「クルマ旅専門家」・稲垣朝則が、10年以上かけてめぐってきた全国の温泉地を、「車中泊旅行者の目線」から再評価。車中泊事情や温泉情緒、さらに観光・グルメにいたる「各温泉地の魅力」を、主観を交えてご紹介します。
この世にひとつしかない、入湯可能な世界遺産の温泉
湯の峰温泉の「つぼ湯」が、これほど脚光を浴びるようになったのは、2004年に世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成要素に認定されたからに他ならない。
「この世にひとつしかない、入湯可能な世界遺産の温泉」と聞けば、日本のみならず世界中の温泉ファンがやってくるのは当然だ(笑)。
その「つぼ湯」は、小さな天然の岩風呂を木の板で囲んだ、30分交代制の男女混浴の貸切風呂で、公衆浴場の料金所でひとり780円を支払い、番号札を受け取って自分の番が来るのを待つ。
営業時間は朝の6時から夜9時半まで。
すなわち、1日最大31組しか入浴できない計算になる。
しかも到着時に先約が2組がいれば、もうその段階で1時間以上の待ち時間が確定する。
それを知らずに初めて筆者が「つぼ湯」を訪ねた時は、なんと先約が6組!
まさに撃沈(笑)。
「予習」がいかに大事であるかを学んだのはその時だった。
そしてリベンジ。今度は見事に「待ち時間30分」で入湯に成功した。
というわけで、その時のスマートな作戦をここで紹介するとしよう。
まず、受付が早朝6時から始まるので、宿の宿泊客に出遅れないためには「前泊」が不可欠だ。
幸い、湯の峰温泉には無料の駐車場がすぐ近くにある。
しかし大事なのは、この後。
なぜ先ほど「見事に待ち時間30分」と書いたのかが、これからわかる。
「つぼ湯」は、引湯ではなく岩底から源泉が湧き出している。
ということは、前日の営業終了後から、何時間も湯温を調節する人のなかった「一番風呂」は、かなり熱いに決まっている。
となると、30分の貸し切り時間中に水を入れ、入浴できる温度にするまで、嫌でもロスタイムを食らうハメになる。
ならば、それは「一番風呂の名誉」とともに、他人に譲ろう(笑)。
「つぼ湯」の「栄えある入湯順位」は、前の人が身を削って調節してくれた「いい湯加減のお湯」を、制限時間いっぱい楽しむことができる2番である。
というわけで、とりあえず一番最初に券売所の前には来て、次の人に先を譲り、ちゃっかり「いいとこ取り」をいたしたまえ(笑)。
なお、つぼ湯に入れば公衆浴場の「一般湯」か「くすり湯」のどちらかに入浴することができる。
朝早い時間なら、一度クルマに戻って朝食を食べても、まだ日帰り客がやってくるまで十分に時間はあるはずだ。
泉質等の詳細は、引き続き以下のページでお楽しみを。