高級素材「明石の鯛」を美味しく食べる漁師の技

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この記事は、車中泊関連の書籍を10冊以上執筆し、1000泊を超える車中泊を重ねてきた「クルマ旅専門家・稲垣朝則」が、全国各地からセレクトした「クルマ旅にお勧めしたい100の旅先」の中のひとつです。
※ただし取材から時間が経過し、当時と状況が異なる場合がありますことをご容赦ください。
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それは「湯引き」。

須磨浦山上遊園

明石鯛とは「明石海峡に棲む真鯛」のこと。

つまり明石で穫れる鯛も、淡路島の北側で撮れる鯛も、実はクオリティーは変わらない。

マダイは北海道以南の主な漁場で水揚げされているが、明石海峡で捕れる鯛は「味の良さでは日本一」との高い評価を受けてきた。

明石海峡

その理由は大きく分けて2つある。

まず明石海峡は潮流が激しく、鯛はその流れの中でよく運動をしているために、身がよく引き締まっていること。

もうひとつは、明石海峡には鯛の好物であるエビやカニが多く、またそれらを食べる数多くの魚が生息している。

雑食性の鯛は、自らのサイズに応じて、この海域に集まる豊富な餌を年中ふんだんに食べて育っていく。

明石鯛

鯛は秋に入ると越冬のため食欲を増し、よく肥えて脂がのった状態になる。

そのため艶やかな朱色になり、美味しさのピークを教えてくれる。その旨味が凝縮された鯛のことを、地元の漁師は“紅葉鯛”と呼んで珍重している。

余談になるが、サバやマグロなどの回遊魚は、ふだんは尾ビレだけを使って泳いでいるが、主に岩場を住処とする鯛は体全体を使って泳ぐ。

鯛

そのため鯛の筋肉には、コラーゲンが豊富に含まれている。

コラーゲンは魚のプリプリ感の源で、鯛は、ウナギやヒラメ、そしてカレイに次いでコラーゲンが多く、それが全身にある点が特徴だ。

ゆえに新鮮なうちに刺身で食べると、プリプリした歯ごたえが味わえる。

鯛の刺身

その一方で、鯛の身は牛肉と同じく、しばらく熟成させた方が旨み(イノシン酸)が出る特性を併せ持っている。

締めてから12時間・36時間・60時間を経た鯛の切り身を試食する実験では、36時間経ったものに最も旨み味を感じる人が多かったというデータもある。

だがそうなると、プリプリした歯ごたえは当然失われる。

それを両立させる調理方法が湯引きで、漁師が編み出した究極のレシピだ。

鯛の身にお湯をかけると、まず身が縮んでエネルギーのもとになるATPがイノシン酸に変わり旨みが増す。

また身と皮の間にあるコラーゲンは、熱と水が加わえられると、ゼラチンに変化し、しっとりとした食感のもとになる。

もちろん、湯が当たってない部分は、そのままプリプリの歯ごたえが残る。

鮮度の高い鯛を見つけたら、ぜひチャレンジを。自分で捌けなくても、スーパーや直売所の鮮魚売り場で、3枚おろしの1つを「湯引き用」にしてと頼めばいい。

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