒の基本

伏見 玉乃光 名物・特産品・地酒ほか
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テーマはディスカヴァー・ジャパン 「日本クルマ旅先100選」
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誕生のキーワードは、立地と政治と旨い水

伏見夢百衆

日本には星の数ほど酒があるが、伏見には「腕の数だけ酒がある」らしい。ほほ~、なかなかうまいこと云うな(笑)。

「おんな酒」とも云われる伏見の酒の話を、どっからどう切り出せばいいのかずいぶん悩んだが、「ありきたり」にならないよう、まずは3つのキーワードでまとめてみた。

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京都という立地

平安神宮

伏見の酒づくりのルーツは平安京時代に遡る。

そりゃそうだろう!

年がら年中、宮中では祝いごとやら儀式が行われていたのだから、そこに酒がなければ始まらない。それに想像してみよう。もし今の東京にお酒がなかったら、いったいどうなっちゃうわけ?(笑)。

渡来人仕込みの伝統技術で、朝廷をサポート

月桂冠の調べでは、平安京が造営された8世紀末には、朝廷の酒を造るために、大内裏(だいだいり)に『造酒司(みきのつかさ)』という役所が置かれ、高度な酒造りが行われていたようだ。

そしてその実務には、「酒戸」(しゅこ)と呼ばれる伏見や嵯峨に定住した渡来人・秦氏の酒造技術集団が携わっていたと云われている。

杉玉

続いて鎌倉時代に入ると、酒を造って売る「酒屋」という商売が始まり、京都の中に幕府が置かれた室町時代には、その「酒屋」が大いに栄える。

1426年(応永33年)の古文書には、洛中洛外で347軒の酒屋の名があり、伏見は嵯峨とともに、洛外で酒を造るところとして、その名が記されている。

付け加えておくと、灘の酒づくりが始まったのは、鎌倉幕府が滅びる建武の新政の頃(1330年頃)とされており、歴史においては京都の方が先行している。まあ、日本史からすれば妥当な話だ。

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さて。脈々と受け継がれてきた伏見の酒造りの伝統は、豊臣秀吉の登場で一気に開花する。

月桂冠大倉記念館

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天下人の築城

秀吉の伏見城築城とともに、伏見は城下町として栄え、瞬くうちに京(洛中)・大坂・堺に次ぐ人口6万人の大都市へと変貌を遂げた。

その結果、伏見での酒づくりの需要が急増。この時代は酒の長期保存ができず、「旨いから売れる」というより、「とにかく飲みたいから売れた」というのが実態だったのかもしれない。

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城下町から港町へと転身

江戸時代になって早々、「一国一城令」の煽りを受けるかたちで伏見城は廃城となり、人口は急激に減少した。

しかし伏見は、それまでに培った「海運」を武器に、城下町から港町に姿を変えて発展を続ける。

十石舟

特に伏見と大坂天満の間を三十石船が往来するようになってからは、多くの旅人が上陸し、伏見の酒は旅人の口コミで売れるようになった。

さらに1635年(寛永十二年)に参勤交代制度ができると、造り酒屋の数はさらに増え、酒株制度のできた1657年(明暦三年)には、酒造業者の数は83軒にまで膨れ上がり、伏見の酒造りは絶頂期を迎えた。

だが… その後、伏見は幕府から酒造りに対する厳しい規制を受け、京への酒の出荷さえも止められてしまう。

そのため天保年間(1830-1843)には醸造数が半減、酒蔵も1/3まで落ち込んだ。そしてついに、幕府直轄の酒造地で海路に近い、灘と立場が入れ替わる。

鳥羽・伏見の戦い

トドメは鳥羽・伏見の戦いだ。新政府軍が旧幕府軍を追討する、戊辰戦争の口火がここで切られたため、戦場となった伏見の町は焼け野原と化してしまった。

これを見ると、伏見の酒蔵は「江戸幕府の都合」で、波乱万丈の道を歩まされてきたのが明白だ。まことにもって「政治力」とは恐ろしい(笑)。

黄桜酒造

そんな伏見の酒が息を吹き返すのは明治以降。というより、テレビのCMがお茶の間で見られるようになってからだろう(笑)。

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さて。どれだけ人が集まっても、宣伝を繰り返しても、味が悪ければその酒は売れない。

というわけで、ここからは核心部分の話に進もう。

伏見の酒の「肝」は、まろやかな仕込み水にある

伏見の水

「一升(1.8リットル)の酒を造るには、八升の水が必要」といわれるほど、酒蔵にとって仕込み水は重要な存在だが、伏見の水は鉄分を含まず、カリウム・カルシウムなどをバランスよく含んだ中硬水で、酒造りに適していた。

また「おとこ酒」と呼ばれる灘の酒が、硬度の高い仕込水のおかげでキリッとした辛口になるのと対象的に、「おんな酒」と称される伏見の酒は、きめ細やかで口あたりのよい味に仕上がる。

祇園

地の利だけでなく、この味の違いも、花街の多い京都で受け入れられた要因のひとつのような気もする。

ちなみに、伏見にはその仕込み水が無料で汲める場所があるので、お酒が苦手でもその味わいは楽しめる。

伏見の酒の酒蔵と銘柄

伏見の酒蔵

酒蔵で有名なのは月桂冠と黄桜だが、令和の現在、伏見地区には17件の酒蔵がある。仮にひとつの藏に5品種しかなかったとしても、全て利き酒するには85の杯を重ねなければならない。

そんな強靭な肝臓を持っているのは、我らがヒーロー「あぶさん」くらいしかいないと思う(笑)。

本と違って、ネットには「リンク」という「飛び道具」がある。こういう情報は熟知している地元にまかせるのが一番だ。

伏見酒造組合 酒蔵一覧

伏見のお酒の「飲み比べ」ができる店

酒蔵に行けば、その蔵の様々な品種の利き酒はできるのだが、違う酒造の酒を飲み比べるには、居酒屋のようなところに行くしかない。

もちろん酒処と云われる伏見だけに、ちょっと路地を入れば飲屋・飯屋の数は相当にあるだろう。ゆえにこれも地元の情報が一番いいと思うのだが、観光地から少し逸れたところに面白いバルを見つけたので、そこを紹介させていただこう。

大人の嗜み「日本酒入門」

獺祭

最後に。

この際なので、大人の嗜みと呼べる程度の日本酒に関する「お勉強」をしてみてはいかがだろう。

辛口・甘口からはじまって、大吟醸・純米大吟醸、生酒にひやおろし…
確かにどれも一度は耳にしたことがあるが、その意味までわからないのは筆者も同じ(笑)。

ただほんの少しの知識を持てば、地酒でもそこそこ自分の舌に合う品種を選べるようにはなるらしい。

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